わたしは、忘れ物をしない子どもだった……と、記憶していた。
今朝、わが家の小学生を送り出してしばらくしたあと、上履きを忘れていることに気づいた。「仕方ない、届けるか……」と思い、小学校へ向かう。図工の授業は図工室で行われているようで、誰もいない教室のわが子の机の上に上履きを置いてきた。
帰宅後、たまたま母から電話がきたので、「わたしは忘れ物なんてしなかったのにね」という話がしたくて、子どもの上履きのことを話すと、「あなたもよく忘れ物をしたもんね」と言われて驚いた。習字道具を友だちに借りたまま返さずにいたこともあるらしい。ひどい。
過去の自分の記憶なんて、全部ウソかもしれないと思った。自分にとって都合の悪い記憶を少しずつ消しては、勝手にポジティブに変換した記憶を切り貼りしているだけなのかもしれない。それで、なんとなくまともな人間として生きてきたようなつもりになっているんだろう。
人の記憶は本当にアテにならない。