東京のビル、赤い光

文学少女
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公開:2024/11/21

 今日も雨が降っていた。昨日ほど寒くはないけれど、温かい息を吐くと、吐いた息は真っ白に染まっていた。電車に間に合うか微妙だったことと、今日は定期を買わなければいけなかったから、急ぎ足で駅に向かう。雲が空を覆っていて青空が見えないし、雨の中急ぎ足で駅に向かわなければいけない一日の始まりは憂鬱だった。道を歩くときも、電車に乗るときも、僕はいつも音楽を聴いているが、音楽を聴かずに環境音に耳を澄ませるのも、たまには楽しい。電車や車が走り去る音、雨粒が傘に当たる音、そんな日常の音を、たまには聞いてみる。

 実験が終わり、もう外は暗くなっている。窓の外を眺めると、冷たく暗い夜の中で、東京の街には高いビルがいくつも立っていて、白い光を窓から輝かせ、等間隔に赤い光が灯り、点滅している。ある高さ以上の建物は赤い光を灯さなければいけないというのを、僕は小学生のときに行ったクリーンセンターの社会科見学で知った。六十メートル以上になると、赤い光を灯さなければいけないから、クリーンセンターの煙突の高さは五十九メートルになっていると、職員の人が説明していた。東京の夜空はさみしい藍色で、星はよく見えないが、ビルにつけられている赤い光はよく見えて、その赤い光を見るたびに、僕は、このクリーンセンターの話を思い出す。

 昨日、高校の時に書いた書きかけの小説を人に読んでもらった。読み返すと、高校にいたときの自分の記憶がよみがえってくる。そして、不器用ながらも、なんとか自分と向き合おうとしているその文章に、僕自身驚いてしまった。それを読んでもらい、感想を言ってもらったことで、高校の時の自分が、少し、救われたような気がした。