ガンプラを組んだ。ヒャーケンプファーかあっこいい!
ガンプラを組むのはこれで人生三度目である。他のプラモデルはこの前タイムマシンに変形するドラえもんとかいうド級のトンチキ、ドトンチキなドラえもんや、エースコンバットの機体を作ったりと最近組んだりすることが増えてきた。
なぜやおらプラモを組み始めているのか、なぜおじさんは思い立ったように一人でできてネクラな趣味を始めるのか。なぜ外に出て体を動かしたりしないのか。ハァー! うるせえ! オタクはすぐさあ! オタクのくせにホニャホニャしてないんでござるか? 基礎教養でござるみてえな顔しやがってライン飛び越えて話しかけてくるんだよなあ! 指先動かしてるだけマシだろうが! ウォーキングもサイクリングもボルダリングもハイキングも畢竟ネクラなオタクの趣味だろうが! 来る〜、きっと来る〜。それはリングだろうが! 指先を動かすか足を動かすかの違いだろうが! どちらも身体の先端だろうが! 他の先端動かしてやろうか!(ボロン)(唐突な本当に品のない下ネタでおじさん感を無理やりに出すのやめませんか?)(動くんですか?)(動くよ!!!!!!! まだ!!!!)
SE.ニッパーの音.悲鳴.水音
なぜ男の子はガンプラが好きなのか。とよく言われるが俺は好きじゃないんですよ、ガンダム。本当にガンダムを最近まで通って来なかったしなんなら避けてきた。なぜならガンダムが好きな奴らは、よく言われるように大抵ウザくて独りよがりでわかりにくくて作品内のキャラクターが吐いた言葉を文脈に沿わず現実の会話に持ち込んで吐き出すことだけを喜びとして生きているように見えていたからだ。実際そうだし。
とはいえ、オタクたるものガンダムを避けて通ることはできない。なぜならオタクの会話は上で述べたように文脈と定型文でなされるものなので、この辺はギャルや政治家の会話と同じですね。大事なのは内容ではなく共感。内容は共感した物語の中のエッセンスの中にフワッとした雰囲気として共有されますからね。(全方向にケンカを売っておけば無敵っていうルールで戦っておられる?)
20歳当時大学に行かずにカードゲーム屋でバイトしてた俺は店頭のスクランブルギャザーTCG(スパロボのTCGがあったんすよ)のシングルを品出ししつつ本当に見分けがつかなくて困っていた。ウォーハンマーの塗料を売りながら「えっこんな細かいところに塗装すんの……? これ全部? 地獄の責苦を現世で先取りしてんの?」くらいのことを思っていた。そんな矢先店が潰れた。この店はカード屋だったのでホビー系の商品はあまり置いていなかったが、当時の店長が絶対売れる〜! って仕入れたクソデカガンプラが売れ残ってガラスケースの一角を占拠していた。
その名はデンドロビウム。
そう、あのクソデカいやつ。1/144の本当にでかいやつではなく、1/550の普通のガンダムサイズ(それでもでかい)になったやつだと思う。
こんな会話があったと、記憶している。
ちはやくん、売れなかったデンドロビウム安くするから買って行きなよ。カード類は次の店で使えるけど、でかものは持っていくには嵩張るからね。いや俺ガンプラ組まないし要らないです。えっ、ガンプラを組んだことない?? 一度も? まあ厳密にはBB戦士のサザビー組んだことあります、小学生の時に本八幡のスーパー長崎屋のセール品おもちゃの中に入ってたやつ。え、えーっ、信じられない、ガンダム、ガンダム何が好き? あー俺、ガンダム見たことないんですよ。え、え、ええーっ!? なんで、何でえ……? どうして……!? うわあ……いいよ、そのデンドロビウム持っていってお家で組んでみてよ。俺が買ってあげるから。プレゼントする。だからすぐじゃなくていいからガンダムを見てほしい……! 好きになって欲しい……! ええ……じゃあまあ……ありがとうございます……最後のレジ違算ないでーす。今までありがとうございましたー。ほーたーるのひかーりーまどのゆーきー。
店長とは2週間後に秋葉原店で再会した。
