⚠︎作中に性暴力描写があります。無理せずにお読みください。
こいぬ
4歳の時、私は仔犬になった
保育園の帰りのバスで
3人の男の子に囲まれて
みんな笑っていた
スカートをめくられて、パンツを脱ぐように言われた
ひとりの男の子が、そこに顔を近づけた
他の2人の命令されて
下着の中にミミズが入ったようで、不快だった
他には何も
みんな笑っていた
バスの窓から、外飼いの犬の親子が見えた
母犬は甲斐甲斐しく仔犬の世話をしている
仔犬はじれったそうに身を捩っている
みんな笑っていた
私も笑った
バスは、いつものバス停で止まった
20歳の時、涙があふれた
「わたしが10歳の時です」
彼女の落ちついた声が、4歳の私を呼び覚ました
ながい時間の流れで、
成長し、変わり、忘れ、疎遠になったのに、
体が硬直した
止まらない涙を一生懸命拭う
その手は毛むくじゃらで、薄汚れている
獣くさい
私はとうに、犬になり果てていたのだ