現代ポップミュージックは大体4分前後に収められる、これは常識。
メロ始まりなのかイントロがあるのかソロはどうするアウトロは、とか色々フォーマットはあれどその時間は概ね4分前後に収まることがほとんど。
そして多くのシングルカットされた音源というのは同時にミュージックビデオが制作される。
このミュージックビデオ、単なる歌唱演奏シーンというのは案外少なくてどちらかといえば約4分間にストーリーが紡がれることが多い。
たった4分前後の世界でどんな表現ができるのか、音楽に付随する映像としてどんな世界観を構築できるのか。
映像クリエイターはもちろん、直接自分の商品となるミュージシャンとしても腕の見せどころである。
僕はそんな物語性があるMVが好きなんだけど、中には最後の最後で視聴者に大どんでん返しのネタバラシをする系のMVがある。
メタルギアソリッドシリーズでオセロットがKGBの局長と通信した後、CIA長官と通信し自身がトリプルクロス(三重スパイ)だと語ったり、MGS5でビックボスがビックボスだけどビックボスじゃなかった時のような衝撃をMV作品で見れることは稀である(分かる人にしか分からないシリーズ)。
今日はそんな物語性があるMVの中から個人的に好きなMVを1つ紹介したい。
イエス/Acid Black Cherry
この楽曲は2012年初頭に発売されたシングル曲で、一時期は街中で流れていたのでABCの楽曲の中でも比較的メジャーなナンバーといえる。
冒頭で散々「4分」と言っていた手前申し訳ないがこの楽曲は約6分間、バラードはテンポが遅く長くなりがちなので許して欲しい。タイトルの「たった4分」とは一体なんだったのか。
人によってはいわゆるビジュアル系に属するバンドといえるので抵抗があるかも知れないけれど、ぜひ好き嫌いせず一度味わって欲しい。
そしてできればまずは歌詞を見てからMVを見て欲しい。
「愛してる 愛してるよ」
ポケットの中 "誓い”をしまい込み 君に会いに行くよ
どうかこの指輪を受け取ってくれませんか
どう見てもプロポーズである。
なるほど、だから「イエス」なのかと。
「イエスと言ってくれますか?」なのか「返答がイエスだった」なのかは分からないけど、なるほどこりゃプロポーズがモチーフの曲だと名探偵じゃなくても分かる。
しかしMVを見てみると、yasu(Acid Black Cherryの主催者でボーカリスト)と一緒に登場するのは幼子である。
小学生高学年ぐらい、年齢にして10~12歳ぐらいに見える。
はて、プロポーズにしては早すぎないだろうか。
そりゃ創作の世界はなんでもありとはいえ、右を向けば「右を向いている人がいる!」とクレームが来るこの時代に随分思い切った挑戦をするものだと思う。
でもそうじゃない、最後まで見ればそうじゃなかったことが分かる。
早くこのお気持ちを見たあなたと共有したいものである。
その答えは実際に見て確かめて欲しい(一度このセリフを言ってみたかった)。
ちなみに個人的なお気持ちを表明しておくとラストサビで転調するという手法は非常に多く取られるが、イエスはCメジャーからD♭メジャーに転調している。
この転調、聞けば聞くほど叙情を掻き立ててくれ大好きである。