人生でもっとも美しい落ち方をした枯葉

文学少女
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 十一月二十二日

 その枯葉は、僕が人生で見た中でもっとも美しい落ち方だった。喫煙所でハイライトを吸いながら、僕は空を見上げていた。雲一つない、秋らしい、どこまでも澄んでいる、透明な、水色の青空だった。僕の気分も、とても晴れやかだった。木々についている葉は、黄色や、淡い紅に染まっていて、葉を散らした木は、細く、弱々しい枝を空に向かって伸ばし、毛細血管のように広がっている。小鳥のさえずりが、静かな世界の中で美しく響き渡り、もつれあっていた。ぴよぴよと鳴く声。ピーと鳴く声。いろんな美しい鳥の鳴き声が、混ざって、響き、秋の合唱を歌っている。白い木漏れ日が、地面に点々と落ちていて、その木漏れ日に照らされた羽虫は、澄んだ空気の中を舞っている。美しい光景だった。そして、その枯葉は落ちてきた。

 とても高いところから、その枯葉は落ちてきた。空気抵抗をうけながら、ゆっくりと、優雅に落ちてきて、そして、ゆったりと、静かに回転しながら、まっすぐに落ちて来るその枯葉は、とても美しかった。僕はその枯葉に目を奪われ、見つめていた。その枯葉は、音もなく、そっと、地面に落ちた。褐色のその枯葉は、どこも欠けておらず、穴もなく、しっかりと形を保っていた。葉脈は、より深く、暗い褐色に染まっている。僕はその地面に落ちた枯葉を、そのまま、見つめていた。鳥は、相変わらず美しい鳴き声を響かせている。見上げれば、葉を散らした細い木の枝のその奥に、透明な青空が広がっている。それは、ほんとうに、美しい眺めだった。

 そして、僕は昨日、恋人ができた。