君はもうイマーシブフォートに没入したか

べるでぃ(BELLDAY)
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公開:2025/3/23

イマーシブ・フォート東京。「没入型体験」を謳った令和最新版エンターテイメント施設です。

……って何?

「イマーシブ」って何!? 公式HPの「イマーシブ体験とは?」を読んでもわやわやなポエムしか書いていないので全く分かりません。

簡単に言うと「舞台の上で客が走り回れる演劇」みたいな感じです。舞台といっても、ひとつのステージだけで繰り広げられるものではありません。ドラマなどで見かける「町のセットすべて」が舞台になっており、大勢いるキャストのなかから、観客は誰かの視点を追いかけて「自分だけの舞台を体験できる」のが売りなのかなと思っています。イマーシブフォート以外のイマーシブシアターを体験したことがないので、ことイマーシブフォートに限った感想でまとめるなら、「群像劇を体感する」です。

主人公の尻を常に追いかけてもいいし、逆張りしてそのへんの警備員キャラを追いかけたっていい。「自分」が「カメラ」観客でいながらその作品の監督になった気分で物語を構築できるのがイマーシブフォート作品の強みでしょう。

ヴィーナスフォートの施設をリサイクル

元々、この施設はお台場の「ヴィーナスフォート」というショッピングモールでした。そこを会社が買い取ってイマーシブ施設にしたという話。ヴィーナスフォートの施設自体が素晴らしく綺麗で好きだったので、そのまま活きでいってくれたのは嬉しい話です。

ヴィーナスフォートおなじみの青空天井もこの通り、そのまま残っています。

2025年3月1日、イマーシブフォートはリニューアルした

私がイマーシブフォートに足を運んだのは、2024年4月に1回、2025年3月(つまり先日)に1回です。ではなぜ今さらイマーシブフォートの日記を書いているかというと、リニューアルされたイマーシブフォートがあまりにも様変わりしていたから。

今回はその差分について感想日記を書こうと思い、エディターを開いた次第です。

【体験したもの】

  1. 2024年4月 江戸花魁奇譚1回

  2. 2025年3月 ザ・シャーロック1回(リニューアル版)

①料金形態が変わった

まず大きな点としては、今年3月1日から料金形態が変わりました。入場料が無料になりました。これは大きい!! 誰でも気軽にふらっと入ることができるようになり、当日チケットを購入することもできます。

2025年3月以前は入場料があり、それプラス、イマーシブシアター料があるといった具合で、かなり「高いな……」と気後れするお値段ではありました(とはいえ、実際体験すると「安いな……」となりますが)。

入場料がなくなったことで、ある程度、最初のハードルが下がったのは良いことなのではと思います。ですがそのアオリでなくなったものも……

②入場無料になったことで、町が舞台ではなくなった

入場料があった時代は、イマーシブフォート東京に一歩足を踏み入れた瞬間から「イマーシブ体験」がはじまります。

というのも、イマーシブフォート東京という施設全体が「町」になっており、そこかしこにキャストさんがいるのです。タイムスケジュールに従ってキャストが現れ、来場者に話しかけたり、時に来場者が悪党キャラクターの人質になります。

「町」のなかでストーリーが随所で繰り広げられ、中央の円形ステージで演劇やダンスショーを見ることもできました。ここでもキャストに絡まれたり、一緒に踊ったりできて本当にきらびやか。町全体が既に舞台なんだ……という、まさに没入体験がありました。

こんな近くで役者さんの演技を見ることができる! マイク越しではない声が鼓膜に響いてくる、たまらない臨場感。

キャバレー(をモチーフにした飲食店)では、その名の通り生演奏やダンス、お客さんが舞台に上がってキャストと一緒に踊ることも――

という、上記のものが一切合切なくなりました。

③新旧比較

以前はショーが開催されていた中央の舞台も……

今は休憩スペースに。

周囲にあったテイクアウト系の飲食店はチケット売り場になりました。写真左側のお土産売り場は健在で、写真では見えませんが右手前にあるレストランも健在……ではありますが、レストラン内での突発演劇はなくなった模様。

ザ・シャーロックやキャバレーのあった通りも……

今では全てがザ・シャーロック用になり、キャバレーもなくなりました。入場ゲートが以前より手前に来て、左右に休憩スペースがあり、ザ・シャーロック体験後に座って感想戦ができるようになっています。

以前の街並みは、やはり街を舞台にしたフォルテヴィータという物語があったのでそれ相応の美術が置かれていました。自由に出入りできる牢屋とかも! ところどころにベンチがあって休めたのも、地味によかった。

今はイマーシブシアターのパネルが並べられており、レッドカーペットが敷かれて豪華な映画館の道のりという雰囲気に。時間帯で空模様が変化するのはヴィーナスフォートから変わっていません。

この高級感というか、作品を今から楽しみにいくぞ……! というワクワク感を持続させる道のりは嫌いじゃないのですが、やはり以前の道を知っていると寂しさの方が勝ります。知らなかったら……幸せでいられたのかもな……。

キャストが現れる、オシャレなバーのセッティングもなくなりました。フォトスポットとして残してもらってもよかったんですよ!

