火星物語の話をしたので、火星物語と人生の関わりのことを記しておこうと思う。
なお、アイスショー→スケート→ローラーブレード→モンスターファーム〜円盤石の秘密〜→横山智佐→火星物語 の流れであった。
小学生時代、姉ともども仲良くさせていただいていた幼馴染の姉妹のママ上殿がゲームをやっておられた。火星物語であった。1998年にPSのソフトとして発売された最先端のゲームである。辺境の村で生まれた名も無き少年が旅立ち、やがて世界の危機に立ち向かっていくという王道ストーリーのRPGだ。立体的なポリゴンで表現されたかわいらしい人形のようなキャラクターが美しい街並みを走り回る様子に、子どもたちの視線は釘付けになった。そしてなによりこのゲーム、イベントシーンではキャラクターたちがアニメのように喋るのである!!!!! 衝撃だった。まさかアニメ以外でキャラクターが喋るとは。当時やっていたゲームといえば、ゲームボーイやスーパーファミコンのマリオやドンキー、がんばれゴエモン、ぎりぎりポケモン、ミッキー等ディズニー系のアクションやパズルゲーム程度である。声がついているゲームなんてまるで認識していなかったのだ。
そしてまたアニメについても、当時与えられていたのはディズニーやドラえもん、手塚治虫、鳥山明、ぼのぼのなど、大衆受けするようなものばかりである。いわゆるオタクコンテンツというか、サブカル系の作品に触れたのはこれが初めてだった。
ドハマりした。
気がつくと我々姉妹の元にも火星物語の金ピカソフトが存在していた。1時間に一度くらいしかセーブできないそのゲームを、夕飯を作ってくれる祖母から向けられる白い目に耐えながらプレイしていった。
さて、この時代のゲームの楽しみ方といえば、実際のプレイ時間よりも攻略本を読んでいる時間の方が長いのがお決まりである。
我々は早速チャリンコを走らせ近所の古本屋の攻略本コーナーを漁りまくった。Amazonなんて便利なものはない。なんならインターネットも(小学生の手の届く範囲には)なかった。小中学生がゲームをクリアするために必要不可欠な攻略本、それを手に入れられる場所は古本屋くらいしかなかったのだ。
果たして攻略本は見つかった。白い背景にメインキャラクター達(安定のセイラ&タローボー不在)のイラストが描かれたバイブルである。大・丈・夫!ファミ通の攻略本だよ!の帯がまぶしい。ダンジョンマップ(ところどころ違う)や敵キャラのステータスのほか、各章のあらすじや幕間漫才のまとめ、キャラデザの水玉先生のイラストコラムなどのうれしいコンテンツは盛りだくさん、最終ダンジョン(セーブポイントなし、2時間くらいかかる)のマップは君の目で確かめてくれ!🫵の最高仕様だった。
おおよろこびで読み耽った姉妹であったが、一方で古本屋漁りも続けていた。我々にとってゲームとは、「4コママンガ劇場が出ている可能性がある」ものだったのである。マリオもカービィもモンスターファームもそうだったので。当然火星物語の4コママンガ劇場は出ていなかったが、その代わりに我々は、もう一冊の攻略本に出会うこととなった。
オレンジ色の表紙に、火星物語のロゴだけが描かれた本。それは攻略本というには不思議な本だった。キャラクターのイラストがたくさん載っているのは嬉しいが、肝心のゲームのストーリーやダンジョンの情報はほとんどない。その代わりに載っているのは、なんか難しそうな対談や、全然知らないヒゲ&サングラスのおじさん(千葉繁氏)とキャラのぬいぐるみとの写真集――? なんなんだ、この「オフィシャルスターターブック」というやつは……?
設定資料集との出会いだった。しかも多分ゲーム発売前に出たやつだな。サブカルに全く触れたことのない小学生には若干早かった。1年ほどかけて内容を解読していくと、どうやらこの火星物語というゲームには、ラジオドラマ版というものがあるらしい、ということがわかってきた。そもそも火星物語というのは、深夜に放送されているラジオのコーナーのひとつとして配信されていたコンテンツで、PSゲームの火星物語はそのなかの一部の物語をもとに作られたメディアミックス作品だったのだ。
ゲーム火星物語の発売からは1年以上の時が流れていたが、我々の愛する火星物語の新しいお話が存在するなら聴いてみたい……そんな思いから、我々はなんとか深夜ラジオを聴くための環境を構築していった。
スマホどころか携帯電話もない時代である。なんならMDもなかった。おもちゃとして与えられていたラジカセと、それこそおもちゃのミニラジオを手に、我々は目覚まし時計をめちゃめちゃ小さい音でセットし、深夜1時にこっそり目を覚まして二段ベッドの上と下でラジオの音に耳を澄ました。
文化放送、土曜深夜25時放送、広井王子のマルチ天国。真夜中の真っ暗な子ども部屋に届くノイズ混じりの電波の中で、我々の大好きなキャラクター達と同じ声の大人達が、聴いたことのない楽しげな声で語り合っていた。声優界隈との出会いであった。
お目当ての火星物語コーナーについては、ゲームが1・2・3シーズンあたりを題材にしている(スターターブック発売時点では8をやっていた)のに対し、シーズン9が進行していた。ゲームとは全く違う時代の話であり、純粋で真面目でちょっと気弱な第二王子のスピリト少年(CV豊口めぐみ氏)と、魔性の第一王子サタナエル少年(CV横山智佐氏)のあやしい関係を描く、ちょっとえっちなラジオドラマだった。BLとの出会いである。今思うと、女性声優少年同士のちょっとえっちなBLドラマってめちゃめちゃありがてえな……サタナエル、気だるげな色気がすごかった記憶がある。すきです。
初めて触れた深夜ラジオの世界に我々は大コーフンであったが、ごく一般的な生活をしていた小学生が毎週深夜ラジオを聴けるはずもなく……聴いたり聴けなかったり(私はほぼ聴いていなかった)しているうちに、火星物語は9から10へ、10の終わりとともに千葉繁氏が卒業、マルチ天国は山口勝平氏を迎えてマルチ天丼となり、火星物語シリーズは終了となった。
以上が火星物語と私の関わりである。
その後も後継コーナーのドラゴンテイルにハガキ送ってみたりとか(採用してもらえた!感謝……🙏)、音源化してる1・2・3のCD手に入れて聴いたり、小説版・漫画版も読んだりといろんな楽しみ方をしたし、そもそも火星物語のどういうところにハマったのか(デッカスパナで戦う無口おとなしい流され系主人公って最高)(ボクっ子王女はこの世の宝)(人生最初で最後の「推しが死んだ作品」※好きなキャラが死んでしまうような作品を推しという言葉を使うほど好きになることは今後一切ないため)などの話もあるのだが、それはそれで別の話だなと思うので気が向いた時に記録しようと思います。向くかな?わからん。
多少裏取りしようと思って調べたところ、あの頃の深夜ラジオのことって記録がほとんどなくて……(Wikipedia編集者さんありがとう🙏) 感情はともかく、こういうコンテンツのあり方(?)に関する記憶というのは、覚えてるうちに記録しといた方がいいのかもなと思って書きました。
余談だが、私よりよっぽどハマっていた姉からは、半年ほど前に「見たことない火星グッズ見つけた✌️」と連絡がきた。出てたのか、そんなもん。今でも時折「火星」の話をする。我々はまだ天国行きの列車に乗り続けているのだ。