Mouthwashingプレイ感想

べるでぃ(BELLDAY)
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公開:2024/11/16

発売前から話題になっていた「Mouthwashing」をプレイしようとようやく思い立ち、発売から二か月経った今クリアしてきました。

プレイ時間は3時間と少し。グロゴアホラーということで、敵を倒す系のホラーはやらないんだよなと迷っていたらアドベンチャー。ならやろうかな、とプレイしてみたら超面白かったので、こうして感想記事を書くことにしました。どうせ長くなるし、ふせったーにしたためるよりかは、ひとつの記事にした方が読みやすい。

ということでお付き合いください。

ここから「Mouthwashing」のネタバレがあります。スクリーンショットもたくさん載せているのでお気をつけ下さい。

プレイしていない場合は、3~4時間でクリアできるのでプレイしてから読んでください。精神が元気なときに……。

とりあえず1周プレイしてみて

結論から言うと、とても面白かったです!

どんなフィクション作品でもそうなのですが、ヒューマンドラマ系が好きです。人間が右往左往していることをメインに描きたい、と思って作られたものならハイファンタジーでもホラーでも好きなんだと思う。本作もホラーということは知っていましたが、そういう「なんかこれは大丈夫そうだな」というヒューマンドラマセンサーが働いたお陰でプレイできました。

プレイ前は「SFモノで、限界状態の宇宙船のクルーたちが狂っていく内容」ということしか知りませんでした。steamに書いてある「このゲームについて」すら読んでいなかった(カーリー船長がこんな行動をとるなど……云々)。あれを読んでいたらもうちょっと序盤ミスリードへの理解が早まったんじゃないかと思う。

作品的には遠未来で、宇宙で、宇宙船で……という現実とは程遠いサイエンス・ファンタジーな舞台な訳ですが、その遠い世界観に私たちの意識を肉薄させているのが人間臭いキャラクター。知らない環境なのに彼らのお陰でいつの間にか順応できて、親近感まで抱かせる等身大の善人たち。そして襲い来る絶望。丁寧に最悪するのやめてくれないか?

最初に凍結ポッドが出てきたとき「これ最終的に1個だけ残ってて誰か選ぶやつかな?」と思ってたんですが、選ぶ前にキャラがほぼ死ぬとは思わないだろ。取捨選択をしてたのは実際スウォンジーだし。スウォンジーの苦痛を代わりたかったよ。その苦しみ代わってください、ジミーに責任があるので……。責任を負え。苦しみを祈る。

私はトロコン欲求もなく、マルチエンディング系ゲームでも1周で終わるタイプなのでMouthwashingも1周で終わると思います。しばらく余韻に茫然としている。

いや~でも「グッドエンド」のトロフィーは取っておくべきかなぁ~!?

善ゆえに世に狂う

もうぜ~んぶ会社が悪い! ぜんぶ会社が悪い! 会社が悪い!

作中で「この会社に入ったのが間違いだった!ポニー運送のクソッタレ!」と陳腐に叫ぶような人はいなかったですが(それしか選べなかった、という諦めの境地の先にいる)、全員心の底ではそう思っているよな。ジミーの狂気パートでめちゃくちゃな馬が大量に出てくるのも、その深層心理を視覚だけで見せてきていたんだろうかと思う。会社のせいだ、社会のせいだ。

ここからはキャラクターについて、ひとりずつコメントしていきます。前提として全員大好きです。

スウォンジー

口が悪いだけでマジで良い奴。カーリー&ジミーの対比としているスウォンジー&ダイスケのスウォンジーの方。正確に覚えてないんですがダイスケのこと「今でもあなたは私の光」みたいなこと言ってませんでした? 

アーニャからすべて聞いていて、凍結ポッドが一台残っている=誰を生かすか考えることを最初から強いられていて、ダイスケが助からないと判断し苦しみを取り除くために頭を斧でカチ割ることができる男。かっこいい。正直作中で一番イケてる台詞を吐いていたおじさん。ジミーを操作する者として、スウォンジーから向けられる真正面からの怒りの感情はもはや気持ちいいまであった。もっと言え。

ダイスケ

急にチャラい日本人出てきて驚いた。愛嬌があり、鬱屈した最悪の環境化において唯一の清涼剤と言える。お前がマウスウォッシュってこと!?

