「心理学・神話・錬金術」というタイトルを奇妙に思う人もいるかもしれないが、これらのつながりは心理学者ユングを足掛かりとすれば容易に分かることであり、僕が突飛な発想をしているわけではない。この文章は僕が最近ケレーニイや錬金術の本を読む中で気づいたことをまとめた試論であり、本格的にまとめられる段階に僕はいないし、もうこのことについて論文を書いている人がいるかもしれない。
この発想についてはユングを発端としているが、つながりの内容の中心にあるのは錬金術である。まず、ユングは「心理学と錬金術」という大著を著している。これは心理学と錬金術における表徴に関して書かれたものであるのだが、僕の手元にはなく、読み通したわけでもない(そのため、僕は本格的にまとめられる段階にはいない)。心理学と錬金術の両者をつなげているのは、表徴である。フロイトやユングの分析心理学では、夢に現れる表徴(暗示)から、人間の無意識がどのようなものであるかを類推していく。そして、錬金書の内容は錬金術の説明というより暗示であり、その表徴から類推し、錬金術師は錬金術を研究していく。
さらに、神話と心理学(および錬金術)について。ケレーニイの神話学研究は、神話、石像、祝祭、古代の壺に描かれた図を表徴として、そこから神話を生んだ人類の無意識への探求へと進んでいく。これは明らかに分析心理学につながっていて、つまり錬金術につながっていることが分かる。実際、ケレーニイはユングと共著で「神話学入門」という本を著している上に、ケレーニイの「迷宮と神話」に収められている「魂の導者・ヘルメース」の初出のタイトルは「神話、グノーシス、ならびに錬金術におけるヘルメース的原理」となっている。これらのことから、「心理学・神話・錬金術」がつながっていることが分かる。
(追記:後から発覚したのだが、種村季弘著「黒い錬金術」に「神話と錬金術」という論考があり、そこでケレーニイと錬金術についての考察があった。興味がある方はそれを読むことをおすすめする。僕が出る幕はなかったようだ。)