「好きだよな、そういうの」
そういうの、が指し示すのが、今まさに自分のスマートフォン画面に映し出されているものだと銃兎はすぐに気がついた。
ソファーの隣に座った左馬刻は、わざわざ肩が触れる距離まで詰めてきて、小さな液晶を覗き込む。別に見られて困るものではないのだが、なんとなく気恥ずかしさを感じて、その顔を見れずにいた。
本番のひと月前になると、待っていましたとばかりに街中がクリスマスに染まる。つい先日まで秋を強調した装飾であふれていたのに、一気に冬に塗り替えられるのだ。
イルミネーションの点灯式を報じるニュース映像を、たまたま流していた。それを、左馬刻は言っているのだ。好きだよな、と。
「お前は興味ないだろうが、」
「まぁ、でも、行く?」
チラリと隣に視線をやった。ガラス玉みたいな赤もまた、こちらを見ていた。
「…………考えておく」
ククッと喉の奥で笑う。言われる、気がしていた。そういうヤツだ。
やっぱり気恥ずかしくて、銃兎はすぐに視線をスマホへと戻したのだった。