なんとなく語りたくなったので、つらつら書き連ねてみようと思う。
火渡カイはタカラ(現タカラトミー)より販売されたホビー「爆転シュート ベイブレード」を扱った漫画・アニメ作品の登場人物である。主人公・木ノ宮タカオのライバルという、準主人公とも言えるポジションのキャラクターだ。今回はアニメシリーズ一作目の彼について話をしよう。
アニメの火渡カイは、非常にストイックな少年だ。誰とも馴れ合わず、最強を求めて戦い続ける、言動全てがクールなキャラクター。こう言ってはなんだが、ホビーアニメではよく見るタイプのライバルだろう。
そんな彼の物語だが、清々しいまでの「王道」だった。主人公と出会い、戦い、敗北するライバル、という構図は、ホビーアニメなら最早通過儀礼のそれだ。敗北後、世界大会の代表に選ばれたカイは、大会がチーム戦だと知るや否や、馬鹿馬鹿しいとその場を去る。早くも問題発生か?そう思いながら視聴を続けると、そこにはピンチに陥った仲間を助ける、無愛想なカイの姿があった。そうなのだ。火渡カイとはそういう男なのだ。努力する仲間にはつっけんどんな助言を。煮え切らない仲間には手厳しい叱咤を。単独行動しがちだが、仲間のピンチには颯爽と現れ、窮地を救っていく。まるでヒーローだ。彼の「勘違いするな」は、最早決め台詞といってもいいだろう。なにせ、助ける度に口にするのだから。
この手助けぶりは、誰かが欠けては世界大会を勝ち進めなくなるから、というのが主な理由だろうが、彼は彼なりに仲間を見つめていたのだろう。終盤のとある回で、友情を感じていたと暗に零した程度には。
火渡カイはカリスマだ。木ノ宮タカオが仲間と肩を並べて走る人間なら、火渡カイは先頭に立ち、部下を牽引していく人間だ。世界大会においては一歩引いた所から冷静に状況を観察し、仲間たちが補い切れない綻びに対してフォローを入れていた。そんなふうに立ち回れる男だからこそ、憧れてついていく人間が居たし、仲間たちもカイのマイペースさを受け入れていたのだろう。
以上、諸々から、仲間の中では人一倍大人びているカイだが、実年齢は小学生だ。己の欲望を正しく制御出来るほど、成熟はしていない。終盤、ずっと求めていた最強の力を手に入れたカイは、冷ややかに仲間たちの元を去っていった。そして追いかけてきたタカオに決別の言葉を吐き捨て、完全にその袂を分つ…のだが、次の回では己の本心に気付き、再び仲間に戻っている。なんとスピーディーな展開か。驚きはあったが、同時に納得もした。カイの言動の端々に、その片鱗が窺えたからである。
このイベントが物語の中盤辺りに起こっていたならば、おそらく彼は戻ってこなかっただろう。「最強」はカイにとって、それほど重要な目的なのだ。それは度々挟まれていた、何事かを思案する様子からも窺える。最強になりたい。ベイブレードで頂点を獲りたい。しかし世界中を旅し、仲間たちの尻拭い(カイ目線)を続ける内に、カイの心にはそれだけではない、別の想いが生まれていた。まぁ、旅の最中、単独行動は多いものの常に誰かを気にしていた辺り、カイが仲間を選んだのは当然の帰結だったのだろう。なんともかわいいヤツである。
と、こんな感じで滔々と語ってきたが、当時はここまで考えていなかった。カイのことは、ただ「格好良かったから好き」だったのだ。それが時を経て、アニメを見返したことによって、自分なりにカイへの「好き」を言語化出来た。実に喜ばしいことである。
とりとめなく筆を走らせていたら長くなってしまったので、今回はこの辺りで〆とする。せっかくなのであと一言。火渡カイはいいぞ。