本を読むには体力がいる、だけでなくて、脳のコンディションも大事なことを、数年前まで私は知らなかった。いつだって、図書館や本屋さんに行けば出会えるたくさんの本たちを、頼れるものだと思っていた。
でも数年前に、鬱状態で脳の処理能力が落ちてしまった、読んでも読んでも目が滑る、脳に文字が入ってこなくなってしまった。Twitterの短文なら読める、ウェブ上のテキストなら読める、でも、読書へのハードルが高い日々が、幾年か続いた。脳内多動の速度も落ちる、あふれるほどにあった言葉が出てこなくなると、吸収する言葉の量も減っていった。
本が読めなくても、物語に出会ったり、概念に出会うことはできるけれど、やはり選択肢と内容量が大きく違う、なにより質感が違う。私にとっては本が一番しっくりくる手段なのだなと、ここのところ再び本を手に取れるようになって痛感すること。体力も意図して増やしてきたのも大きいのだろう。集中力と体力は連動する。
という話を、毎週の訪問看護の中でしていたら、「今後の目標に入れましょう!」という話になった。二次障害の再発を防ぐ、という目標をより具体的に私の願う暮らしのイメージもあわせて入れていくとどうなるのか、という話をここのところしていたので、それは確かに、と納得した。「本を読める日々が続くこと」が、いまの私の目標。
週に一度の精神科訪問看護は、今の家に引っ越してきてからもう半年以上、頼っている。環境の変化に弱く、自分のコンディションのモニタリングが苦手な脳なので、いままではスマートウォッチやTwitterのセルフログに頼っていたけれど、第三者の専門家というバックアップが付いた感じで心強い。在宅勤務が続き、家族以外の人と会う頻度がさがっており、リハビリ的な使い方にもなっている。生身の人間と会うと疲れるのだけど、すこしずつ慣れるものでもあるので負荷強度をあげていく、模索。
体力をつけてきた段階と似ている。散歩、ジョギング、この先にやりたいのはハイキング。人間の密度がすくない自然の中で、身体を動かしたい欲がある。そのためには遠くに行ける体力が必要で、まだそこには足らない。
足らないなりに体力がついてきてうれしく思えることは他にもあって、ここのところコンスタントに美術館やギャラリーの展示に行くことができていること。通院の帰りや平日の退勤後、土日と、人混みは苦手なので空いていそうな時間や場所を狙っていく、ができていて、とてもうれしい。
美術館は、どんな街中にあっても、そこだけ静かな空気を纏っていて、落ち着く。私にとってのだいじな、カームダウンの場所であり、読書と同じく作者と一対一で対峙する時間。
大きな美術館や郊外にある美術館は、たどり着くまでや展示をまわるのに案外に体力が必要であり、コロナ罹患後に体力が落ちていた私にはハードルがかなり高くなっていた。でも今は、みたい展示があるからとはしごをしたりもしたりと、罹患前の体力にまではもどってきたようで、ほっとしている。しばらくは私の体力のミニマムの目安として、「美術館に行けること」も日々の目標に置いておきたい。
人が多いところが苦手、人混みが嫌い、それでも東京に住み暮らし続けるのだろうなと思うのは、美術館へのアクセスのよさがあるし、それが私が東京にあこがれていた理由のひとつだったな、を思い出している。でも美術館に行くことで都市の暮らしに疑問を抱く作家や作品に出会う。それは本を読んでいてもそう。働き暮らすだけで精一杯になりがちな日々だけど、ふと足を止めて考え、見直す時間がやっぱりないと、無理をして駆け抜けてしまうから。そうしたバランスをとるために、美術館に行き、本を読むことが続けられる、持続可能な暮らしが、今の目標。
私は私の持続可能性を担保できるようになった先で、ようやくできることについて、考えはじめている。4月はその準備をしようと思う。
自分向けリンク集
発端話題はここからだったのを思い出しながら書いていた
今月見に行った展示たち
千葉県誕生150周年記念・企画展「アーツ・アンド・クラフツとデザイン ウイリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまで」@千葉県立美術館
ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか? ――国立西洋美術館65年目の自問|現代美術家たちへの問いかけ@国立西洋美術館
ほか、旅先でもギャラリー展示をみたりしたの、たのしかった。
自分向けmemo
麻布台ヒルズギャラリーはHPには記載ないけれどローチケの案内には「障害者手帳の提示で本人と介護者一名まで通常料金の半額・予約の必要なし」の記載があったよ。次の展示でHP側の記載もされること願いつつ(されてなかったら問い合わせ・リクエストしよう)、時間予約指定があると体調によってしんどくていけない可能性がある/ADHDの時間間隔のずれでミスしそうで怖くって、なので「予約なし」の文字にかなりほっとしたのだった。。。他のチケットサイトをみると記載されていることもあるという知見も増えたのでよかった、よくないけど、すこしずつの改善や変化を願う、一気には変わらない。