お母さんに罪悪感を抱かせたくない、あの一言だけでうんと好きになれたプレイヤーがどれだけいることか。昏倒カクテルを作ったときってかなり切迫した状況で、プレイヤーもはかはかしていたと思うんですが、「エッチな感じですね!(意訳)」と言われたときは思わずフフりました。この状況でそういうことが言えるお前はさ、宇宙空間に向いてたよ。人を信じることができるのは美徳で、スウォンジーとの師弟関係も良かったけど、なんで最後にジミーを信じちゃうかなあ。そういうとこなんだよなあ。

アーニャ

「どうして仮眠室には鍵をつけなかったんでしょうね」で察せられる背景。台詞がうますぎる。外国っぽい。安全のためじゃないか?(すっとぼけ)

あんな閉鎖空間で妊娠してるって確信したときの絶望感、小惑星激突と同じくらいだろうな。お金もないし、よしんば帰れたとして職もないし、子供はおろせないし、吐き気はするし、こいつだけ小惑星激突前から限界だよ、アーニャを誰か助けてよ。カーリー? おい! 聞いているのか? そりゃカーリーのそばでODしたくもなる。ずっと自殺のことを考えていて、実行したときにようやく自分の体が自分の制御下に返ってきたことと、身動きできずに凍結ポッドへ入れられたカーリーってやっぱり対比になってると思いません?

カーリー

誕生日パーティー中に解雇通告するのはダメだろ。だからお前のハシゴはそこまでなんだよ。ここもかなり自己満足的だなと感じました。

カーリーのそばから銃を取ったとき、彼は笑いましたよね。あのときは「?」という気持ちだったんですが、話を進めていくと、あーもうジミー、あー!!(半ギレ)という気持ちになって、カーリーよろしく「もう笑うしかない」という気分にさせられました。笑うしかないよなあ。笑うしかできないよ……。

カーリーは良い奴なんだけど、人の心に無頓着で、それに周りが振り回されてて今回のことが起きたように思います。最後冷凍されちゃったけど、あれ20年後に解凍されても生きてる訳ないんだよな。あんなバッドエンド見せられても「このゲーム面白いな~」という気持ちになるのはすごい手腕だなと思いました。愛憎を向けられた男の末路って20年先まで分からないもんなんだ。

ジミー

嫉妬するのはさ、わかるよ、でもなんかお前だけ罪多くないか? それが魅力なんだけど。最後に何も意思表示できないカーリーだけをポッドに入れて冷凍しながら自殺したの、最高に自己満足って感じで最悪な気持ちになりました。

罪の多い男なんですがそれを上回るくらい罪悪感を同時に抱えているので始末が悪い。そういう不器用なキャラクターは大好きです。ゲームの序盤に赤ん坊の声が聞こえたのも、終盤、クソデカ子宮をスキャンして馬の子供を見つけるのも、ずっと責任を負おうとしていたんだよな。全然負えてないけどw

最初に「今は俺が船長だ」みたいなことを言っていたときから違和感はありましたが、しゃべるとどんどんボロが出るタイプで、あまりにも「人間」すぎて愛おしかった。お前船降りろ

いいな~と思ったところ

シンプルな説明

なにもかもシンプルだった。自分で手探りして模索するストレスを感じながら、それらが徐々に解消され慣れていくのが楽しい。要所にあるギミック……というべきか、ステージ……というべきか、ミニアクション要素でも序盤に一言添えられる程度(それすらないこともある)。

手業ではなく感覚で、あの世界観に順応する必要がある。 それが嬉しかった。没入感に一役買っていると思う。

過去、現在、狂気パートの織り交ぜ方

プレイしていくと今どっちがどっちだか分からなくなってくる感覚があってよかったです。分かりやすく赤枠が使われたりしてましたが、ずーっと画面に没入していると本当にどっちがどっちかわからなくなる。ジミー、お前の視界ってこんな感じなのか?

外連味のあるスマートな台詞

ストーリーに関係のない話が全くないのに、台詞選びのお陰で閉塞感がなかった。ダイスケは顕著で、能天気バカみたいな喋り方をするけど人のことはちゃんと見ているし、性根が優しいことも伝わるし。

あと、言葉ですべてを説明しないのがかなり好きでした。「カーリーを生かす理由は二つある(二つ目はプレイヤーの想像に委ねられる)」「妊娠してるんです(誰の子とは言わない)」「アーニャからすべて聞いた(どこまでかは言わない)」「長年働いてきた結果がこれ……(具体的にカーリーがどうなるかは示されない)」「最高の気分です(自分の体の主導権が自分にあるから)」

ある程度の想像性をプレイヤーに委ねているから、この作品に奥行きを感じるんじゃないかな。

会話シーンの画角

本作は「映画っぽい」という感想がよく見られますが、ムービーシーンの画角がそう感じさせるのかなと思いました。アドベンチャーでありつつ、ずっと画面を見ていても飽きないような工夫がされている……。

「タルパ」

スウォンジーが「船長なら宇宙船と心中しろ」と吐き捨てるシーンがありますが、タルパって(意味はいろいろとありますが)人工精霊ですよね。宇宙船の船長であるカーリーはジミーのタルパになっちゃったんだ。

