原 俊彦『サピエンス減少』

読書日記
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https://www.amazon.co.jp/dp/400431965X

世界に先んじて人口減少を始めた日本に暮らしていると、この先の世界はどうなるんだろうと思ってしまう。子供がいれば尚更である。本書は、人口爆発から人口縮減に向かうホモサピエンスの現状と今後についてまとめたもの。世界的にはまだしばらくは人口増加が続くものの、今世紀後半には減少に転じ、なんと 300 年後には 1/300 まで急減する らしい。ホモサピエンスがおよそ 200 万年かけて増えてきたことを考えると、わずか 300 年でそれが一気に消滅してしまうというのは想像しがたいものがある。

アフリカの時代

ところで、意外と世界人口がどこまで増えるのかを知らなかった。本書によると、現在およそ 80 億人の世界人口は、2030 年には 85 億人、2050 年には 97 億人、そして 2100 年には 103 億人に達する見込みらしい。ただし、おおよそ 2086 年にピークを迎えたのち、2100 年までには世界人口は減少に転じるそうだ。

この間、主に増えるのはアフリカ人である。今後の数十年は、簡単に言えば「アジアの時代」から「アフリカの時代」へのシフト である。圧倒的にアフリカ人が増える一方、先進国は日本と同様に人口減少時代に入っていく。アジアも例外ではない。

人口が減ると何が悪いか

本書は、基本的に人口が減るとさまざまな問題が生じるという立場だ。人口増加時代は、生産能力が増加し続けるので、その一部を様々な社会的な歪みの是正に投資できた。それによる再生産も続くので、社会的不満や不安が加速度的に高まることはない。

一方、人口減少時代にはそのような余力はない。減り続ける人口動態に合わせて、社会経済システムを縮減していかなければならない。わずかな余剰も削減され、投資されないので再生産も見込めない。社会全体で、ギスギスした生き残りゲームのような競争が生じる。

その他にもあらゆる可能性が網羅的に描かれているが、とても印象的なのが、人口減少時代とは永遠に続く撤退戦である、ということだ。人口増加時代と違い、人口減少時代に余力はない。無い袖を振って耐える必要がある。それが社会的不満や不安に繋がるであろうことは想像に難くないし、思った以上にツラい時代が迫ってきているのだと改めて感じてしまった。

もちろん、希望はある。本書の推計は現代の社会基盤にあわせて描かれたものだ。AI をはじめ、テクノロジーの発展によって、ホモサピエンスは楽しく人口減少時代を過ごせるかもしれない。そしてその可能性はきっと、課題先進国である日本で検証されるだろう。

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