今の家に住んでもう10年以上たつ。10年たてばいろんなところにガタが来る。当時買いそろえた家電製品もいろんなところでガタがきて買い替えたりしているところ。
一昨日の出来事だろうか。嫁さんが風呂はいろうとして風呂をわかそうとしてたところ。風呂場のほうが「ほえっ」という声がきこえた。なんだろうめずらしい。行ってみると、「お湯が出ない」と。
え。
たしかに浴槽にためようとしているものは、どうさわっても水。冬の水。極寒。シャワーにしてみても出ないでない。
こういうときにシステム屋育ちの俺は、トラブル発生時のフローに頭が切り替わる。まずは障害箇所と影響範囲の特定だ。まずこの事象を考えると、風呂がこわれているのか、そもそも家としてお湯がでないのか。そこから切り分ける必要がある。洗面台のお湯はどうだ。うん、出ないな。台所のお湯はどうだ。2分ぐらいジャーッ。うん、指がこおりそう。だんだんあったかい気がしてくるけどそれは凍傷寸前なだけ。
どうやら家全体でお湯が出なくなった。二人ともまだ風呂に入ってない。これは一大事だ。おそらく給湯機がぶっこわれたんだろう。
家は賃貸で、入居時にリフォームしたばかりだけど、建物本体としてはわりと古いほうだと思う。入った時点で「風呂だけはきたねぇなww」って嫁さんと話してたぐらいだから、今考えると給湯の施設はリフォームされずに古いままを使っていたのかもしれない。
とりあえず給湯機とあたりをつけたからには、賃貸の大家さんと業者に電話だ。大家さんの番号なんて不動産経由でしかしらないので、不動産屋に電話したけど、もう夜中の23時。そりゃ出るわけない。んじゃ次は業者だ。給湯機をよくみると、トラブル時は日中はここ、夜間はここに電話してくださいと書いてある。夜間のほうにかける。出ない。もう一度かけてみる。出ない。
それはそう、この10年の間に働き方改革があった。深夜も対応しますなんてことは変わっててもおかしくない。こういうときなぜか「うんそうだよねぇ、24時間対応なんてできないよねぇ」とトラブルコールを受ける側の気持ちに一瞬立って考えてしまう。いい癖なのか悪い癖なのか。職業病みたいなもん。
とりあえず給湯機に書いてあるメーカーのホームページを調べて、臨時の問い合わせ先とかがないかをさがしてみよう。こういうときスマホがあって便利だ。昔はメーカーの名前をメモってパソコンの前まで行ってヤホーで検索しないと出てこなかった。こっちも古いiPhone8でメーカー名をぽちぽち。はい、Google検索。引っかかるのは宮崎のメーカーのみ。問い合わせの電話番号はどうみても千葉県の市外局番。はい、このメーカーつぶれてますね。どこかに保守を移行したんだね。
詰んだ。
とりあえず現状を整理しよう。まずもう今夜は風呂に入れない。冷水でならシャワーも風呂も浴び放題ではある。でも別に修行するぞ修行するぞって心持ちで風呂に臨んでるわけじゃない。
翌日は俺も嫁も出社する日。俺にいたっては朝7:30に会社にいる必要がある日だった。急に休むにももう誰かに代理をお願いするには厳しすぎる。俺はもう行くしかなかった。嫁は午前休をとって、業者にといあわせたあとどこかで風呂あびてから会社にいくことを決めたそうだ。
さぁどうしよう。
こういうときに、思い出すのはライジングサンロックフェスティバル2007のことだ。システム屋として就職するよりはるか前。俺は学生の頃に北海道のフェスであるライジングサンロックフェスティバルに通っていた。2002年からほぼ毎年通っていた。ずっとオフィシャルツアーを使って東京からいってたんだけど、2007年は学生らしいことをしてみたかったのもあり、北海道までの往復の道を鈍行列車でいくことにした。
鈍行列車の旅といえば青春18きっぷが有名だ。JRの鈍行列車であれば1日乗り放題になる切符で、5日分で11000円ぐらいだった気がする。5日間はべつに間をあけてもよくて、販売されている期間であればいつでもいい。なんなら二人でシェアしてつかってもいい。2人で2回ぶん消化して片道、帰り道にまた2回分昇華して、あまった1日分を誰かにゆずる。そんなこともよくやっていたもんだった。
北海道にいくにあたっても同じことがつかえるんだと思った。でも念のため調べてみる。すると驚愕の事実が判明する。なんと、18きっぷでは青森から北海道に渡れない。青函トンネルを通過する電車は18きっぷの対象外だった。えぇ。。まぁそうかぁ。。と思った矢先。Google先生というのは当時から便利ですね。「北海道 鈍行 18きっぷ」とかで検索したら、代案を教えてくれた。
北海道へ鈍行でいくのはやはり一定の需要があるようで、かわりに「北海道東日本パス」というものがあることを知る。なるほどなるほど。これは西日本にはいけないけど、北海道と東日本のJR、プラスいくつかの私鉄も乗れるとのこと。岩手から青森に向かうところは青い森銀河鉄道という私鉄に乗る必要があるそうだ。なるほど、これも乗れちゃう。そしてもちろん青函トンネルも乗れる。いいじゃんいいじゃん!価格はどうだ。5日間で10000円。うお!18きっぷより安い!完璧じゃん!
