この3年後の7/9に結婚式をあげるとはつゆしらず。2008/7/9に発表されたミニアルバム、MOTEL RADIO SiXTY SiXの感想文です。改めて一年に一度ペースで多作だよね。
ジャケットがチバではなくイマイになってるところに、少し新しい風がふいたかな?という感じを受け取る。そしてミニアルバムって形で音源を出すのは、経験上チバがたくさん曲ができたとき。フルアルバムがある程度形がみえていて、それだけではなくミニアルバムもやってみようってときにできる気がする(実際この4か月後にフルアルバムがでる)。すなわち、なんとなくバンドがいい状態になってきたか、方向性が少しみえてきた兆しなのかな?というのを勝手に感じ取る。
アルバム名が個人的にすごくすき。モーテルレイディオシックスティーシックス。チバのミッシェル時代のアルバムタイトルセンスがすごく好きで、意味はわかんないけど口にするとなんか発語の気持ちよさがあるものが多かった。チキンゾンビーズ。カルトグラススターズ。ギアブルーズ。カサノバスネイク。ロデオタンデムビートスペクター。The Birthdayになってからあまりそれを感じなかったけど、今回のアルバムタイトルのつけ方はミッシェルのときのノリを感じる。まだ次のフルアルバムを聞いてないけど、そっちはThe Birthdayで突き詰めようとしてる方向で、こっちはもう少し違うノリのものなのかな?ってことを想像を膨らませながら、再生ボタンを押してみえる。
一曲目の「カレンダーガール」がはじまった瞬間に「はいすきー!!これすきー!!!」と瞬間的に思わせる。チバが好きそうな昔ながらのブルースっぽい、ガレージっぽくもあるけどひとなつっこい、それこそThe Rolling Stonesみたいなリフで、いきなりうれしくなる。ミッシェルでいうと「キラービーチ」にノリが近いかな?あのころよりも、スイング気味のグルーヴがあって、ゆらゆらと横ノリしたくなる隙間がある。歌詞もなんかユーモラスで、前作「TEARDROP」のラストと全然ちがう。すごく風通しがいい気がする。それでいて、ちゃんと悲しい。
愛すべき描写が続くのに、ふとつぶやく言葉がなんだか切ないところに、チバが好きな映画の世界が広がっている気がして、なんかいい。この記事を書いている現在チバは亡くなっているわけで、でもチバが好きな世界観ってのはなんとなくおぼろげにこっちも知ってるわけで。うんうん、チバってこうだよね、って思わせる内容でなんかニヤリとしてしまう。そして案の定最後にこの子は消えちゃう。またかよ!
死んでるやんけ!またかよ!でもこういう世界観なのに曲調がずっと明るくて聞いてられる。ロックンロールってのはどんな世界観もどんな感情も載せられるし、それの聞かせ方も鳴らし方次第なんだよね。この曲はスカッと悲しい。カッコいいじゃん。
次にはじまる「6つかぞえて火をつけろ」はアルバムタイトルどおり6までカウントしたらバンドのセッションのような音が疾走感たっぷりと走り抜けていく。おーおーおーかっこいいなと思っていたら後半だんだん重めのグルーヴにかわっていく。BPM一切変わってないのに音の数とかドラムのおかずだけでこのへんコントロールしてるのか?
