これを読んだ。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjep/70/1/70_35/_article/-char/ja
以下は、自分なりのまとめ。
どういう研究なの
一言でいうと「試験時に手製のカンニングペーパーを持ち込める場合、成績にどんな影響が出るの」の研究。
「ノートにまとめる」のは学習方法として一般的だが、この研究では講義を聞きながらまとめるノートと、テスト前にノートをまとめなおす事後ノートを別物として研究するのが狙い。前者に対し後者はあまり一般的ではないので、カンニングペーパーを作らせる、というやり方に置き換えて強制的に事後ノートを作らせ、成績にどんな影響が出るかを調査する。
講義を聞きながらノートを取るとき、話を聞きながら考えながら書いているわけで、脳がマルチタスクの負荷で疲弊している。つまり、講義ノートを取るだけでは、"自分で思うより理解できていない" 可能性が高い。そこで事後ノートにまとめることで "自分の速度で" 再学習することで補完するのがアド、ということになる。
またこの研究では、単純な"記述量"だけでなく、ノートをどのようにまとめているかという "質" にも着目している。講義内容全体を俯瞰した理解ができているか?という"体制化"、図表にまとめて情報を圧縮できているかという"イメージ化"、抽象的な概念には具体例を併記することで関連付けて記憶しようとする"具体化"などの点に着目してノートを分類したようだ。
結果、当たり前の話だが、知識量を問う試験では記述量が多いカンペを持ち込めた方が成績がよい。しかし、覚えた知識を適用して解くような試験ではよく体系化された=質が高いノートを用意できた人の方が成績が良かった。
もうひとつ面白いのが、他者が作ったまとめ文を書き写す場合には成績の向上に影響が出ないらしいことだ。いわゆる分かった気になってしまってむしろ体型的な理解を阻害するのかもしれない。
どう思った?
4つほど、この話を聞いて考えたことを書いておく。
1つめ、事後ノートをまとめることで知識を体系化することは学習に有効そうだということは分かった。しかし、因果が逆で、体系化できる能力があるから成績が良いのかもしれない。さらに言えば、そもそもそういう体系立てて理解する能力自体を涵養する方法が示されているわけではない。ノートを上手くまとめられるためにはどういう練習が必要なんだろうか。ノート取りが上手な人はどういう訓練を積んできたんだろうか。
2つめ、カンニングペーパーのサイズを有限にすること、つまり書き込める量を制限することで、事実列挙型のカンニングペーパーを作らせにくくする意図が機能していそうだ。体系立てて理解してまとめる能力が育っていない人を育てるためのひとつのフックになっているかもしれない。
3つめ、今回は事後ノートをカンペとして使えることをモチベに作成させているが、平場ではそういうモチベが発生しないので、この手法がいかに有用だとしても機能しなさそうだ。このやり方が効いている感覚を自分で持っているか、外部から別のモチベを注ぎ込んでやるか、物心つく前に習慣として刷りこむか、とにかく何らかのやり方で弾みをつける必要がありそうだ。
最後に、コーネル式ノート術というのがある。これはノートに線を引いて三分割し、荒書きゾーン、疑問・要調査ゾーン、まとめゾーン分ける、というノート術なのだが、この研究はこのノート術の有効性を証明するもののように思える。
板書を「雑に」まとめるゾーンと、疑問は別にまとめておく場所を用意しておくことで、授業中の負荷を下げている。疑問ゾーンの内容を読むことで、理解度を俯瞰して確認することができる。まとめゾーンを別個に設けることで強制的に事後ノートを作らせていると同時に、まとめられないということは理解できていないのでは?という気づきにもなる。
いずれにしても、時代に逆行するようだが、アナログな方法の方が事後ノート式の学習には向いているように思えた。荷物が増えてしまうこと自体が嫌がられそうだが……試してみる/勧めてみる価値はあるかもしれない。