タイムスケジュールに従って集まる大勢の人間たちを見ることも、もうありません。この「待ってる」間の時間って結構エンタメ的には大事だと思うんだけどな。これから始まるんだ、みんなこれを待ってるんだ、楽しいことが始まるんだ! みたいな。でも今は全部なくなってしまったものです。切ない。

イマーシブシアター作品はどうだったか

街並みが変わってしまったとはいえ、シアター作品の抜群の出来は健在……!!

絶対に課金して体験してほしいです。一度でいいから絶対に観てくれ~~~! 損はさせませんから。損をさせないのは凄腕のキャストのみなさんですけれども。

ザ・シャーロック

私はリニューアル後の第二幕が追加されたものしか見ておりませんが、本当に満足度が高かったです。私が追いかけたキャストの物語が面白かったというのもある。

ザ・シャーロックはキャストと観客があまり関わらないので、「自分の好きなカットを繋ぎ合わせる」という感覚が強いと思います。それゆえに必要なのは、やる気と体力です。

シャーロックの舞台は1階と2階があり、キャストたちは全員それを縦横無尽に上り下りします。観客はそれを全力ダッシュで追いかけます。しかもシャーロックは3,40人程度の観客を一度に収納するので、主役のシャーロックの後ろには常に20人くらいの追っかけがいます。凄まじい熱量。

私は逆張りオタクなのと、同行者がシャーロックを追いかけていたので別の人を追うことに。こいつ絶対重要だろと思いながらついていったキャラクターが本当に重要キャラで楽しかったです。そういう追いかけ方もある。

イマーシブシアター、どこかで座って「定点カメラです」という見方もできますし、キャストを追いかける実況型ももちろん楽しい。特にシャーロックはキャストから急に絡まれることが少ないので、じっくり物語を追いかけることができます。メモ取りながら話を聞いてる人、かなりいた。20代の人間が多い印象でしたが、50代、60代に見える男性女性もいらっしゃったので、1階と2階を何度も往復できる体さえあれば誰でも楽しめると思います。

本当に何度でも往復します。どのキャラクターを追いかけるにしても往復するので、スニーカーがオススメです。

江戸花魁奇譚

2024年4月に行った江戸花魁奇譚ですが、これが本当に楽しくて楽しくてしょうがなかったです。初めてのイマーシブだったというのもあり、新鮮な衝撃で殴られ続けていたらノーマルエンド(?)で終わった……お、おれは一体なにを……悔しい……覚悟があればもっとやれたはず……みたいな気持ちが今でも残っている。

シャーロックと異なり、江戸花魁奇譚は15人程度が一度に収納され、キャストそれぞれと必ず絡みがあります。それゆえに……シャーロックは8,000円弱、江戸花魁奇譚は15,000円弱と料金に大きな差も。が、急に役が振られたり、能動的な行動を求められるのは今のところ江戸花魁奇譚だけです。

キャストから振られた問答への受け答えで、物語やエンディングが変わっていくタイプの演劇。私が考えるイマーシブってこれかも~という体験ができるからこそ、うまく喋れなかったり役を活かせなかったりすると死ぬほど悔しい。10回くらい通いたい。10回通うと15万円です。えぇ……? 1年に1回くらいしか行けないよ……! でも料金分の体験は本当にあるんです……! 本当なんです……!

シャーロックは一本道シナリオでエンディング固定、キャストとの絡みがないので8,000円弱。江戸花魁奇譚はマルチエンディングでキャストとの確定絡みが発生するので15,000円弱、と考えれば納得の料金設定ではあります。……どっちも高いけどね!

イマーシブフォートは今も昔も楽しい

あの頃あった街並みやショーはなくなってしまったけれども、ザ・シャーロックの没入感はすごかったですし、めちゃくちゃ楽しかった……! という余韻に浸りながらゆりかもめで帰ることができました。きっと江戸花魁奇譚の方も変わらずあることでしょう。近いうちにリベンジします。

江戸花魁奇譚15,000円で慄くなかれ、次なるイマーシブフォート新作は『真夜中の晩餐会』、お値段25,000円です。……えぇ……?! いや、行くけども……! いつか行くけどもさ……!

入場無料化で失われたものが大きいため、一年後にリニューアルすることがあれば、そのあたりをケアしてくれると一年目の客としては嬉しいですね。

とにもかくにも。一度も行ったことがなかったら、行こう! イマーシブフォート東京!!