3/5 ビアンバーにはバーが好きな人しかいない

チェス記
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 今日も午後まで寝ていた。

 桜とミモザの香りがするヘアケアアイテムの封を切った。春ですな。

 NHKEテレの「ハートネットTV」に、性的少数者の10代が性的少数者の著名人にお悩み相談をする回がある。

 今回はひとりっ子の相談者で、「このままパートナーが見つからなかったら親の介護などに1人で立ち向かうことになるのかと思うと不安だ」との悩みを吐露していた。わかる。20代半ばに差し掛かっている身からすれば、まだ10代だし大丈夫だよ〜と言いたくもなるが、10代のうちはそういうのが真剣に不安なんだよな。

 かく言う私も、1人で歳を重ねていくことに関しては覚悟が固まってきたのだが、1人で歳を重ねた「結果」のことというか、お金のこととか病気が悪化したらとか退職後の不安とか、そういうことまでは頭が回っていない。恐ろしい。

 相談役として、ロバート・キャンベル氏が出ていた。研究対象の国の言語(彼の場合は日本語)がめちゃくちゃうまいし、同性のパートナーがいらっしゃるらしいし、ロールモデルだ。

 番組に出ていた若者は、マッチングアプリで出会った人ともワンナイトラブ止まりになってしまうことが多い、イベントにも1回行ってみたけど楽しくなかった、どうすればパートナーに巡り会えるか、といった質問をしていた。わかる。

 性的少数者をターゲットにしたバーというのが存在しているが、そういうところにはバーに来るのが好きなような人しか来ないんだよな。2店舗1回ずつ行ったことがあるが、バーテンがバイフォビックだったり(最悪だな)交わされている会話から全く知性が感じられなかったりしてウンザリしたので、もう行く気はない。

 バーには例の性的少数者女性の交流サイトで出会った人と行ったのだが、彼女は周囲の空気に全く流されることなく、詩的散文と散文を分ける境界はどこにあるのかといったことを聞かせてくれた。浮世離れした人と仲良くなりがちだ。

 出演者の質問は、「無理のない範囲で人と会いまくり、出会いを待つべし」という答えに落ち着いていた。そらそうなんだけどさあ!!!!そら!!!そうなんだけどさあ!!!!!!

 とはいえ、異性愛者に比べてそもそも自分を好きになってくれる余地のある人の母数が少なく、子どもを持たない決断をする人が多いこのようなコミュニティの中で、横のつながりというのは一般的に言われる「家族のつながり」に匹敵する重要性を持っているものだろう。そういったつながりを、伝統的にはバーなどが提供し続けていたことも、わかる。

 私の周りにはなぜか性的少数者ばかりが集まっては散っていくので、助かっている。社会からはじかれた人に近寄っていく決断ができるの、同じように社会からはじかれている人が多い。それかめちゃくちゃ優しい人。私が社会からはじかれているのは主に発達の問題が原因です。

 断固として「性的少数者」と書く。「セクマイ」という語のノンポリ臭というか脱臭された感じが好みではなく、「クィア」という語にも結局英語を借りないと自己表現できないのかという絶望があるため。

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 それはそれとして今日、古賀さんの『おくれ毛で風を切れ』をくるんでいたフィルムを開けた。サイン本なのでフィルムにくるまれていたのだ。サインもこの目でしかと見た。

 親が焼き鳥を買ってきたよと言うので見に行ったら、私の好きなタレではなく、塩だった。一人暮らしだと全てに決定権がある(決定権をもたなければいけない)ので、このような微妙なうまくいかなさが新鮮に感じられた。

 物置になっている椅子の上に猫が座っていたので、椅子の上の物をどけてやったら、満足げに丸まって眠り始めた。

@cesuki
他人の生活(善き人のためのソナタ)