適応障害になり、仕事を辞めた。それで「はい、おしまい」とゲームオーバーできるほど人生は甘くない。これからどうしよう、と考える段階に入った。
すると母から衝撃的な一言が発せられる。『あんたは雇われるの向いてない。起業したら?』
この台詞を言う親はなかなかいないのでは?と思うくらい爆弾発言すぎて、フィクションでよくある「飲んでいるものを吹き出す」というアクシデントを起こした。こういうこと本当にあるんだ。確かに私は頭の隅で、「1人でできる仕事がしたい」とずっと思っていた。けれどそれには技術も資金も持ち合わせていないので、夢の話で留めておいたのだった。なのに、人から、しかも母親から言われたことで、今まで夢だったものが一気に目の前に近づいてきた感覚になった。莫大な希望と不安にアドレナリンが出る。私はその道を目指すことにした。
これからのことについて、父には相談が出来なかった。父といえば、まず「無理」から入る人間だ。安定を最も愛し、仕事において特に我慢強い。今までも、進路に関することはいつも事後報告ばかりになっていた。
今回もやはり、『無理だろ』と一言。そこから、『前の職場が何が嫌だったんだ』『みんな嫌なこと我慢してるんだ』『お前はプライドが高いんじゃないか?プライドなんか捨てろ』と続いた。今感じている莫大な希望と不安の、不安の部分をグサグサと刺激して大きくしていく。私が嫌で嫌で見て見ぬふりをしたい部分をさらけ出して突きつけてくる。何も言い返せない。涙が出る。ここまでがお決まりのパターンだ。
母がアクセルで父がブレーキ。結果として進むことになるけれど、危険だということも覚えておかなければならない。私には、2人の言葉がどちらも必要なのだ。学生の頃は父の言葉にボコボコにやられて落ち込んだり、逆に反発したりして、父を嫌った瞬間もあった。24歳になり、段々と大人になってきた今、この2人から生まれてよかったと心から思う。