シンバルをガチってる人

caesarcola
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自分は「なにも知らないアホのふり」をしているときがある、と自分の中では思っていたが、最近ではそれが「いや……自分はふりでもなんでもなく”なにも知らないアホ”だな」と思うようになってきた。しかしこれは全然ネガティブな発想ではない。自分がアホだと思えることで、それなら周りも全員アホだなと思っているだけのことだ。

例えば、クラシックのコンサートに行ったとしよう、なんか色々な楽器がたくさんあって……トランペットとか……チェロとか……バイオリンとか……そういうのだ。大人がたくさん居て、なんかピシっとした顔つきをしているし…彼らは研鑽を詰んだ楽器演奏者なのだろうということは想像がつく。 しかし、その中で私はシンバルを見つけた。1分に1回くらいジャーンとでかい音を鳴らすアレだ。そしてシンバル演奏者を見た私は素直にこう思う。「シンバルに上手いとか下手ってあんのかな? ただタイミングよく音を鳴らすだけなら、カスタネットの延長だし私にもできそうだけど」

② まあでも、別の思考が割り込んでくる。「いやいや流石になんかあるっしょ。私がやったことないから知らないだけで、シンバル界にも技巧や細かい能力の多寡があって、我々には知らない奥深い技術で研鑽を積んでいるんでしょう」そういう想像力を働かして、口を閉じてじっとしておこうと思う。

③ でも、この思考が敵の思うつぼだったらどうする? ホントはマジでシンバルは超絶イージー楽器で、彼らはポテチ食べながらぼーっと見たYouTubeの「シンバル超初心者講座」を見ただけでその技術を習得し、偉そうな顔をしてコンサートの舞台に立って、トランペットに人生を捧げてきたケビンと同じ称賛を受けていたらどうする? いや別にシンバル奏者を咎めたところで私にいいことなんて何もないんだけど、その"容易さ"にもし騙されていたらと思うと我慢がならない。

④ だから私は口に出す。「シンバルに上手い下手とかあんの? 日帰り講習で免許取れそうだけど」。自分の想像力は一回無視して、「なにも知らないアホのふり」をする。そのブラフは通さん。ゴーストタイプの技がノーマルタイプに通じないように、「何も考えてない奴」には通じない技があることを忘れるな!

⑤ でも、冷静に考えるとこれって別に"アホのふり"じゃないよな。だって本当に何も知らないんだから。むしろ『私が知らないだけでなんかあるんだろうな……』の"想像力"を働かせた部分が"賢いふり"だよな。私は、自分が賢いフリをすることで通されるブラフがあるくらいなら、自分のアホをさらけ出す人間でありたい。ちょっとは想像力を働かせろよ、と思われるかもしれないが、それが利用されるかもしれないだろ。気を付けろ! 君たちの想像力は利用されてるぞ!

まあこんなことをしていると、いつかシンバルをガチってる奴に刺されたりするのだろうけど、そのシンバルをガチってる人が優しい人間で、アホの私に優しく教授してくれることを祈る他ない。

以前は④までだったけど、最近は⑤まで思考が進行してきた。裸の王様になるくらいだったら、裸を見せつける気でいく……そんな感じだ。大丈夫、皆が着ている服も実はペラペラさ。…………そうだよね? もしかしてホントは厚着してる? それどこに売ってた? まだ私も間に合う?