「ごめんね。ごめんね。痛いの治してあげられなくてごめんね。土曜にはお仕事休みだから。最期に一緒に桜を見に行こう」
泣き喚きながらそう言ったら、君はピタッと泣くのを止めてしまった。私は私の言葉が、正しく君に伝わってしまったのを、私が君から弱音を吐く機会を奪ってしまったことを、今でもずっと、ずっと、後悔している。
(胸が痛くなってきたので、休み休み書いています。私のためのプラットフォームだから、許してね)(これでも、4年目の命日は、君が倒れた2月15日からの1ヶ月間は、今回は、かなり、穏やかに過ごすことができたんだよ)
これは密かに思っていることなのですが、犬は(もしかしたら他の動物も)お別れの1週間前付近から、自分の死期を悟っているんじゃないかなと。勘付いて……否、そこそこ確信している。
先代犬も、じっと皆が帰宅するまでしゃんと座って、目を見てさよならの挨拶を丁寧に一晩かけてしてくれた。当時は家族全員が悟って、中学生の私は何をしてあげられるかわからなくて、先代犬を目の前にしながら、ただひたすら彼女をスケッチした。
話が逸れちゃうから深掘りしない。けど、私は死神さんというか、お迎えに来ている「何か」も実は2〜3日前から魂の付近にいらっしゃるんじゃないかなとほんのり思っている。そして有情はある。(何言ってるんだこいつは百も承知ですけれどね、まだ連れて行かないでくださいってお願いを聞き入れてくれたの。2度目だったから、体感として感じていること。そして2回とも、私に与えられた猶予期間は2日間だった。)
もちろん、すべて妄想だとか、そういう類も含めて異論は認める。
話を少しだけ戻すと。君がお別れを告げていると気が付いたのは、私の帰りをひたすら待つようになったから(笑)
出張続き(懺悔の一つ)で遅い私を、玄関前で待っていると母が細かく報告してくれた。
続いて予感として気が付いたことは、やたらと父親を見つめていたから。それもなんてことない瞬間に、不安そうに、切なそうにじっと見つめていた。一方的で優しくて悲しい眼差し。先代犬と同じ視線だって気が付いた。
でも、父は普段からいわゆる"そういうこと"の話題が苦手だったので、私は直球で伝えることを躊躇った。震えながら見てるよ、って伝えるのが精一杯だった。(弟だけには、多分お別れが近いということを伝えた。こういう時の姉の予感は当たるんだって、弟は渋い顔しながら信じてくれた)
君は、私の現実逃避の願望を、慟哭を受けて、ピタッと弱音を吐くのを止めて、すごく優しい声で私に言った。(確かに、私には言葉が伝わった。思い込みって思われてもいい。読書や思案をするのと同じ感覚で、心臓の真ん中辺りにきゅっと締め付けを伴いながら、確かに、君は私に言葉として、伝えてくれた)
「土曜までは、難しいかな」
(そうか、無理なんだ)(なんで聞こえちゃうんだろう)(でも、これ、本当のことだとわかってしまう)
混乱しながら、泣きながら、私はもう一度伝えるのが精一杯だった。
「いいよ、いいよ。ごめんね。そしたら、今、ここで、沢山お話しよう。君と初めて会った子犬の時からの思い出話をしよう」
ギュッと抱きしめて伝えたら、君は笑顔になってくれた。そしてなんと、自撮りもしてくれた。(さっきまで苦しい顔をしていたのに。笑顔に気が付いた私の顔は、ぐちゃぐちゃのままで笑えなかった)(後悔の念に流されても、浮上して来れるのはこの写真のおかげ。この笑顔が最期が、君の犬生の、私との関係の答えだって信じてる)
沢山話した。深夜で、母がお風呂に入っている間。父が静かに眠ったフリをしている傍らで、うつらうつらしながら、沢山話した。
出会った日のこと、子犬時代のこと、思春期の頃のこと、君との思い出を沢山。
たかが犬って思われても、こんなに入れ込んでいてって思われても、絶対に揺るがない位に君との思い出と、もらった愛と、思い過ごしではないとはっきりわかる感覚は、ずっとずっと、残っている。
確かに、君と出会って過ごせた13年と4ヶ月は幸せだった。また私は、私の人生を再び歩みたいと思わせてくれるほど、屈指の存在。そんな存在と出会えたこと、思い出があること、愛もお別れも知っていることは、最大の護符にもなっている。
4年も経つことに愕然としたり、4年の間によくここまで来れたなって誇らしくなったり。まだまだ情緒は落ち着かない。
現実の実態だって、停滞を感じて地団駄を踏んでしまうこともある。けれど、全ての道のりは、行く先にいる君に沢山の愛の花束をお土産にめかしこむための軌跡だってわかってるから。
沢山の愛と感謝と謝罪を込めて。君からもらったものを、今度は私が大切な人たちに巡らせていく。世界はそうやって回ってきたことを、私は知ることができたから大丈夫。
虹の橋の向こう側に居る君に、桜が届きますようにと祈りを込めて。今年もお供えは桜にしたよ。
これからも無情なまでに日々は続く。その中で確かに作りたい日々がある。そこに向かって行くまでの道のりさえ、愛せるように。これからも見守って、応援してください。なんて。
そんなことしてなくても、君が幸せで、君の魂がピカピカに輝いて、誉を貰えているなら、満足だよ。でも意志の弱い私を、たまに監視してね。いつもありがとう。
追伸:父には当時、嫌味を言われてしまったけども、リビングで聞いた「音楽はいつまでも」を聴いています。リメンバー・ミーは私の心の憂いを晴らしてくれます。当時の君が、少しでも心身休まるひとときになれていたなら、何より。ミゲルも言っていたけれど、きっと君は私の魂のガイドなんだと思う。びっぐらぶ。来年の今日は有給にして、お墓参りしたいと思ってます。ずっと、大好き。