随分と音で遊んでるアルバムなんだな、ってことにこのへんで気づいてくる。フルアルバムのことはしらんけど、このアルバムは音楽的に自由なものを目指してそうだ。
どストレートなガレージロック「ガーベラの足音」をはさんで、「ラリー」。昔の「ブギー」を思い出すようなシンプルなタイトルに、思わず「ブギー」のような重いロックンロールがくるかと思ったらとても静かな淡々とした曲がきた。ここまで全曲球種がちがう。
「ラリー」はちょっとびっくりするぐらい、日本語だった。チバの歌詞はチバ語といっても過言ではないくらい、チバならではの表現が多いけれど。この曲はどストレートに日本語勝負。
語感の気持ちよさとかではなく、この曲の世界に見える何かを明確に伝えようとしてる。そのために音も最小限。昔だったらこのために音をもうちょっとドラマチックにしたり、ギターソロがきたりしてたと思う。でもこの曲によりそうのは、イマイのギターやキュウちゃんのドラムもいいけれど、すごく淡々としたハルキのベースがいい。淡々としたルート音だけを弾くベースは、演奏としては簡単だけど、これでグルーヴを生むのは難しい。ちょっとずれるとこの曲の「淡々としているからこそ際立つもの」みたいなものが失われてしまう。ハルキいいじゃんか。ハルキがいるからThe Birthdayの個性が出てきてる気がするな。
「LUCCA」。まさかのクリスマスソング。こんなのファンにかわいいって言われたい曲じゃないか。「カレンダーガール」につづいて、女の子にまつわる曲で、軽快なリズムの曲なのはなんかあるんだろうか。この時期モテたかった?「るっかるっかるっかー」って言ってるあたりかわいい以外の感想がない。あざとい女子?
「ピスタチオ」。なんだこの曲はwwww チバがとにかくぼそぼそひっくい声でなんか言ってるけど歌詞カードみないとまったくききとれない。ミッシェルでいう「モナリザ」のようなざくざくしたリズムなんだけど、あんな重苦しいもんじゃなくて、これまた淡々とリズムを刻んでるのも面白い。これはもうチバよりもバンドの演奏を聞けっていう明確な曲ですね。って書いてあるあたりでハルキのベースがぐおおおおんってうねりだして思わず「うおおっ」って声でた。かっこいいな。バンドに自信でてきたのが伝わるぞぉ。
そして最後を飾る曲は「SHINE」。アルバムのラストのタイトルが「SHINE」の時点でわかる。これはきっと美しい曲だろうと。
美しい曲だろうと、思ったら。サビが。
「キレイさあぁっぁぁぁ」
ごめんちょっと笑っちゃった。ほんとに美しい曲なのに。ごめんて。でも笑う要素大事。なんか忘れてたよねこういう感覚。ミッシェルきいてるときも「夜明けのボギー」きいてはくすっときてたよね。大真面目にバンバンバーンって歌ってるのとか、大声でみんなでこぶしつきあげて叫ぶだろうコーラスが「ボッサ!!」だったときとかさ。ちょっと笑ったじゃんすか。なんか懐かしいなって思っちゃったな。
で、ちょっとほほえましくなったけど、この曲はほんとにきれいな曲だね。チバが描きたい世界に少しずつ近づいていってるのがわかる気がする。ゆったりと穏やかな演奏で、チバの感情がそのままむき出しになっている。こういうことをやりたいんだろうなっていうのがミッシェルの後期では見え隠れしていた。「GIRLFRIEND」がまさしくそうだったと思うけど、あれはミッシェルとしては異質だったし、ミッシェルの形ではあそこまでが限界だったんだろうね(限界だからこそのよさがあの曲にはあるけどね)。
この曲にはまだまだ可能性を感じる。The Birthdayがもっといい曲をどんどん作り続けてくれそうだって思えるな。
SHINEの好きな部分の歌詞をはっつけておきますね。
水の止まった噴水にシャンプーを入れて泳ごう、ってのがとてもチバらしい世界観でいい。シャボンもまって、シャボンにくるまれるんだろうね。
というところでアルバムは終わる。7曲で35分と、曲数のわりに時間は長めだけどすごい聞きごたえがあるアルバムでよかったです。現状、音楽的にはここまでの3作で一番好み。面白い。言葉も好きだけどやっぱり俺は音がおもしろいのが好きなんだなーと再認識。
どうやらThe Birthdayとしてのグルーヴができあがりつつあるようなので、次なるフルアルバムを聞くのをわくわくしながら待ちます!