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もうなにもこわくないって言える日は生きてるうちには来ないのでしょう
そこならば涼しいのでしょう雪国も夏は夏だし顔は崩れる
眠れない日々に私を眠らせるビンゴゲームになりゆく銀紙
無理矢理に体を押し込め目をつむる冬の布団の冷える頃
全身を使って登る足音と散らばる冬毛のやわらかなこと
重すぎる箪笥に文句を言わないで母の実家から着いてきたから
何時間木目の顔を数えても消えぬ猫の隈取り私の青クマ
憂鬱を馬鹿にするほど陽気に出来た数年ぶりに作った前髪
安売りの嗜好を詰め込み破裂する夕飯の鍋はしっかり食べる
プラスチックを齧る気持ちでビニール捻るアルファベットチョコ
とろついた毛皮の中にカチカチの米粒が光るどうしておしりに
円満にさらばと言える場所なんかどこににもないし信じていない
一生に使える分の努力の量中3までに使ってしまった
思想と人格は別物とわかっていても友情は冷えてく
怠惰で愚かで卑しい自分が許せないのに燃え続ける電気ストーブ
いちご味が甘酸っぱくなってきたように嘘が嘘でなくなるには
沈みきっても呼吸はしているのだろう難破船の「んぱ」の部分
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この夜を乗りこなしたい布団でさ誰かがわたしを嫌っても
相四つを組んで勝てるのは自分だけ誰にも差手は取らせない
スケールの大きな相撲と言われたい心くらいは心くらいは
ひとりきり かいなを返す練習を インターネットのボタンひとつで
昔から見ていた人が紺色のジャンパー光る金の名札
上がれるわけでもないのに浮つきながら自分の四股名を考える
枡席で喝采浴びてみたもののテレビが1番快適快適
こたつから並んで一人三役を放送席の妄想を
ありえない工程を踏むセルフケアいつまでも見る時の散らかり
謎セレブ4時から起きてヨガしてる起きたくないのに起きているおれ
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冷食の今川焼きにある愛は血よりも熱いカスタード
そうですか熱いとこから冷えきってマダガスカル産バニラの種
ズル休み気泡をひらで押しつぶす偽物色した磨りガラス
こんなものあるから部屋が狭いのだぐらつくベッドを葬った