20日目

bebe_be8
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たまたま、なんか上手くいかねぇな、が続くこともある。イラついたって仕方がないと頭ではわかっているのに、どうしたってイラついてしまう。俺のそんな雰囲気を察して、触らぬようにしてくる舎弟らの様子が、またさらに癇に障るのだから、もうどうしようもない。

自分の中にある苛立ちを持て余して、他人や物にぶつけて、それで合歓を怖がらせてしまった時期もあった。あの頃に比べればまだ幾分かはマシになったと、そう思いたい。思いたいが、どうなのだろうか。自分ではわからない。

「あなたの舎弟が困ってましたよ、『カシラの虫の居所が悪いみたいで』って」

「ア?説教しにきたンなら帰れよ」

執務室に、ふたり。今日は、こうして軽口を叩いてくるヤツなんて誰もいなかった。パンパンになった灰皿に、さらに吸殻を捩じ込む。誰も交換を申し出てこないから、あとで自分で捨てにいくしかない。

俺の不機嫌なんてめずらしくもない、といったふうで、ツカツカと革靴が近づいてくる。

「ヤニ切れなら一本分けてやろうか」

存外やわらかい声が、そう問う。あ、コイツ何か知ってンな、と思ったが、尋ねなかった。

煙草は、ある。あとひと箱。出かかった言葉を、飲み込んだ。代わりに吐き出す、幼稚なウソ。

「……一本じゃ足ンねぇわ」