「年末年始ィ?」
事務所へ来た銃兎が、ポロッとこぼした。休まなきゃならないんだよ、と。
「どうせ予定もないし、手当もつくからいいかと思って毎年出勤してたんだが、お前が休まないと下が休めないだろと課長に言われて」
「休めばいいじゃん」
そりゃ、テメェの上司が正しいわ。そう付け加えれば、銃兎は口を閉ざして、どうにも納得しきれない様子で煙草に火を点けた。
「今は正月なんて店もどこも開いてないだろう?結局ダラダラ過ごしてしまいそうで」
コイツらしい、といえばコイツらしい。予定が無いのが嫌なのだろうと思った。そしてそれを俺の前で話題にするってことは、つまり、世話の焼けるウサチャンだ。
「年末年始ぜんぶ?」
「いや、年始だけ」
なんだ、大した連休でもないではないか。俺は目の前の男と同じように煙草を咥え、ライターの火をねだりながら笑ってやった。
「仕方ねぇから俺様が付き合ってやるよ」