天官賜福 英語版 8巻132章 メモ

謝憐は玉飾りを仕舞って声のする方へ。何人かの神官が「南陽将軍はどうしたんだ?」と集まっている。

「捕まえたぞ!」と風信が声高らかに言い、黒衣を来た人物を引きずります。それはなんと、霊文!霊文、生きてたんだ〜!あと、錦衣仙ってどうなったっけ?もう記憶が曖昧……。謝憐、脱げたんだっけ。

と思っていたら、ちゃんと説明があった。呪枷が外れたおかげで謝憐の霊力は君吾と同じくらい強くなってたので錦衣仙も脱げて保管してたんだって。そしてそれを再び盗みに来た霊文なのだった。

でも、盗みに来たっていう表現もおかしいかもしれない。なぜなら、錦衣仙はもともと彼女に従属しているのだし。

霊文は不倒翁になっていましたが事件のあと、自然と術は解かれて行方不明に。謝憐は錦衣仙を取り戻しにくるだろうと、鬼市からそれを引き取って太蒼山に置いていたのです。

裴茗は霊文の肩をつかみ、「とうとうやってきたな!さあ、罪を償うときだ」といって巻物を積んでいきそれは人の高さほどになり椅子も机も震える。

「何を企んでいるんですか?」「これを処理するんだ」

巻物を叩いて裴茗はいう。神官たちは未処理の巻物をどんどん運んでいき、霊文の前にそれは積み重なって山となって立ちはだかるのであった…。

「ずっと君を待っていたんだぞ。さあ、やってくれ」「これも」「欠陥のあるところをうめといてください」「早く早く」とせかされる霊文。再び彼女の戦いが始まる。

天界、バカすぎない!?文神を…もっと文神を!

霊文の目の周りには隈が再び現れ、彼女の働きぶりに満足した神官たちは喜ぶ喜ぶ。「傑殿は本当にすばらしい。これですべて解決だ!」と裴茗が言うと「霊文卿に感謝を!」と口々に言う。現金なものだ…。飛昇しても事務処理が仕事になるなんてつらすぎるよ…!

謝憐は騒ぎのさなか、抜け出して蒸しまんじゅうを食べていたのですが、食べ終わると手をきれいにしてから霊文を救いにかかります。「彼女に休憩を!」と言うと、今までは誰も彼の言葉なんか聞かなかったのにみんな「殿下の言うとおりだ」と言って霊文を解放する。

このあたり、魔道祖師の最後のところを思い出しますね。夷陵老祖をボロカスに言ってたひとたちが斂芳尊のことをボロカスに言う。結局何も見てないんだ。

皆が出て行ったあと、霊文は額を手で押さえる。かわいそう。

「おめでとうございます、殿下。あなたの霊力は戻ったのですね。すばらしい戦略です。あなたの命令に従う鬼たちも信者に加えたのですから」「彼らは信者じゃないよ。私の友人たちだ。ちょっと助けてって言ったんだよ」

霊文は理解したというように頷きます。少し間を置いて尋ねる謝憐。「あなたに聞きたいことがある」「どうぞ」「三郎……花城主のことだが、彼は錦衣仙を着たけど効果がなかった。なぜか、わかるかい?」「そのことですか。私は殿下はもうご存じかと」「話してほしい」

霊文は居住まいを正して話し始めます。「殿下は錦衣仙の伝説をご存じですね」「聞いたことがある。あなたが創ったと」「そうとも言えます。私は衣に集まった恨みが怪物になるとは想像もしていませんでした。でも、私は須黎国の崩壊を早めるために白錦を殺した。それは間違いではありません」

謝憐は霊文の話を聞き続けます。

「衣は人界のあらゆる場所でたくさんの人々の手に渡りました。多くの人がこれを殺人や危害を加えるため、欺くために使った。そうすることで人々は理屈の上では恨みを晴らせるかもしれませんが、白錦はそういう人間ではありません。そういった人々に使われることが好きではなかった。彼らを憎んでいました。しかし、彼と同じような受けとる人と特別な類いの贈る人に出会ったとき、彼の憤りはかき立てられることはなかった。彼らは白錦を喜ばせたのです」

「そして、その特別な贈る人と受けとる人はどう違うんだい?」

「あなたは錦衣仙を血雨探花に渡しました。しかし、そこには一片たりともあなたの心の中に危害を加える気持ちがなかった。そしてあなたは彼を心から信じていた。血雨探花も同じだったでしょう。しかし、白錦が彼に共感したのは、何のためらいもなく、彼があなたに何を望んでも……彼が錦衣仙を着ていても着ていなくても、それを全て受け入れようとしていたから。その中には死も含まれていました」

錦衣仙でイチャイチャしていたところにそんな真実があったとは…。縁結びっていうか、真実の愛的なことがわかるってこと…?

