「私たちはもう、舞台の上」

文学少女
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劇場版少女歌劇レヴュースタァライトを映画館で見た。

「私たちはもう、舞台の上」

作中に何度も登場するこのセリフ。僕は終盤、最後のこのセリフを聞いたときに初めて、このセリフの中にある「私たち」が、観客である僕自身であることに気がついた。僕たちはもう、舞台の上にいた。僕は観客ではない。もう、とっくのとうに、舞台の上にいた。もう舞台にいるのに、いつまで観客の気分でいるのかと、聞かれているような気がした。このままではいけないような気がした。

帰りの電車は空いていた。僕は劇中歌を聴きながら、向かい側のがらりと空いた席の上にある窓から、左に流れてゆく、夜になろうとしている青く冷たい景色を眺めていた。冒頭の電車のシーンと、今の状況を重ねていた。電車は、次の駅へ。では、私たちは?では、僕は?

傘をさして、家に向かって歩き出す。線路沿いの道を歩いていると、ピンクのレインコートに包まれ、右手に大きな黄色い花も持った小さな女の子が、楽しそうに歩いていた。その様子を、その子の両親が優しく見守っている。僕は、なんだか嬉しくなった。いい光景を見たと思った。