という盛り上がりを見せて北海道東日本パスで行くを決めたはいいものの。2007年当時の北海道日本パスのルールが、ひとつだけ青春18きっぷと違う部分があった。それは、「使用しはじめた日を含めた5日間のみ有効」ということ(※数年後に7日間に変更されてます。今もこの切符があるかは知らない)。青春18きっぷなら7/18, 7/24, 8/1とばらして使うことができる。でも北海道東日本パスは、たとえば7/18に乗り始めたら、7/18-7/22の5日間のみが有効になる。
こーれは、厳しい。そして、直感的に思う。むしろ、おもしろそうだと。
ライジングロックフェスティバルは北海道で、金曜+土曜の二日間で行われる。土曜日はオールナイトで、日曜日の朝、みんなで朝日を迎えようというのがコンセプトで、ライジングサンという名前がついている。なので実質金曜から日曜の三日間のフェスだ。
このフェスに北海道東日本パスで行くとなるとこうなる。
木曜の朝、東京出発。北海道へはまるまる24時間鈍行の旅でつく。東京の始発の電車を出て、乗り継ぎを一個まちがえると、青森発の札幌駅の深夜列車に乗り遅れる。始発がいきなり終電。そして金曜の朝に到着。金曜から日曜の朝まではライジングサンロックフェス。日曜時点で北海道東日本パスとしては4日目をむかえている。帰りにももちろん24時間。ああ、帰らなくては。日曜の夜20時頃に札幌を出発し、月曜の夜に東京につく。これまただいたい20時頃になる。
休みがほとんどない。しかも乗換を一切ミスれない。なんかこれは面白そうだと友人を二人さそって、なんも下調べなしに向かってみた。
もう少し事前に気づけばよかったんだけど、この旅の途中から自分の想像がいかにたりてなかったかに気づく。日本にはもちろんたくさんの音楽好きがいる。そして北海道への旅費が高いことなんて全国共通で、まして学生にとっては飛行機でいくなんてなかなかできないことだ。そして学生の一番の強みは時間だけはたくさんあること。
北へ、目的地へ近づくたびに、電車にフェス向けの恰好をした客がどんどん乗車して増えていくばかり。
それは最初はなんとなくうれしい風景だった。乗換が2分ぐらいしかないときにみんなで小走りで移動するのもほほえましかった。
しかし、俺たちは都会の人間だった。電車の常識を東京の電車事情でしか考えていなかった。あたりまえだけど、日本でこんなに電車が発達して次から次へ電車がくるのは首都圏ぐらいなもんなのだ。地方はそうはいかない。
北へ、目的地に近づくたびに、客は増えていくのに、車両がどんどん減っていく。東京を出たときは長い15両編成の電車が最終的に4両になっていく。
電車はフェス客でパンパンだ。とはいえ俺たちの目的は電車ではなくフェスなので、あくまで移動中は体力をたくわえる必要がある。意地でも電車に座る必要がある。特に最後の青森から札幌に行く深夜列車は所要時間7時間ぐらいだ。これに座れなかったら、人生終わったも同然である。
この状況になってからの俺の頭のさえ方は今でも笑えるぐらいだった。乗換が必要になる二駅前ぐらいから、座っていた席をたち、電車が止まってどっちのドアがあいてもダッシュできるように、三人を二手にわけた。車内アナウンスを入念に聞き、電車の前方から出たほうが乗換として有利なのかどうかを確認し、次の電車で座れることを毎回意識した。