厳密に言うとガンダムに完全に触れてない訳ではない。中学生の頃俺が初めて触れたガンダムは小説版の初代ガンダム3冊であった。いやまあそれまで立ち読みしていたコロコロやボンボン、駄菓子屋のカードダスでガンダムのなんたるかは知ってはいたし、鉄人兵団のザンダクロスが"ガンダムカラーの百式"とガンダムやろうどもから揶揄されているのも知っていた。ただ真っ当にガンダムに触れたのはその小説版だった。小説として思ったよりも真面目だなと思ったが登場人物というか主人公があまりにも不道徳で不誠実で傲慢で卑屈で尊大で感情移入どころか共感すら難しくキャラクター物語のとっかかりとして何をフックにすりゃいいのかわからないままのちはや少年は「これが、アニメで、当時メチャクチャセンセーショナルな社会現象になるほど人気なのぉ?」と眉を顰めながらいちおう全部読んだ。ちは母がアニメーターのバイトを1週間した時、「あたしは世界名作劇場の犬の尻尾塗ってたんだけど、他の人たちはみんな奪い取るようにガンダム(と言っていたが時代的にガンダムではないような気がする。みんなの母は何でもファミコンと呼ぶように)の色塗りしてた。あんな緻密なのを塗っても犬の尻尾塗っても一枚いくらで同じなのに」という話をしてくれた記憶が蘇ったので書いたが、あまり関係ないな。関係ないエピソードを挟んで可読性を下げるな。で、「こんなのみんな好きなの?? まあ今後触れなくていいや……」と思ったままちはや少年はそのまま成長していたのであった。つまるところ「ガンダム好きなやつっておかしいんだ」と思って生きてきたのである。まあだいたいおかしいんだけど。(やめなよ)
で、話を戻す。貰ったものだし帰って組んだんですよ。ガンダムと和解すべきだと思っていた時期でもあった。ガンダムは好きでないし、ロボものもそんな好きでもないけどパトレイバーは面白かったしレイアースはかっこいいし、今でも俺はキングスカッシャーと異世界スケベアドベンチャーをしたい。でもね、このプラモ。勧められたのは正直あんまり良くなかった。俺はまずこのデンドロビウムのことをよく知らない。何に出てきたのかもいまだに知らん。でかい上にロボ部分というよりコンテナ部分が多数。ニッパーも使わずハサミや爪切りで作るもんだから仕上がりも悪い。そもそもこのキットは色合いが地味で今のプラモみたく組んだら色がシャキッとしてる訳でもない。組んではみたがなんかちっちぇえガンダムの人形が乗り込んだ箱の蓋がパカパカあくな……だけの、その店長の強い思いはよそにガンダムに対する印象ごとガンプラへの印象も「世の中のオタクはなんでこれを……楽しいと……?」と上がらぬままわけのわからんと名前がつけられた沼に沈んでいったのである。
その後、アニメ全部見てやるぜの時期に俺はガンダムごと嫌いになっていたロボアニメとの和解を真剣に検討した。しかし口半開きで見ようとしたSEEDも見続ける気が起きず序盤でリタイアした。00は全部見てわりと嫌いじゃなかったが全然好きでもなかった。がゆんの男の子はえっちだね〜って思って見てたからあまりロボの記憶がない。がゆんのドえっちな男の子と言えばLOVELESSの話をせねばならーーえっその話今いらない? はい……。エヴァンゲリオンはロボカテゴリではない。そんなこんなでコードギアスとかグレンラガンとかアルドノアゼロとか好きなロボアニメを完走するにつけ、「別に俺、ロボもの嫌いなわけじゃあねえな」と気づく。そんな矢先にアマプラでガンダムオリジンと逆シャアを見て「面白いじゃん」「ザクもドムもかっこいいじゃん」「ランバラルおじさん……だいて……!」「サザビーちょうかっこいいじゃん」「ガンダムってちょうカッコ悪いな」「あと人間は愚か」「何だったんだ、この戦争?」
理解があった。俺はただガンダムの顔が、ツラがずっと気に食わなかっただけなのである。幼少の俺がBBサザビーのプラモを手に取ったのは間違いではなかった。サザビーをかっこいいと思って手に掴んだのである。
つきものが落ちたようにアマプラで閃光のハサウェイを見て清々しい気持ちでえ〜面白いじゃ〜ん好き〜と最後まで見て、最後にクソデカいガンダムがザバー出てきて終わり、ハァ? って声に出てしまった。
