Ash Maurya『RUNNING LEAN』

読書日記
·

https://www.amazon.co.jp/dp/4873115914

このシリーズは一通り読んでいるつもりだが、『RUNNING LEAN』は初めて読んだ。これは第三版らしいのだが、読んでみて驚いた。リーンキャンバスの作成から検証サイクルに至るまで、かなり細かく書かれており、大変勉強になる。特に AR/VR プラットフォームを作ろうとしているスティーブを題材に、良くあるビルドトラップを避けながらビジネスを立ち上げていく様を追体験できる構成が良い。もっと早く読んでおけば良かったという感想。

90 日間サイクル

この本では「90 日間サイクル」を元にビジネスモデルの検証が進んでいく。大きな構造はこうだ。

  1. モデルの作成:ビジネスモデル(リーンキャンバスとトラクションロードマップ)の見直しと更新を行う

  2. 優先順位づけ:最もリスクの高い部分を特定し、そのリスクを克服するための検証戦略(キャンペーン)を提案する

  3. 検証:モデルを検証して改良する:小さな賭けを何度も繰り返す。有望なキャンペーンができたら大きな賭けに出る

こう書くと当たり前に聞こえるが、これを実際にやるのが如何に難しいか。

ところで、このサイクルを書いただけでも含意がある。例えばこの本では、ビジネスモデル = リーンキャンバスとトラクションロードマップである。重たい事業計画書ではない。

設計

事業の設計にあたっては、おおよそ次のような手順が示されている。

  1. ビジネスモデルの概要を描く:リーンキャンバスを使って、おおよそのビジネスモデルの素案を描く

  2. 需要性を検証する:リーナーキャンバス(顧客セグメント・課題・UVP だけを抽出したもの)を使って需要性を検証する

  3. 事業性を検証する:MSC(Minimum Success Criteria)を定義し、必要なリード数など事業性を検証する。必要に応じて目標やビジネスモデルを修正する

  4. 実現性を検証する:トラクションロードマップを作り、どれぐらいの成長性で MSC を達成するか決める

  5. アイディアを伝える:明確で簡潔なエレベーターピッチを作り、外部に説明する

検証

上の「90 日間サイクル」で書いた通りだ。例えば 3 年間の計画を作った場合、MSC を達成するための 3 年間を 12 回の 90 日間サイクルに分割できる。

90 日間のサイクルには、トラクションロードマップから推定したトラクション目標(OKR)が設定される。チームはこの目標を達成するための複数のキャンペーンで検証を進めることになる。

  1. モデルの作成:目標・仮定・制約を合わせる

  2. 優先順位付け:有望なキャンペーンに賭ける

  3. トラクションを達成する or インサイトを明らかにする

ところで検証の中で、ソリューションを設計する必要が出てくる。このとき、スイッチングトリガーを起こして製品を購入してもらうためには、「より大きなコンテキスト」を見つけるのが重要だ。これを見つけるには、次のテンプレートを利用すると良い。

より良い(X)を作らずに、より良い(X のユーザー)を作る

  • より良い(カメラ)を作らずに、より良い(カメラマン)を作る

  • より良い(リーンキャンバス)を作らずに、より良い(起業家)を作る

  • より良い(ドリル)を作らずに、より良い(DIY ユーザー)を作る

顧客の課題を見つけたら、それに対して「より良い」説得力のある約束を作成し、オファーするのだ。


と、こんな感じでリーンなビジネスモデルの検証方法について書かれているのだけど、とても実践的。まだ折りに触れて読み返したい本だった。

@books
本の記録