濡れたカラス

文学少女
·
公開:2024/6/19

 久しぶりに、大雨が降った。大きな雨粒が、勢い良く地面にぶつかり、世界に音を充満させる。外を歩いても、屋内にいても、絶えず大雨の音が聞こえてくる。地面には大きな水たまりが広がり、そこに落ちる雨粒がつくる波紋が、美しい模様を描いている。深い水たまりに足を入れないように、リュックがなるべく濡れないように、なんてことを考えながら、僕はキャンパスを歩く。僕は飲み物を買おうと自動販売機がある場所へと向かった。そこに、カラスがいた。カラスは間近で見ると、思ったよりも大きい。雨に濡れ、黒い羽根を艶やかに輝かせ、大股で、ゆっくりと闊歩していた。カラスが歩く姿は、堂々としたものだった。少し高い標識に飛び移り、カラスは灰色の空を見上げていた。濡れたカラスの羽は、ほのかに、紫の輝きを持っていた。美しいと思った。