オルフェンズのことはスルーして水星の魔女が出てきた。終始安心して見ることができて楽しかった。それというのもガンダムと名のつくものがあまりガンダムらしくない顔しているからである。面影はあるがどちらかというとナントカ警察みたいな名前がついていそうな雰囲気があるものが多い気がした。そのため前述の受け入れられたロボものと同じようなフラットな気持ちで見ることができたように思う。個人的にはもっと後味が悪くて趣味が悪い方が好みだが、これでやっと俺もみんなが見ているガンダムをニコニコしながら薄っぺらな感想をツバをとばし泡をブクブク吹き散らしながら知った口をでけえ声で叩けるのである。お前ずっとYOASOBIの歌詞の話しかしてなかったよ。だって……ガンダムオタクこわいから……。お前こそ結局主人公二人が女だったから見続けられたような百合オタクなんだよ。ギャー! リングってそういうこと? (遠い伏線を貼るな)
ガンダムとの和解に成功した俺はガンプラとの和解を目指さねばならなかった。いや正直そんなつもりはなかった。最近ギター弾くのに忙しいし、ゲームだって結構積んでいるのだ、パフェも食べないといけないし、傘もこんなにたくさんあるし。ずぼらなのは知ってる。
以前に書いたプチ同窓会でガンプラをもらった。部屋に山積みになっていたスケベブックの中からページが張り付いてないものを選りすぐって段ボール一箱送りつけた彼からお返しにもらったのだ。「なんか欲しいのある」「サザビー」「ない」「じゃあケンプファー」「わかった、ミオリネもつけておく」かような会話が成された。関羽とのトレードに甘寧を出し、若干釣り合いのない部分は于禁をつけておくといった塩梅であろうか。
なぜケンプファーか、それはたしかガンダム占いでケンプファーだからである。あとカードゲーム屋だった時にガンダムウオーTCGの「ケンプファー(チェーンマイン装備)」をかっこいいなと思っていたことを朧げに覚えていたからだった。
と言うわけで組んだ。ケンプファー一番乗り!(甘寧)。(ここ追記:今調べたら三国志SDガンダムでマジでケンプファー甘寧なの!?)どうせならちゃんと組むかと思ってニッパーと墨入れペンというやつも買った。これは15年前のガンプラであるが、俺が失望した20年前のガンプラとそう時代は変わらないはずなのに組んでいて楽しさが違う。そもそもものがいい、モデルがいいというのもあるが、俺自身がガンダムと和解したというのが大きいかもしれない。半分組んでみるとキュルキュルポーズを変えられるし楽しい。スミを溝に流し込んでみると思ったよりも楽で、雑でもわりと汚れとして受け入れてくれる素地があって楽しい。これはまあハマるな、というのがわかる。わかりましたよ、店長、俺、ガンプラのことが……!
そして俺の脳内に直接声が届く。
「色は?」
色!? 色塗るの!? 当時のデンドロビウムはマジで味気なかったからあの時頑張って塗るのやってみれればよかったなとは思うけど、もうめんどくさいよ!
「最近はペンとかで気軽にぬれますよ」
「塗料ペンから出して綿棒や筆で塗ればいいよ」
お前は、インターネット! 沼の住人どもめ! お前らの誘いには屈しない! 部屋の大事なものを塗料で汚し、揮発した塗料の匂いでラリってヤスリの粉塵と塗料のエアロゾルで肺とPCをダメにする人生を俺は送らない! プラモは組んでやったが、金輪際塗装には手を出さないからな! こんなん塗料が既存のでは物足りなくなって下地処理とかし始めたり混ぜたりし始めたらキリがねえ! 絶対やらないからな!
ヒャー! 肩の部品メタルのペンで雑に塗るだけなのになんかかあっこいい〜! 質感が出る気がする〜! ちょっとジュドの頭脳っぽさある。ちはやくん! それは全国の小学生が夏休みにすでに経過した場所だよ! ああああ! うるせ〜!!!! わかってんだよ! 走馬灯のハリボテを今作ってんだよ!
雑キック! このバーニアの部分がみかん色なんだけど、元の色が青で、それっぽい色これしかないなって買ってきたのがメタリックオレンジで塗って見たら成金。
ショットガンを塗ってわかったこと。塗料を惜しまない。こうして部分的にメタリックないろにするとそこはかっこいい気がするけど本体のやっぱりしたプラスチックの質感がダサく見えてくるな。余計なことしなきゃ良かったのに。いいか、三感というものがあってな。あなたは、スネ吉にいさん!!
ペンキ塗りたてのおもちゃみたい。うわーん、どうにかしてよ、ドラえも〜ん!(きみたち、ちょっと似てるね)
「ちはやくん! ケンプファーはかっこいいけど、もう古いガンプラだからね。最近のはもっと良くできてるし、いい感じにポーズも取れるよ!」
えっ……
えっ……(俺これ水星で一番くらいに好きな機体なのになんか人気ないらしいので安売りされてたから買いました)