https://www.amazon.co.jp/dp/4120052796
書店の新刊コーナーに並んでいたので衝動買い。島本理生は『ナラタージュ』のインパクトが強過ぎて、それ以降の作品もときどき読んでいる。
主人公は、愛人の娘として育った 32 歳の女性。恋愛に依存しているわけでもない自立した人物として描かれるのだけど、次から次へと新たな男がやってきては通り過ぎてゆく。落ち着いた作品なのにダレない巧さがあるが、それは舞台設定と人物の魅力、そして何より少しの謎を残した展開によるところが大きい。話が少し進むたびに、緊張感のある展開が待っている。主人公がずっと幸村を嫌っていた決定的な理由も、最終盤まで巧みに伏せられている。
作品としては普通に楽しめるのだけど、何より場所が良いですね。舞台となるワインバーの所在は千駄ヶ谷。主人公が住むのは代々木で、おでん屋の海伊は参宮橋。東京に住んでいると、絶妙に惹かれる舞台だ。その土地に対する憧れというか、興味を持たせてくれる小説は好きだなぁと再確認した。