最近、「八百万のOSS」というPodcastを始めた。
実は、Podcastは昔に何度か1人でやろうとしたことがある。けれど、どれもうまくいかなかった。
録音して公開するだけならできる。ただ、それを続けるのが難しい。1人で話す内容を考えて、1人で録音して、1人で編集して、1人で公開して、1人で宣伝する。これを継続するのは、自分にはかなり難しかった。
なので、今回Podcastを始めてみて思っていることを書いておきたい。
機材は最初の問題ではない
Podcastについて聞かれたとき、まず言うことがある。
マイクは最初から買わなくてもいいと思っている。
最近のMacやスマートフォンのマイクはかなり優秀なので、少なくとも始める段階では十分だと思う。むしろ、安い外付けマイクをなんとなく買うくらいだと、Macの内蔵マイクに明確に勝てないことも多いのではないかと思っている。
外付けマイクを買うなら、それなりに高いものを買わないと意味が出にくい。
動画でも、有名なYouTuberがiPhoneで撮った動画を普通に出していたりする。もちろん撮り方や環境は大事だけど、今は「専用機材がないと始められない」という時代ではない。
Podcastも同じで、最初に気にするべきなのは機材よりも、何を話すのか、どう続けるのか、どういう番組にしたいのかだと思う。
Podcastは本当に聞かれない
Podcastは本当に聞かれない。
ブログやSNSの投稿なら、流れてきたものをすぐに読むことができる。YouTubeならサムネイルや短い切り抜きで見つけてもらいやすい。けれどPodcastは、聞く側に時間が必要になる。
音声はながら聞きできる一方で、聞き始めるまでのハードルは低くない。検索で見つけてもらうのも難しいし、SNSで少し話題になっても、それがそのまま再生数や購読者数に結びつくとは限らない。
Podcastは、まず1つ聞いてもらうまでのハードルが高い。
だからこそ、最初の1つを聞いてもらえるようにする努力が必要になる。そして、1つ聞いた人に「他の回も聞いてみよう」と思ってもらえるように、コンテンツ自体がおもしろくないといけない。
聞かれないから広報をしなくていい、という話ではない。むしろ、聞かれないからこそ、聞いてくれる人にちゃんと届けることが大事だと思っている。
Podcastを聞いてくれる人は、1人1人がかなり重要だ。
1再生、1購読、1アクセスの重みがかなり大きい。数字としては小さく見えるかもしれないけれど、その向こうには、実際に時間を使って聞いてくれている人がいる。
この感覚は、少し昔のインターネットっぽい。
たくさんの人に一瞬で流れていくというより、見つけてくれた人に深く届く。大きな数字ではなく、1つ1つの反応が重い。Podcastには、そういう良さがある気がしている。
続けるための分担
Podcastは、話すだけなら簡単そうに見える。
でも実際には、話すテーマを決める、収録する、編集する、最終確認する、タイトルや概要を書く、配信準備をする、公開したら告知する、という工程がある。
ちゃんとやろうとすると、かなり面倒だ。
自分たちの場合、このあたりの運営や編集はかなり相方に任せている。相方が収録環境や編集ツール、配信準備の仕組みを整えてくれているので、自分は主に話すネタや企画を考えることに集中できている。
これはかなり大きい。
もし自分が1人で、企画も収録も編集も配信準備も全部やることになっていたら、たぶん続いていないと思う。実際、昔1人でやろうとしてうまくいかなかった経験があるので、ここはかなり実感がある。
運営面については、相方が記事を書いている。
自分の担当は、話すネタや企画を考えることだ。ここに集中できる形になっているのは、継続する上でかなり重要だと思っている。
AIもかなり使っている
もうひとつ、継続するためにかなり大きいのがAIの利用だ。
Podcastの準備や公開後の発信には、ChatGPTをかなり使っている。
たとえば、テーマを決めたあとにアジェンダを作らせる。話したいことを箇条書きで渡して、順番を整理してもらう。収録後には、タイトル案や説明文、SNSに投稿する文章も作ってもらう。
もちろん、そのまま使うわけではない。最終的に何を話すか、どういう言い方にするか、どこを削るかは自分で決めている。
ただ、最初のたたき台を作ってもらえるだけで、かなり楽になる。
Podcastは、話す内容を考えるだけでなく、公開するときのタイトルや説明文、告知文まで必要になる。そこを毎回ゼロから考えるのはかなり大変だ。
AIを使うことで、考えるべきところに集中しやすくなる。番組の方向性や話す中身は自分たちで決めつつ、周辺の作業をかなり助けてもらっている。
これも、今の形で継続できそうだと思えている理由のひとつだ。
1人でやるならゲストありきが現実的だと思う