マウスウォッシュの出し方

洒落てる。襲い来る絶望感がキャラクターと同調した気がする。これからいろんな人の配信動画を見てみたいと思っていますが、ここの反応が一番気になります。

「少し 食べないか」→カーリーを

キレそうだったよ本当に

カーリー抱っこ

頭が壁にぶつからないように斜めに歩きました。なんで横抱きなんだよ、狭い通路じゃ危ないだろ。なんか可愛いけど……。カーリーをお姫様抱っこするパートはほっこりしました、カーリーに愛着も湧くし。可愛い。まあカーリーを抱くシーンって大体最悪のシーンなんですけど。

カーリーケーキ

ギコギコはしません。刃を入れただけで、スゥー

クソデカ子宮エコー

本当に最悪の比喩表現。最初ノミかと思ったけどウマだよね……? 仔馬が二頭。そのあとウマの化物が生まれてきて、それから走って逃げなきゃいけない。迷路みたいなところをがむしゃらに。比喩として最悪すぎて笑える。ジミー、あのさぁ……。

後ろ向きのまま戻らなきゃいけない廊下

責任から逃げるなァ~! カーリー船長は負けてない! 行動が示す意味合いもさることながら、途中にダイスケの持ってたゲームボーイとか置いてあったよね? 見に戻ったら最初に戻されたので最悪の気持ちになりました(喜んでます)。

スウォンジーの眉間を撃つ

あれ、顔以外のところを撃とうとしても引き金が動かないんですよね。あの睨み顔を拳銃で隠すと初めて撃てるようになる。ジミー、おい、臆病なのか? 撃ったあとにシルエットで会話しているシーンもたまらなくかっこよかった。

社員証まみれの廊下

社員証、全員分あるのかなと思って見たら男性の社員証しかなかった……よね? 少なくともアーニャの社員証がなかったので、ああジミーにとってのアーニャってそんな感じなんですね。という最悪な気持ちになれて最悪でした。

ジミーのコズミック一人芝居シーン

ジミーが自分のタルパ(カーリー)に謝罪するシーン、どんなゴア表現よりグロかった。内省をあんなに美しく描けることに感心しっぱなしでした。

徐々に凍っていくエンドロール

FP視点ゲームとしてあまりにも天才の発想です。

二度とやりたくないところ

急なDead by Daylight

アクションパートとしては一番キツかったです。いきなりDbD始まったと思ったし、ダイスケの遺影はあるし、ここはスウォンジーの心の中なのかと思ったけど結局ジミーの狂気視点だからジミーの脳内妄想で、実際かなり罪悪感抱えてて笑える。赤ちゃんの鳴き声も聞こえて……。

でも急にゲーム性変わるじゃん。このパートのせいで2周目したくないよ。

終盤で思い出したようにガチホラーゲームヅラする

それまではハードコア寄りエモ系アドベンチャーだったのに、急に何!? 特にDead by Daylightパートもそうなんですが、全体的に終盤シーンは自分がホラーゲームであることを思い出したようにホラーし始めて「え、これホラーゲームなの?」ってなりました。怖かった。

マウスウォ~ッシュ!!

クリアしてもよくわからなかった謎のトレーラー。気が狂ってるのか?

おわりに

で、おい、99.9%の殺菌は完了したのかよ。おい! 聞いてんだよ! 

やっぱり、冷凍される側の視点で、完全冷凍されたら視点が一切動かなくなるエンディング最高でした。あれ、周りをぐるぐる見渡してるうちに「パン!」って音が鳴って、あの光を見ることができないカーリーもいるのだと思うと興奮します。

ていうかジミーもさ、そういうところなんだよな、私がコイツなら絶対ここで自殺するって思ってたけどカーリーの意識があるうちに自殺するのが本当に気持ち悪いよ。寂しがり屋で。嫉妬しいで。口ではカーリーを認めながら、カーリーが安らかに20年後起きれるように……とか考えられない、最後まで自己中男性でした。これを見に来た。

最悪で、悪趣味で、面白いゲームでした。映画でも見てみたいけど、これは自分で操作するゲームだからこそ得られる体験なので、映画になったら全く違う余韻があるのだと思います。

いろんな人の感想が知りたいので、これからプレイ動画とかを見にいくつもりです! オススメな実況者や動画があったらURLを教えてくださいね。

苦しんだよ。

11/19まで10%OFF!

マウスウォ~ッシュ!!

ここまで読んでくれた未プレイのみなさん、今ならMouthwashingが10%OFF! このゲームは内容を知っていても「体験」することでしか得られないものがあるので、読んでクソイケそうと判断したらプレイしてください(元気なときに)。