こんな道中になると知らなかったのでメシなんてちゃんと買ってない。仙台駅で駅弁を買うつもり(乗り換え時間15分ある予定だった)が、電車が遅延して乗換2分しかなくなった。残りの二人に急いで席の確保だけお願いして、俺は駅の売店でおにぎりひとつとワッフルひとつだけを購入して電車にとびのった。まるで戦時中の配給のように、ワッフルを三等分して「今糖分とっとかないとこのあともたないから」と友人たちを鼓舞していた。
きっと、なにをやってんだ、と思う方も多いかもしれないけど、これは俺にとって学生時代のきっての思い出だった。最後、札幌行の電車に三人で座れた瞬間は声を出してガッツポーズした。あんなにうれしかったことはない。友達二人の席と、俺の席でわかれたので、俺はうれしすぎて隣の知らないお客さんに「ライジングもうすぐですね、楽しみですね」と話しかけたりしていた。その人はただの北海道への帰省客で迷惑そうに無視された。ごめんなさい。そんなことも含めて、自分にとっての大事な思い出であり、自分の危機管理アンテナが初めて働いた瞬間でもあり、そしてこういう状況が自分にとって一番楽しいことも知ったきっかけにもなった。
話を戻して。俺は、今夜風呂に入れないんだった。明日は7:30に仕事。もう夜も遅い。そもそも近所の銭湯は数年前に閉まってしまった。
とりあえずヤカンと鍋でありったけお湯をわかしてみて、浴槽にジャバーンといれてみた。浴槽にはうっすーく水の膜ができた。うん、鍋でわかすだけでやったらあと2時間はかかる。これも無理だ。嫁さんは今日どこか泊ってきたら?と提案してくれる。それも考えたけど、一応自分もシステム屋。トラブルがあったときは自宅でも対応しないといけない。風呂のために宿いって対応できないってのもなんかいろいろなんかいろいろ。一応それはやめた。
さすがに風呂もはいらずくっさいまま出社するのは、トラブル対応でもない限りよろしくないよな、、と思った矢先にピンとひらめいた。
7:30にまにあえばいいんだから、朝始発でやってるとこいけばよくね?
そう考えてからは早かった。隣駅にたしかカプセルホテルがある。あそこは風呂とサウナがあったはずだ。早朝の受付ってやってるかな・・?と見てみたら朝4時からやってる!しかも1時間なら安い!
深夜、23:30。翌朝の始発でカプセルホテル行決定。1時間で風呂出られれば、7:30に間に合っちゃう。
もうこれが思い付いてからなんかわくわくしちゃって、早く寝ればいいのに、なんか寝付けなくて音楽聞いてみたりしちゃった。落ち着くかなと思ってビートルズのリボルバーきいてみた。かっこよすぎて通しできいた。寝なさいよ。
結果的に無事に始発で風呂に入り、少し早めに出て、松屋で朝定食をかきこんで、会社にむかって7:15ぐらいについてちゃんとミッションをこなしました。
今も風呂入れない生活だけど、毎日どこの風呂いこうか考えながらすごしてます。今日は錦糸町のスパいってきた。ひさしぶりにサウナ入っておもしろかった。しばらく銭湯巡り生活が続きそうです。
ピンチなことやアンラッキーなことはちょこちょこあるけど、こういうときこそ状況を楽しんでくぞって精神が、ライジングサンのときから自分の中で変わってなくて、少しうれしかった。それをあのときの友人ふたりへ届けたい気持ちでこの長文を記載しました。特に得るもののない長文でしたね。まとめると、お湯が出ないので風呂通いしてます。
明日はどこに風呂にいこうかなって考えながら寝ます。明日早く会社いこうとおもってたのにこれ書いてたら0:40じゃん。もうねるよおやすみなさい。