リウマチ ←なんて読む?

鈴木せりふ
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「リウマチ」という言葉、ずっと変だと思っていた。

リウマチの語源は英語の「rheumatism」とされる。これをカナ表記するのであれば「リウマチ」よりも「リューマチ」という表記のほうが、少なくとも現代的な感覚においては、より適切であるように感じられる。原語の発音準拠なら「ロイマティズム」じゃないのか、ということは一旦おいておいて。

実際にこの疾病のことを「リューマチ」、あるいは「リュウマチ」と表記することも、あるにはあるらしい。ただ、この分野を統べる学会の名が「日本リウマチ学会」であることから、少なくとも専門家の間では、リウマチという表記が最も一般的なようだ。

一方で、日本リウマチ学会のWebサイトは、 www.ryumachi-jp.com というURLを有している。リウマチというカナ表記に寄せるのであればriumachiであるところを、わざわざryumachiとしている。だからこの学会内においては、この疾病のことを「りゅ(う)まち」と呼ぶのがメジャーであるらしい。

ここまで考えたところで、やっと違和感の正体に気づいた。ここまでずっと、外来語由来であるとはいえ、日本の言葉として「riu」という発音は変じゃないか?という話をしていた。だけどそれは問題設定が間違っていて、ここで使われている「リウ」は、いわゆる歴史的仮名遣いなのだ。

歴史的仮名遣いにおいては、「ryū」を「りう」「りふ」と表記していた。「リウマチ」がその表記に基づいて書かれたのであれば、それを「ryūmachi」と読むのも間違いではない。現代の表記で馬鹿正直に「riumachi」と読もうとするから変だなあ、だったのであって、そこに別になんの不思議もなかったのだ。不思議なほど私に教養がないだけだ。

似たような例として、沖縄の百貨店「リウボウ」がある。これも文字面だけなら「riubou」と読めるが、現地の看板には「RYUBO」と大書されているし、Webサイトだってryubo.jpだ。たぶん現地でこの店のことを「riubou」と呼んでいる人はいないのだろう。リウマチと並んで、令和まで生き残った歴史的仮名遣いなのかもしれない。

しかし、「ryū」を「りゅう」と表記することを明記した「現代かなづかい」が告示されたのは、戦後すぐの1946年だった。一方で、日本リウマチ学会の設立は1957年。つまりすでに「りう(ryū)」の表記が使われなくなってから11年が経っているのに、日本リウマチ学会は敢えて「リウマチ」の表記を採用したことになる。まあたぶん、過去の文献との整合性とか、当時の実力者の力関係とか、そういうのがあったんだろうな。