2011年製作。カードゲーム「デュエル・マスターズ」を扱った、フルCGのホビーアニメ。当時は特に何も考えず、面白いなぁと毎週見ていたこの作品。年月を経て見返した時「このアニメ、こんな丁寧に主人公が成長する過程を描いてたの!?」と驚いた。道理で面白かった訳である。切札勝太シリーズ最初の作品にして、最もストーリーとキャラクター造形の完成度が高い作品。だと自分は思っている。ちなみに次点は続編のビクトリーV。ぶっちゃけ好みだけで言えばそちらの方に軍配が上がるのだが、いわゆる「推し」が居る補正による部分もあるので、本当に好みである。
切札勝太は、物語が始まる前から問題を抱えている少年だ。前シリーズの主人公・切札勝舞の弟として比較される現状を嫌っているためか、友人らしい友人は一人も居ない。自分のことも、兄が愛するデュエル・マスターズ(以下・デュエマ)のことも大嫌いだが、兄のことは憎からず思っているし、心の底では自分のこともデュエマのことも好きになりたいと思っている。自分を大きく見せようとする、少し捻くれた、孤独で寂しがりやの子供。それがこの物語の主人公だ。
この作品は、そんな彼がライバルや仲間、敵とのデュエマを通して、自分のこともデュエマのことも好きになっていく過程を描いている訳だが、これが王道をしっかりと押さえていて面白い。敵であるオンセンや、ライバルであるドラゴン龍が、勝太とよく似た問題を抱えている構図も良い。
細やかな勝太の変化も見逃せない。深読みかもしれないが、序盤の安定しない体幹や、好物であるカレーパンの扱い、一種の勝ち確演出である「ビクトリーモード」辺りは、意図してその変化を混ぜ込んでいたように思う。
9割方勝太の話で進めてきたが、彼の仲間たちはもちろん、ドラゴン龍やオンセンとその仲間たち、周辺のサブキャラたちもそれぞれいい味を出しているので、そちらの方も追っていくとより楽しめるだろう。とにかくキャラクターの動かし方が上手いのだ。みんなそれぞれの道理に合わない行動は取らない。だから物語も綺麗に回ったし、最高のまま着地したのだろう。まとまっていたのは、尺の短さもあったかもしれないが。
まぁ、そんな訳でデュエル・マスターズ ビクトリー。一人の少年の成長譚としてよく出来たアニメ作品であったことは、声を大にして言っておきたい。あとDVD出して下さいお願いします。レンタル落ちしかないのはあんまりではなかろうか。