誕生日祝いにフルコースをご馳走してもらった。景気よく聞こえるが、料理好きな社会人(営業職)がスーパーやコンビニで買ってきた材料で自宅で作るフルコースだ。1品目の冷菜こそ海老のカクテルだったが、2品目のコーンスープはインスタントで、粉にお湯を注いで作るやつだ。なるほど、と思った。作れなかったら買ってくればよいのだ。このコースを絶対に踏破してみせるぞ、という気概を感じた。あとインスタントのコーンスープはふつうにうまい。
次々と出てくる料理を食べていると、実家のひな人形のことを思い出した。
母は凝り性ではけしてないのに無謀なチャレンジを始めてしまうひとで、ひな人形を手作りするという宣言をして、4年くらいかけて1体1体仕上げていった。当時の私は小学生だった。手作りといってもキットのようなもので、人形の土台と首は用意があるので、その土台にすこしずつ布をあてて女房装束や直衣(でよいのか呼び名は)に仕立て、首を植えて完成させる。当然手間がかかる。1年目はお内裏様くらいしかできていなかったので、スカスカのひな壇を埋めたのは弟のゴジラやガンプラだ。勢力は圧倒的に平安貴族の不利である。今でも写真が残っている。あのハイブリッドひな人形を思い出すたびに、なんでもいいから数を揃えて人前にだすと、とりあえず記憶には残るんだな、と勇気がわく。