さて、聞いてみましょう。The Birthday記念すべき1作目。Rollers Romantics。とりあえず俺はほんとにバースデイのことにくわしくないので全然違うこと言ってるかもしれませんが、自分にとってのあくまで感想文ですので。
このアルバムを聞くのは2006年の発売当時以来だから18年ぶりとかになるのかな。当時はこのアルバムの位置づけがよくわからなかったけど、改めて聞くと。改めて聞いても、わからないw
というのも、なんとなくThe Birthdayという新しいバンドです!こういうことをやるバンドなんです!感があまりない気がする。ミッシェルやROSSOは各作品ごとに明確な主張があった。「Rollers Romantics」は初めてそういうコンセプトがないように思う。だから戸惑うのかもしれない。
確かに新しいバンドといっても、ギターはROSSOからのイマイくんだし、ドラムはミッシェルのキュウちゃんだ。唯一新しいのはベースのハルキ。でもハルキだけ若手。きっとハルキがこの面子の中で個性を出そうとするのはまだ難しい時期だっただろうと想像する。そうなると、主体性を握るのはもちろんチバであり、旧知の仲であるイマイとキュウになったんじゃかろうか。
だからこそ何をすべきかを模索しながら、あらゆる手癖を試しているアルバムのように思える。手癖を試すうえでは音楽的にはシンプルな基盤の上にたったほうがいい。だからこそ、原点のチバの歌にもどって、シンプルにエイトビートからまた始めてみようよ、というアルバムと考えると自分の中で少し腑に落ちるものがある。
アベのリフ主体で、熱狂のグルーヴを生んでいたミッシェルガンエレファント。どんどん熱狂の渦がヒートアップしていって、最後には燃え尽きてしまったミッシェル。
チバを主体にしたといえば(そしておそらく最初はベンジーを意識して)、シンガーソングライターであることに自覚的だったROSSOのことを思い出す。ただしROSSOは意識しすぎたのか、いろんなことをやってみたくなったのか、バンドの化学反応的にそうなっていったのか。音楽的に重く深い方向性へどんどん進んでしまった。
そういういろいろを経て。続けていける、転がっていけるグルーヴを探そうとしている過程のアルバムなのかもなと思った。
俺の中のThe Birthdayは、チバの世界が歌詞や曲の中でどんどん開かれていって、バンドがチバの世界にどんどん寄り添っていった印象。ぶつかり合いのミッシェル、初期衝動のROSSOと比べて、The Birthdayはきっとチバの世界をどう表現するかのバンドなんじゃないかなと、ちまちまとつまみ食いしながら聞いていたにわかものとしてはそんな印象をいだいている。そっちにいこう、って舵を切ることにすらまだたどり着いていないような気がした。だからピンとこないのかもしれない。統一性がなく感じるのかもしれない。
そう聞いてみると、序盤はエイトビートのシンプルなロックンロールが続くけど、中盤の「春雷」「白い蛇と灯台」「Lock On」あたりは面白い。「春雷」の音数の少ない、音のすきまからグルーヴを作ろうとしている試みや、「白い蛇と灯台」はまるでダブかのようなベースがうねる中、ダブの方法論にいかずにバンドだけで成り立つように作っている。「Lock On」はインストだけど、ミニマルなギター、ベース、ドラムでうねりが出せるかというところに挑戦している。いろんなトライが隠れている気がする。
そして、ここまで聞いてわかった。「KIKI The Pixy」で顕著にわかった。チバのギターがまだうまくないんだw だけどチバのギター主体での作りになってるからぴんとこないのかもしれないな。そういう意味ではチバもトライしてる最中なのかもしれない。
この先のアルバムを全然ちゃんと聞いてないけど、この中のどこかの曲が芽を吹いて、バンドとしての道になるのかもしれない。チバのギターがうまくなって急にバンドとして化学反応を起こしだすのかもしれない。そう思うと、先を聞くのが楽しみになるアルバムである(実際ある程度先を知っているわけで、だからこう言えるのもある)。
最後に「Sheryl」というチバのつぶやきのような曲でこのアルバムは終わるけど、この曲がとてもいい。
ミッシェルでいう「ドロップ」に近い曲調で、世界観は「赤毛のケリー」に近い。違うのは、どちらもどこかで終わりや孤独を歌っていた。
"ぶらぶらと夜になる ぶらぶらと夜を行く なめつくしたドロップの気持ち"
"太陽と海が溶け合う場所の先に広かるのは凍り付いた海 あの子描くのはそこに住む魚 タツノオトシゴ アザラシの悲鳴"
同じように海のような舞台を曲にしているけど、ここには希望があるような気がする。とはいえ、シェリルという女性はもう亡くなっているような描写にも見える。そういう意味では根柢の世界観は同じかもしれないけど、希望を積極的に歌ったことはこれまであまりなかったんじゃないかな。
Sherylという曲は当時完全に通り過ぎてたと思う。この曲をちゃんと聞く機会があっただけで十分に価値があるアルバムでした。