小説の書き方のようなものを本屋で探してみた。結果的にはあったのだけれども、欲しい情報とは違って結局買わずに帰った。これでも小説らしきものは十五年ほど書いているのでいくら初心に帰るとはいえ、もう入門書という段階ではないのだろうなと知る。ストーリーやキャラの作り方などはてんで素人なのでたまに作り方講座を流し読みなどはしているけれども『小説を書く』そのものの行為──例えば、イラストの色塗りやデッサンのような技術本に相当するようなアドバイスは未だに満足に得られたことがない。未だに小説ってどう書くんだと頭を悩ませながらタイピングする。
昔から言葉に関する本などを図書館から借りては昔の人がつけた名前を知るのが好きだった。自然にも感情にも昔の人は喩えを用いて、あるいは新たに名前をつけた。美しい黒い髪を烏の濡れ羽色と呼び、桜が咲く頃の冷え込みを花冷えと呼ぶ日本の言葉が大好きだ。
遅筆なせいなのは、そうやって今自分の中にあるシーンをもっと鮮やかに映し出す言葉があるはずだと一つ一つ調べているからかもしれない……。もっと言葉の引き出しをスムーズに開けたい。