「理鶯の握ったおにぎりが食いたい」
「あー……美味いよな、あれ」
「だろう?」
「塩っけがちょうどいいんだよな」
「そう、今まで食った塩むすびで一番美味い」
わかる。わかるが、この話、今する必要があるのだろうか。
左馬刻は汗ばんだ肌を冷ますためにシーツの上で寝室の空気に晒しながら、思った。ほんの僅か前、つい今さっきまで、身体を重ね合わせて快楽を共有していたのに、随分とまぁ、淡白なことだ。別に甘いピロートークを望んでいるわけではないが、それにしたって。いや、いいんだけど。
ただこれが理鶯ではなく別の男の名前だったら、たぶん、ちょっと、そうだな、殴ってた。
手を伸ばした先、汗で額に張りついた前髪を指で除けてやって、その唇に己のそれを重ねることで、黙らせようと決めた。