昨夜は、昼寝をしてしまったせいか、なかなか眠ることが出来ず、レディオヘッドの「KID A」を聴きながら、さみしい夜を過ごしていた。ひとりの夜、陰鬱な電子音の曲が続くこのアルバムを聴いていると、あまりのさみしさに身を引き裂かれるような思いだった。エレクトロニカが強いこのアルバムは、批判もかなりあるようだが、僕はとても好きだ。僕はこれほど悲しみと絶望に満ちたアルバムを知らない。
あまりよく眠れず、早く起きてしまったが、意識が冴えて二度寝もできず、結局僕はそのまま起きてしまった。陰鬱な夜を引きずっていて、目覚めてからも、気持ちがふさいでいて、頭が重たかった。どうにもならない過去のことを考えては、どうにもならない憂鬱に襲われた。こんな僕が存在していることに、申し訳なくなって、また、憂鬱になる。
大学に着き、僕はまず喫煙所に向かった。ハイライトを一本取り出し、マッチで火をつける。マッチは最後の一本だった。そのことも、また、僕を憂鬱にした。いつものごとく、僕は自然に目を向けた。美しい秋の色に染まった木の葉と、美しい青空と、鳥の鳴き声。そのどれもが、僕を苦しめた。太陽に照らされて美しく輝くその景色を、僕は見ることが出来なかった。もうやめてくれ。自然の美しさが、僕を苦しめる。僕はすべてを拒絶していた。自然も、人も、本も、音楽も、自分も。僕は何もしたくなかったし、何もされたくなかった。一人になりたかった。そのくせ、僕は、寂しかった。この矛盾。僕は、僕の方に流れてくる白い糸のようなタバコの煙を見つめていた。