「だから、あのときあなたの隣にいた少年が血雨探花だとわかったんですよ。お二人のことはよく知りませんが、この条件に合う人は他にはいないと思いました」「なぜ?」「殿下、あなたの首にはなにがかけられていますか」

謝憐に首にはいつかのあの日、花城が残していったものがある。

「以前にも似たような装身具を見たことがあります。稀な鬼の中には、自分の骨灰を恋人に渡す者もいるのです」

すでに謝憐はこの透き通った金剛石の指輪が何であるか、想像していたけれど、霊文の言葉を聞いてきつく握りしめます。

「そのようなものは実に稀で貴重なものです。しかし、それはあまりにも美しい振る舞いであるがゆえに、しばしば悲劇に終わります。だから、私の心に強い印象が残ったのでしょう」

「しばしば悲劇に終わるって、どういう意味なんだい?」

「深く愛するということは理性を失わせます。自分の命と結びついたものを誰かに与えることは、多くの悲劇的な、あるいは恐ろしい結果をもたらす可能性があるでしょう。純粋な心は踏みにじられるようにできています。骨灰で創られたものは、あるものは侵入者に盗まれ、あるものは受けとった人に粉々にされた。基本的にその物語の結末はよくありません。でも、殿下は違うようです。その骨灰は傷一つない」

長い沈黙の後、謝憐は尋ねます。「あなたは、彼と同じようなと言い、彼に共感したと言った。白錦将軍も同じだったのかな?」

霊文は明るく微笑みます。「他にどうやって彼を欺くことができるんです?」「でも、本当に騙していたわけではないんだろう?私が意図的にこの言葉を広めていることを知っていたはずなのに、それでもあなたは餌に食いついた」「まあ。よい防御法器だからですよ」「もしただの法器だと考えていたら、あんな危険を冒して盗まないだろう。失敗しても、銅炉山につれていった」

「銅炉山につれて行く以外に何があったと?」霊文はしれっと言う。「もうバレていたでしょう?殿下が私を現行犯逮捕したではないですか」

謝憐はなおも言いつのります。霊文が錦衣仙とともに銅炉山に行ったのは、彼を絶にして、白錦の感覚を取り戻したかったからではないかと。しかし、霊文は、「私は冷血な人間ですよ。誰も愛さない。どうしてそのようなことをしなければならないんです?」と否定する。「そうなのかな」「そういうことにしておいてください」

霊文、好きだ…。いろいろあったけど最初からいるから…。君吾に与していたとはいえ、彼女には彼女の思惑があり心から忠誠を誓っていたわけではなく、ビジネスライクな関係だったんでしょうね。言わないだけで錦衣仙が一番好きなんじゃん!キルラキルだったのか…。しゃべれたらいいのにね。霊文の本当の望みは白錦と話すことだと思う。絶にしようと試みたのだって、絶になれば力が強くなって感覚を取り戻す=話せる可能性が高い。でも私は…衣のままも全然アリですよ!

太蒼山の朽ち果てた太子殿をきれいにして、そこに簡素な小屋を建てた謝憐。数日が過ぎ、慕情が若邪を修復して渡してくれます。引っ張ると、若邪はふわふわなびいて、まるで新しく生まれ変わった体を見せびらかすよう。よかった!

「そんなに動いちゃ、からまるよ。それか、また破れちゃうぞ」と謝憐。

慕情は縫い目も見えないくらい完璧に縫製してくれている。褒めちぎる謝憐だったがそんなことで褒められても嬉しくないと慕情。「この一回っきりですからね。次はないですからね」と言う。君ってやつは…。本当に…。

慕情は太蒼山を出て自分の玄真殿に戻ると言います。霊文のおかげで様々な書類が集まり、インフラが復旧されて、多くの神官たちは仙京を再建することにしました。そして、続々と観が建てられて、みな太蒼山を後にしているのです。

一緒に新しい仙京へ行こうと慕情は誘いますが、「待っている人がいるから」と断る謝憐。

うう……胸が苦しい……。

「新しい仙京の上天庭でも待てますよ」と言う慕情。君ってやつはほんとうにロマンのかけらもないしデリカシーもないし、人の気持ちがわからないやつだな!謝憐を心配してのことだとは思うんだけどさー!

