BRUTUS No.1008を買った。
短歌、詩、俳句、川柳、歌詞、著名人の印象深いフレーズなど、さまざまな「一行」が集められた一冊。
まだ全ては読めていないけど、ひとまず巻頭の短歌のコーナーは読んだ。
私は短歌が好きと言いつつも数を読んでいるわけではなく、有名な歌人ですら「名前をよく見る人」程度の知識しかないので、こういう特集でたくさんの人の作品をつまみ食いできる機会はありがたい。
そもそも短く言葉をまとめるのが苦手だ。ビジネスの場でも、説明が足りてないんじゃないか、失礼に見えるんじゃないか、と考えて文章を延ばしてしまう。友人とのやりとりだってそうだし、創作をしていてもそれは同じ。元々小説という形態で創作をしていたので、ワンシーンだけ切り取るということに慣れていない。結局は、伝わるか不安だから言葉を多く使ってしまうのだと思う。的確な言葉を選んでいる自信がない。
短歌を詠んでみようと思ったのは何がきっかけだったか。確か二次創作短歌をTwitterで見たのがきっかけだ。その頃私は仕事で病んでいて、気持ちに余裕がなくて架空の世界を描写する体力が全く無かった。趣味ができないストレスの緊急避難先として、当時遊んでいた刀剣乱舞を題材にした短歌に手を出してみたのがきっかけだった、と思う。
それまでの私にとって短歌は格式高いもので、喩えるならウェッジウッドの茶器で裕福な誰かが飲む紅茶だったけど、そこでようやくスーパーにも美味しい紅茶が売っていることに気がついた。キャラクターの描きたい一面のために一作を書くことは小説でもままある。小説ならその一面を活かすためのストーリーが必要だけど、短歌には必要ない。
そのキャラクターの背後にある歴史や関連したモチーフ、ときにはキャラクターのセリフを使うから、詠み手と読み手で前提を共有していることもあってか、驚くほど情報量が多いこともある。「椿」と言うだけである程度同じものをイメージできるのは、二次創作短歌の強みだと思う。
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最近の私はTRPGにハマっているおかげで二次創作とは疎遠になってしまい、二次創作短歌にも長らく触れずにいる。
ではそんな中で何を題材に詠んでいるのかというと、自分の悪感情です。
つらい感情でいっぱいになったとき、短歌の定型に押し込めば、なんとか作品の体裁を保てる。限られた文字数で表現するために、自分の感情を少し客観視できるし、感情の核がどこにあるのか考えることもできる。満足いくものができれば、達成感で気持ちも明るくなる。悪くない試みだと思う。
問題は、せっかく作ったものを表に出せないこと。数年して、詠んだときの自分と距離ができたら見せられるのかもしれない。たまに「呪詛やん」って笑ってしまうし自分でちょっと引くものもあるけど、そういう見せられない代物の方が、鋭利で過不足なくて良い歌になっている気がする。気のせいかもしれない。
パブリックイメージに差し障りがあるので、ちゃんと人に見せられるような歌が詠みたいものですね。やっぱり二次創作短歌か。
最近詠んだ中で見せられそうなお気に入りを持ってきたけど、これもまあまあ恥ずかしいな……やっぱり自分の内面なんて見せるもんじゃない
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アイドルか月になりたい キズのない明るさだけを見ていてほしい
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短歌では嘘をつけない 本当は明るくなんてないんだ、わたし