知識をどう活かすか

catatsuy
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公開:2025/2/24

自分はこれまで勉強してきた知識を日々仕事に活用している。

人によっては、「学校の勉強は役に立たない」と自信満々に言う人もいる。個人的には、この意見にはかなり違和感がある。そう言っている人は、以下のいずれかに当てはまるのではないかと思う。

  • 自分の知識が、これまでの勉強によって得られたものだと気付いていない

  • 活用できるほどの知識を、これまでの勉強で得られていない

学校の勉強は、残酷なほどに役に立つ。しかし、学校の勉強では「応用の仕方」までは教えてもらえない。応用の方法は自分で考えなければならない。多くの人は、それが思いつかないから「役に立たない」と思ってしまうのだろう。

例えば、ソフトウェアエンジニアに関する言説の中で、私は以下の主張には大いに疑問を持っている。

  • 数学ができなくてもプログラミングはできる

  • ソフトウェアエンジニアをやるのに、基本情報技術者の知識は必要ない

これらの言説は、プログラミングスクールが人を集めるために耳障りの良いことを言っているだけのように思う。実際、私は昔「ソフトウェアエンジニアになりたいなら、基本情報技術者の勉強をしてほしい」とSNSに投稿したところ、知らない人から憤慨したリプライが来たことがある。どうやらこのあたりの話題は、一部の人にとって非常に不都合な真実のようだ。

基本情報技術者試験は、決して簡単な試験ではない。しかし、ソフトウェアエンジニアとして働くのであれば、そこに出てくる内容は常識として身につけておくべきことばかりだ。だからこそ、エンジニアを目指す人にとって最適な試験だと言えるのだが、残念ながら、それにすら受からないのに「自分はエンジニアとして十分やっていける」と思いたい人がいるようだ。

私からすれば、あの程度の内容が理解できずに、どうやって仕事をするのか疑問だ。ただ、人間というのは自分の見えている範囲のことしか意識できない。それは私自身も同じで、苦手なことはなかなか視界に入ってこない。だからこそ、基本情報技術者の知識が必要な場面が見えていない人は、自分は問題なく仕事ができていると思い込んでしまうのだろう。しかし、基本情報技術者の内容が常識になっている人から見れば、その人は「仕事ができない」と思われているはずだ。

こういうことを言うと、大抵の場合は嫌われるので、あまり言わないほうがいいのかもしれない。ただ、私はたまに若い人と話す機会がある。そういうとき、彼らが「学校の勉強は役に立たない」「基本情報技術者の知識は必要ない」と思い込んでいて、明らかな機会損失をしている場面を見かけることがある。若い人には大きな可能性があるからこそ、そういう言説に惑わされてほしくない。そう考えると、私のように勉強した知識をフルに活用して仕事をしている人間が、「すごく使うから、周りに惑わされずに勉強しよう」とはっきり言う義務があると思っている。

これは何も基本情報技術者試験に限った話ではない。私が高校時代に学んだことで、最も仕事に活かしているのは数学と政治経済だ。特に政治経済は、現代社会を生きる上で常識として知っておくべきことを学ぶ科目なので、知らずに生きていくのは難しい。しかし、実際にはそれを知らない人が非常に多い。そのたびに「こんなことも知らずに、どうやって現代社会を生きていくのだろう?」と驚いてしまうのだが、本人はそもそも、政治経済を学んだ人間にとっての常識が分かっていないため、他の人も知らないだろうと思い込んでいる。

だからこそ、これは残酷な話だ。私自身も、他の人にとっての常識が理解できていない場面があり、大きな損をしていることもあるはずだ。だからこそ、日々、興味のあることをしっかり学んでいこうという気持ちで生きている。

実際、私は上記のような状況に直面しても、ほとんどのケースで教えることはない。知識がある人は、それを活用するか、あるいは知らないふりをするかを選べる。だから、本人が気付くことはほとんどないだろう。そして、自分の知らないことは、他の人も知らないはずだと、いつまでも思い込んでしまうのだ。

私は数学をある程度勉強していたので、脳内でロジックをどんどん積み重ねていっても、普通に処理できる。どれだけロジックを積み重ねても、大抵の場合、数学ほど難しくはならないからだ。しかし、数学を勉強していなかった人は、「こんなロジックを理解できる人は、この世にいないだろう」と思い込んでしまう。数学をある程度勉強した人にとっては簡単なことでも、気付かないのだ。

さらに言えば、高校以下の教員は「教育すること」が仕事であって、「教育された知識を応用すること」が仕事ではない。優れた教員であれば、学んだことの実際の応用範囲を教えてくれるが、ほとんどの教員は実務として応用する仕事をしていないため、それを教えられない。結果として、生徒たちは「教わっていることは実社会では役に立たない」と思い込んでしまうのだ。

この問題の解決策は、N高やスタディサプリのようなサービスがすでにほぼ持っている。実際、これらの取り組みは教育の地域格差を急速に縮めている。これからの教育は、少数の優れた教師による映像教育と、LLMによる個別指導によって、急速に形を変えていくだろう。教師の仕事は、生徒のカウンセリングやカリキュラムの紹介などになり、勉強を直接教える役割は急速に減ると思う。

では、これまで勉強しなかった人はどうすればいいのか? 幸いなことに、本屋には安くて優れた参考書があふれている。技術書は執筆できる人が少ないため、選択肢も限られ、品質の低い本を高い値段で買わざるを得ないこともある。しかし、参考書は買う人も多く、種類も豊富なため、競争が激しく、安くて優れた本しか生き残れない。もし映像教育が良ければ、前述のスタディサプリは月額2000円程度で利用でき、非常にリーズナブルだ。今はそういう時代だ。学ぶ意思があれば、安く学べる環境は整っている。環境のせいにせず、まずは一歩踏み出せばいい。