「彼が最初に戻るのはここだと思う。だから、到着した瞬間にいたいんだ。もしそうでなければ、鬼市の千灯観だと思うけど、ここからそう遠くはない。新しい仙京にいるより、ここの方が都合がいい」

慕情は複雑な表情をしつつも黙るしかない。

「本当に、奴が戻ってくると信じてるんですか?」

「もちろん」

絶対的確信を持って、謝憐は答えるのだった。

それでも、待つ時間というのはつらいものです。新しい仙京に神官たちが移った後、太蒼山はひっそりと静まりかえる。

ここには楓の木がたくさんあり多くは燃えてしまったのですが、千年近くたって復活していました。謝憐が見てきた楓の木とは違うものであっても、風景は同じです。

楓の木の間を散策し、抱擁されているように感じる。800年、ほぼ一人で過ごしてきました。彼はそれに慣れていました。時折、信者の願いを叶えるために降りてがらくたを集め、野菜を育てて料理をしたりして過ごす。

前はなんでもないことだったのに、今はとても難しい。苦い果物を食べ続ければいつかはそれに慣れる。しかし、ひとたび甘い果物を口にすればもう戻れません。

かつては誰かが彼を探しに来て話したり助けてくれないかと密かに願ったこともありました。しかし今はそんな考えはまったく浮かんでこない。戸を叩く音がすれば飛んでいって、幸せに胸をいっぱいにして願いを込めて開けるけれど、いつもそこにいるのは思い描いた人ではない。風信のこともあれば慕情のこともあり、師青玄のこともあった。鬼市から来た鬼たちのこともありました。みなを歓迎しましたが、誰も彼が待っていたひとではなかった。

もうね、ここの待ち続ける描写が淡々と描かれるんですけど、それが本当にいじらしくて、涙が出てくる。一月経ち二月経ち、その間に花が咲き、半年後にはその花も枯れる。

待てないはずがないのです。花城は800年待ち続けた。謝憐が800年待ったって構わないのです。千年でも1万年でも彼は待つ。

まだたったの一年です。

ある日、謝憐はがらくたを集めに行き、最近手に入れた牛と荷車で小屋まで運ぼうとしていました。道の半分まできて、楓の森を通り抜けます。ふと空を見上げると、夜空に長明灯が煌めいている。

「そうか、今日は上元か」

きっと今頃、新しい仙京でもランタンバトルが行われているのです。そして、花城と初めて出会ったのも上元だったことを思い出します。あの都市、小さな子どもが市壁から落ちそうになっていた。十七歳の仙楽太子は落ちる人影を見て考えるより先に跳んだ。

この神武大通りでの上元祭天遊、畏敬の念を抱かせるような最初の印象が、何世紀にもわたって恋い焦がれるきっかけとなった。

昔を思い出して謝憐の表情に笑みがこぼれます。今となっては花城だけが恋い焦がれているのではない。

ギシギシいう荷車とともに上を目指し、その先に灯りがついているのに気づきます。

もう一度見て、目を見開きます。先にあるのは、長明灯の灯りです。百万もの魚が海の中を泳ぐように、長明灯が山の頂上から浮かんでいる。闇夜の中で煌々と光り輝いている。壮大で美しい夢が彼の道を照らしている。

この光景を見たことがあった。彼は再び目にしている。息が切れ、心臓が止まりそうになる。小屋が見えてきて、そこに誰かがいる。

紅い衣を着た人が小屋の前にたたずんでいる。ほっそりと背が高い彼は腰に湾刀を差している。彼は謝憐に背を向けていて、最後の長明灯を空に上げているところだった。

荷車の上で、謝憐はまだ夢を見ているのかと疑う。

夢じゃない、夢じゃないよ…。

荷車を進めると、彼が振り向く。謝憐の視界の中で、彼の姿がはっきりと見えてくる。

三千の長明灯が浮かび上がる空を背にして、彼がそこにいる。

謝憐は彼に向かう。彼も近づいてくる。お互い、一歩ごとに早くなって、走る。前に走って、謝憐は涙を流す。

「私は信じる」と心の中で誓う謝憐。

彼は何度も彼のために死に、何度も蘇った。前回は800年もかかってしまった。今は、抱き合うのにほんの一瞬しかかからなかった。

泣いても笑っても次で最後!133章に続く。

@checaldooggi
書くことを続けられたらいいな。読んでくださってありがとうございます。 天官賜福とさはんにハマっているのでその話が多めになるかも。 匿名の質問箱はこちら mond.how/ja/checaldooggi