アマプラでしか映像作品を見なくなったので、文化レベルが落ちたなあと感じていたのだが、最近さらに見なくなったのでやべえと思いアニメそっちのけで映画を見ることにした。
レザボア・ドッグスのリマスターが出ていたのでこれを観ることに。おっさんはみんな見たことあるだろうし、若い人もおっさんがなんか映画の話とかかっこいい悪役とかの話をする時にうわごとのようにクウェンティンタランティーノという長ったらしい名前とこの作品の名前をセットで聞かされてうんざりしていることだろう。
20代の頃、悪い友人の家でバイト帰りに家に帰らないまま、ちっせえテレビでこれを観たはずだ。構図、話の構成、キャラクターの付け方、見せ方、台詞回し、観客の視点を誘導させるやり口、カタルシス、動静の塩梅、おそらく「安く作られた」映画であるはずなのにそこにある体験は格別のもので一挙手一投足に学びがあり若きみなみちはやは、当時観た人々がそうであったように感動し感銘を受けたのである。
しかし、改めて観てみると「そんなにいうほどこの作品は素晴らしかったか?」と思ってしまった。上であげた長所が薄れることは特にないのだが、デカいディスプレイでサブスクでひとやまいくらのなかで観やすいデジタルリマスター版で滲まない発色で字幕付きで片手間にネットサーフィンをしながら感性の擦り切れて明確に人間のつまらなくなったおっさんが観ているからと言われればそりゃそうなのだが、思ったほど感動の再演がなくてさみしかった。まあでも観たことないなら観ておくといいと思いますよマジで。
そのあと、ブレア・ウィッチ・プロジェクトを観た。当時はその明らかに作り物の話なのに、本当にあった話かのように売ろうとしてたら本当にあった話かのようにしようとするうすら寒い風潮に乗ろうとしてる奴らが気色悪すぎて見ないままでいたのである。最近まで自覚してなかったんだが、ホラーというものがわりと好きで、なのにホラーとして出されるコンテンツの大半は嫌いなのである。ホラーはその全てが作り物であるので、まるで本当のことかのように作品外の者が本当にあったことなんだって! と言ってくるのは心底興醒めであるからに他ならない。もちろん作品内のキャラクターがそう言ってくれるのは構わない。なんなら作品内では「この映像はフィクションである」と何度も入れてくれるくらいの方が、むしろ疑わしくなって怖さが増す。安全にうすら寒い思いをしたいのである。うすら寒い思いというのはTwitterとかで正義づらして真面目な外見を中空に投げつけて世の中を悲観してるアカウントをいくつかフォローしていればいつでも摂取できるので間に合っておるのだ。もっと、修学旅行で田舎の宿泊施設に泊まり、薄暗いトイレに行ったら便器の中から声がして目が合った。みたいなことをキャアキャア言い合う女学生たちと後日その宿泊施設で地方の巡査が盗撮で捕まるとかそういうインスタントでスナックな薄ら寒さを摂取したいのである。話が盛大に火星に行ってしまった。
ブレア・ウィッチ・プロジェクトも安い映画の構図と構成でメチャクチャ怖くなるやつである。今見ても面白いかというとまあそこそこ怖くはある。極限状態での人の追い詰められ具合とかの描写や反応がリアル。また「山の中に入ってこういう映画を撮るサブカル野郎どもがどうなっても安心して見てられるな」という安全な場所から見てられる精神状態が提供されているのも良い。ただどうしてもこれが面白いのは、インターネットのろくに普及してない当時アメリカの田舎にいる純朴でこれがマジのフィルムだと半信半疑になる者であろうなと思う、信じるものは恐怖を楽しめるのだ。あとはやはり「森の中に住む魔女」という概念に対して、日本人の文化素養ではどうしても読み物の中に出てくるヨーロッパの暗い森や魔女のファンシーで朧げなイメージしか湧かない。ヨーロッパに脈々とある森のイメージがそのままアメリカの広大な土地で、家と家の間に、集落を取り囲むように外部と隔絶させている、地図上はそんなに大きくないはずなのに踏み入れるとすぐに前後不覚になりうる日常と隣接しすぐそばにある異界。我々はそれを知ることはできないんだな。と思ったりした。洋画をたまにみると思いだす、この文化というものが、概念というものが、常識とされているものがいかに違うのか、違うらしいのかを知らしめられる。そこそこに怖く安心する。映画のオチはなんかこう、弱い。
あと前々から見たかった映画.これは新しいやつ。ヴィーガンズ・ハムを観た。めちゃくちゃに好き。開始5分でこれフランス映画だろと思ったらフランス映画だった。開始1分でフランス語喋ってたやろがい。……あっもしかして、映画を吹き替えでご覧になる派の方ですか……? えっ……洋画を吹き替えで観ていいのはトランスフォーマーだけなんですよ?(諸説あります)
この映画好きっていうと人間性を疑われるから人におすすめできない感じの映画なんですよね。本当にひどい。何説明しても不謹慎になる。繁盛してない街の肉屋の夫婦が主人公なんですけど、店を襲ってきた過激派覆面ヴィーガンを一人捕まえて顔見て逃げられ、その後ひょんなことで轢き殺してしまい、「あいつ、あの日店を襲ったヴィーガンだ!」でひとまず妻の提案で店で解体しておくんですけど、この時点で情報量が多いんですが、次の日遅く起きた店の主人が店に出てみると、"昨日ハムにしたはずのヴィーガンが妻によってなにもしらない客に売られていて""ちょうど起きてきたところに客が「さっきのハム、なんの肉? 最高に美味しかった"というところで物語が始まるのであります。店主はそれに「イラク豚です」と答える。本当にひどい。その後の展開は想像通りなんですけど本当にひどいのでぜひ見て欲しい。2024年で一番ゲラゲラ笑った。ひどいとしか言ってない。
ひどい映画といえば、これも昨年末にAmazonで見たので書いたこう。ジャッカスフォーエヴァーってやつ。MTVっていうアメリカの音楽系放送局で、いや日本にもあったなMTV……本家はにほんのそれみたくお上品ではないのでその中にジャッカスという、冒頭に「注意! この番組に出てくるのはスタントマンかただのバカです真似すんなよ!」みたいな注意書きが出てくる番組。日本で芸人を危ない目に合わせて楽しむ低俗な番組に近いのだが、こちらの方が気合が入っているのとひたすらに眉を顰めずには見られないくらい品がなく過激。プロレスラーがビンタしにくるとかではなく、プロボクサーが股間をブチ抜きにくるし、熱湯風呂に突き落とされるのではなく汚水処理場の沈殿層に突き落とされるという感じの差。本当にひたすら汚いし痛い。
そんな番組がまあ20年前くらい?にやってて、何度か映画でもやってたはずなんだけど、最近登場人物そのままにまた映画を前述のタイトル出ててもちろん日本では公開してないんだけど、Amazonで見れるとは思わなかったので見たってわけ。ちんちんに女王蜂をくくりつけて働きバチを群がらせ、股間に蜂球を作らせるとかバカがバカなことを相変わらずやるんだけど、20年前はバカな若者たちの凶行だったのがバカなおじさんたちの凶行になっているのでわりと始終ハラハラしながら見ていた。ちんちんは無修正です。