Podcastを1人でやるなら、ゲストありきにするのが現実的だと思っている。
1人で話し続けるのは難しい。しかも、収録以外の作業も多い。自分も昔トライして、うまくいかなかった。
ゲストがいれば話題が広がる。ゲストの知識や経験に助けてもらえる。ゲストをきっかけに聞いてくれる人もいる。番組としても変化をつけやすい。
なので、「Podcastを1人で始めたい」と相談されたら、ゲストを呼ぶ前提で考えた方がよいのでは、と答える気がする。
一方で、「八百万のOSS」は今のところゲストありきにはしていない。
これは、2人で始めているからできることでもある。1人で話し続けるのは難しいけれど、2人なら会話として成立する。毎回ゲストを呼ばなくても、自分たちだけで話すことができる。
だからまずは、自分たちだけで番組の型を作りたいと思っている。
学びがある番組にしたい
自分は、いわゆる雑談系のPodcastをあまり聞かない。
もちろん雑談系のPodcastが好きな人はたくさんいるし、それを否定したいわけではない。ただ、自分が聞きたいPodcastは、もう少し本題に寄っているものだ。
技術の話が聞きたい。 OSSの内部実装の話が聞きたい。 なぜそういう設計になっているのかを聞きたい。 実際に作った人、読んだ人、運用した人の視点で話しているものが聞きたい。
聞いたらちゃんと学びがあるPodcastがあればいいのに、とずっと思っていた。
だから「八百万のOSS」では、アイスブレイクのような雑談は基本的に入れていない。最初から本題に入る。OSSの概要だけでなく、内部実装にも踏み込む。聞いた人が、何かしら持ち帰れるようにしたい。
毎回テーマを決めて、そのテーマについてちゃんと話す。そこが他のPodcastとの差別化ポイントになると思っている。
個人的に参考にしているPodcastとしては、mozaic.fmがある。今も好きで聞いているし、技術の話をちゃんと深く話しているところが好きだ。
また、Turing Complete FMも印象に残っている。今は更新が止まっているように見えるけれど、技術の話をするPodcastとして、自分の中ではかなり参考になっている。
八百万のOSSも、単に情報を紹介するだけではなく、技術の中身に踏み込む番組にしたい。
ゲストは入り口にはなるが、軸にはしない
今のところ、まずは10回くらいまで自分たちだけで配信して、番組の型を作りたいと思っている。その後で、たまにゲスト回も混ぜていきたい。
ゲスト回は、初めて聞いてもらう入り口になりやすい。ゲストをきっかけに1回聞いてもらい、そこから他の回も聞いてみようと思ってもらえる導線を作りたい。
ただし、ゲストに完全に頼る番組にするつもりはない。
自分たちが取りたい認知は、「有名なゲストを呼ぶPodcast」ではない。
本気で技術の話をする、おもしろいPodcast。
そういう認知を取りたい。
ゲストに依存すると、呼べる人の範囲にも左右される。毎回強いゲストを呼び続けるのは難しいし、知り合いだけに頼ると広がりにも限界がある。
まずは、自分たちだけで成立する番組にしたい。その上で、ゲストが来たらさらにおもしろくなる。そういう形が理想だと思っている。
自分も学びたい
Podcastをやる理由は、誰かに学びを届けたいからでもある。
ただ、それだけではなく、自分も学びたいと思っている。
この年になると、深い技術の話をする機会は意外と少ない。飲み会でも、ガッツリ技術の話になることはあまりない。
でもPodcastなら、技術の話を本気でしたい人が話せる場を作れるかもしれない。
聞いた人が学べて、自分も学べる。そういう場所にできたらいいなと思っている。
続けることを一番大事にする
以前、ChatGPTと一緒にPodcastをやってみたり、Zennでnewsletterを配信してみたりしたこともある。その中で、Podcastは力を入れないと伸びないし、newsletterは準備がかなり大変だと感じた。
それでも、雑談系ではなく、ちゃんと学びがある番組をやりたいという気持ちは残っていた。
今の「八百万のOSS」は、その結果として始めたものでもある。
Podcastの作戦を考えるのは楽しい。どうやったら最初の1回を聞いてもらえるか。どうしたら1回聞いた人に他の回も聞いてもらえるか。どうしたら技術の話をしたい人に出たいと思ってもらえるか。考えることは多い。
ただ、最終的には継続することが一番大事だと思っている。
自分たちがおもしろいと思うものを作る。聞いた人に学びがあるものを作る。それを少しずつ届けていく。
1アクセスの重みが大きい。 聞いてくれる人が1人増えることが、本当にうれしい。 この感覚を大事にしたい。
Podcastは、長い時間をかけて積み上げるものなのだと思う。
焦らず続けていきたい。