3/9 ソヴィエト的プリンター

チェス記
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 今日は都内で大学の研究発表会があった。類似分野を扱う研究室が3つの大学から一堂に会し、今年度卒業する学生が卒論や修論について発表を行う。京都から来ているのはうちの研究室だけで、残りの2大学は都内にある。

 先輩を大学の建物の前で見かけたので声をかけて入り、隣り合って座っておしゃべりしながら時間を潰す。機材の調子が悪く、冒頭にあるはずだった自己紹介の時間が丸ごと潰れた。

 そこからは夕方6時まで怒涛の発表続きである。5本連続。時間が押して休憩が短縮になったりして、流石に疲れた。

 最初の発表は私も関心のあるテーマで、おまけにこの学界では珍しい南スラヴ諸国に関するものであった。なのですかさず質問を繰り出した。そのほかには、私が気になっている女流詩人についての発表などがあり、全体として実りの多い回だった。

 私は最後の発表でコメンテーターを求められていた。準備の時間さえ与えられれば、人前でハキハキ話すのは比較的得意である。なんとかこなした。帰り道で、先輩に「今日も、ハキハキと…」と言われた。なんだ?お前は…

 途中で先生方が持ってきてくれたお菓子が回ってきた。指導教官が持ってきた京都の阿闍梨餅があったので、私と先輩はすかさず取ったのだが、社会人経験のある同期が「これは京都のもので僕たちいつでも食べられるので、東京の皆さんが先に召し上がってください」と言って辞退しており、「大人」を感じた。

 発表会の後は懇親会で中華料理店へ。この大学で集まりがある時の行きつけらしい。期せずして同じ大学の人間が比較的固まって座る席順になってしまった。向かい、指導教官だったし。

 今日の指導教官は開始時刻を30分遅く勘違いしているわ人の話を聞いていない質問を繰り出すわで心配だったのだが、食事の席ではめちゃくちゃ学術的に面白い話を次々と繰り出してくれた。ソヴィエト的である。ロシアをやっている人間はこういう人を形容する時に「ソヴィエト的」と言えばいいと思っている節がある。

 関東と関西の間の文化の隔たりは大きい、といったような話になった時、大学進学に伴って関東を離れ近畿に引っ越した私に、先生がそう感じるか尋ねた。私が「関西には東日本大震災の記憶がない代わりに阪神・淡路大震災の記憶がある」と言ったら共感を集めた。

 駅のホームで17アイスを貪り食って帰宅し、明日の発表に使うレジュメを20部刷った。実家のプリンターは10年以上酷使され続けており、だいぶガタがきている。3枚に1回は紙が詰まるわ20部だっつってんのに8ページ目を30枚刷るわそのくせ1ページ目は20枚しかないわで最悪であった。

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 私は両性の婚姻の平等(同性婚問題はセクシュアリティではなくジェンダーの問題と思っている故の言葉遣いである)が実現するまで入籍をするつもりはないので、この分だと入籍は遠い未来のことになりそうである。まずハード面以前にソフト面の問題があるのだが、それは置いておく。

 異性愛者と思しき同期が「家庭を持ちたいので就職する」とか言っておりケッ!となったが、よく考えてみると、入籍に伴う諸々の援助を利用しない2人組の行く先は、入籍をする2人組より険しいはずである。つまり、私の行く道は彼の行く道より険しい可能性が、高い。

 そう考えると、やっぱり博士は諦めて就職した方がいいんかなあ。

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 嘘みてーな貼り紙でお別れです。それではさようなら

トイレの個室の壁の写真。白いタイルの壁に、「トイレに残飯を流さないでください 文学部」という貼り紙がされている。

 

@cesuki
他人の生活(善き人のためのソナタ)