(前置き)この記事は万年筆を使っている人を想定して書いています。万年筆を使わない人にとっては意味不明な言葉が登場しますが、悪しからずご了承ください。
インク吸入におけるメリット
現在売られている万年筆において、インクの補充方式でメジャーなのは「回転吸入式」「コンバーター」「インクカートリッジ」あたりだと思う。
このうち、僕は長らく回転吸入式を好んでいた(主に海外メーカーの万年筆)。しかし最近、プッシュ式のコンバーターが付属しているカスタム845を使い始めたら、インク吸入面においてパイロットの万年筆を見直した。
その理由は4つある。
1つ目は、コンバーターの後部を押すだけでインクを補充できること。回転吸入式では万年筆の尻軸を回してインクを吸入するのだが、個人的には回すよりも押すだけの方が楽だと感じた。
2つ目は、インク吸入時に首軸が汚れないこと。たとえば、ペリカンの万年筆でインクを吸入する場合、ペン先全体をインクに浸すことになっている。この場合、よほど器用な人でないと首軸にもインクが付いてしまう。しかし、パイロットの万年筆の場合、ペン先にある穴(俗にハート穴と言われる部分)までをインクに浸せばインクを吸入できる。このため、首軸は汚れない。
3つ目は、インク吸入時にゴミがペン内部に入っても除去しやすいこと。以前、アウロラ社の万年筆(回転吸入式の万年筆)を使っていて、インク残量が減ってきた時にインク窓(透明になっておりペンの内部が見える)を見たら、ペンの中に繊維が入っていることに気がついた。ペンの中にゴミが入った場合、ペン先を外さないとゴミを取り出せない。各メーカーのペン先の外し方を知っていれば済むことだが、そうでない人の場合は困ってしまうだろう。しかし、コンバーター方式の場合、誰でもコンバーターを外すことができるので、ゴミの除去で困ることは無い。
4つ目は、インク瓶の中にインクが少ない場合でもインクを吸入できること。これは、インク吸入時にペン先全体をインクに浸す必要がある万年筆と比較した場合の話。2つ目の理由に書いたとおりパイロットの万年筆はハート穴までをインクに浸せばインクを吸入できる。このため、ペン先全体が浸るだけのインクが瓶の中に残っていなくてもインクを吸い上げられる。これは地味に助かる。
以前からパイロットの万年筆は価格の割に良くできていると思っていたけれど、今回改めてその良さを見直した。
(ちなみに、この記事ではプッシュ式コンバーターを取り上げているが、パイロットは回転式のコンバーターも製造している。)
余談(渋いデザイン)
デザイン面においてはパイロットの万年筆よりも海外メーカーの万年筆の方が素敵だなと思うことが多い。パイロットも色鮮やかなペンを一部作っているけれど、海外製品に比べると、全体として渋いデザインのものが多い印象を受ける。
個人的には、色鮮やかなペンをもう少し増やしてほしい。しかし、このデザイン傾向のおかげで、海外メーカーの万年筆に対して差別化を図ることができている面があると思う。
華やかなデザインが多い海外メーカーの万年筆に比べると、パイロットの渋いデザインにはどことなく「和」というか日本らしさが漂っている。海外の万年筆ユーザーから見れば、それもパイロットの魅力なのかもしれない。