国師は花城を見て「君…?」とかたまる。このときの花城の笑みといったら!作り笑いではなくほんとに笑ってて、それが「あのとき焼かれるところだった、天煞孤星そのものだよ!」と勝ち誇ってるんですよ。私も痛快で笑っちゃう。
国王であった父もなく、ほぼ父親代わりだったのかなあっていう君吾もあんなことになっちゃって、今となっては梅念卿が父親か?てくらい、動揺する。
「絶を不用意に挑発してはならないと言ったはずだ。この男はそんなに若い頃からあなたに言い寄っていた、鬼のような執念だ!いつから、八百年?八百年!彼は八百年もの間あなたにつきまとっていた。恐ろしい。恐ろしすぎる。私の占いは正確だった!」
その反応は私も万神窟でやってる。国師は知らないでしょうけど、一万もご神体を掘って絵も描いてるんですよこの鬼は。
て思っていたら、謝憐も心の中で「もし師匠が万神窟を見たら花城を野蛮な獣や獰猛な洪水、狂った悪魔や病気の幽霊と断定して私を連れて逃げ出すだろうな」と考えていた。よかった。謝憐も「ちょっとやばいかな、この信徒」って思ってたんだ。花城のことをそれで嫌うことはないだろうけど、その行動力がふつうではないという感覚を持っていてほしかったので、よかった。
国師はショックから立ち戻れず、ずっと「こわすぎ。計算高い。気をつけなさい」と注意しまくる。そして、「私に向かって言ってみろ、どうやって霊力を貸したか。どれだけの方法があって、どうやって貸したんだ?殿下になんて言った?」と詰め寄る。答えない花城。
謝憐は「ははは、いいんですいいんです。もう放っておいてください。ページはめくれちゃったし貸してもらったし、今となってはどうやってなんてどうでもいいでしょう?ははは!全部一緒ですよ」と誤魔化す。
私の力では翻訳することもできないが、ここの流れ好きすぎて早く邦訳で読みたいよ〜。邦訳してもらった上でさらに川上稔氏に書いてほしい〜。ぜったい面白いから…。
さて、この流れを変えるには強引に話を変えるしかない。謝憐はシリアスモードになって「もっと重要なことを話そう」と切り替えます。
君吾は一体何を計画しているのか?花城は「あなたへの試練を準備してるんじゃないかな」。「どんな試練だろう」「どんなことでも考えられる。あと、殿下。話を変えないでください。私は助言してるんですよ。甘い言葉に騙されて堕落してはいけない……」
さすが二千年も生きてると国師も流されないのでお説教が始まる。
「哥哥、誰か来る」「私に嘘をつけると思うな。簡単に受け取らないぞ」「師匠、嘘じゃありません。本当に誰かくる!隠れて!」
謝憐と花城は天井の梁につかまって息を潜める。すると「天界ってなんもねえな〜!」とでかい声で話しながら戚容がやってきた。
戚容!君はいったい…!?不倒翁になってたんちゃうかったっけ??
どうも、君吾は神官たちを幽閉して、閉じ込めてた魑魅魍魎を解き放って天界の中を自由に行き来させてたらしいです。
どうでもいいけど、ずっと天界とか天庭とかいってるけどほんとは仙京なんだよね…表記ゆれがあって申し訳ないがメモなので許して。
戚容は谷子を連れていて「ここがお父さんの支配地だよ」と説明する。「ここではどこでもションベンを垂らしていいんだ!」「でもお父さん、地面におしっこするのはよくないよ。ここはとてもきれいで清潔でしょ。床を汚しちゃうよ」とたしなめる。よくできた子だ…。国師も「子どもに何を教えているんだ。何歳になったのか知らないが、いい見本になることをわかっていないようだな。君よりその子の方がずっと大人だぞ」とたしなめる。
両方から諭されて、激昂する戚容。谷子を引きずって霊文殿の中に「青鬼戚容三界一のナンバーワンゴーストキングここに参上」みたいなことを書いて去る。いなくなったあと、謝憐は不倒翁になった霊文を袖から出して書いたものを見せてあげる。霊文はあまりのことに転げ回る。かわいそう。
「小鏡王はまったく成長していないな」と国師。花城は一言、「醜悪」。国師もそれに同意して「まったく、醜悪だ。鬼市にある極楽宮の入り口の対句と同じくらいひどい。あの手書きの文字といったら…」と話し始め、謝憐は「私も見たことがありますが、あれはとてもいいと思いますよ。とても独特で、あちらの方が好きだな」とフォローを入れる。
国師は「何を言ってるんだ。あなたは世界的な書家から書道を習ったのですよ。美しさと醜悪さの違いがわからないはずがない。あの手書きの文字は三界でももっともひどい。どうして好きだと?趣味が悪くなったんですか?」と容赦がない。謝憐は「もう何も言わないでください」とお願いするのだった。
花城が「哥哥」と呼び、君吾が動き始めたことを告げます。仙楽殿を目指しているらしい。
「すぐに戻らなくては。血雨探花は隠れていなさい。ぜったいに二人が出会ったことを知られてはならない。私の三人の友は銅炉山の領域で身動きが取れないでいるが、今も抜け出そうとしている。どのような行動を取るにしても、彼らが動けるようになれば成功する可能性は高くなる。無謀な行動は禁物だ」
謝憐は国師に別れを告げて、急いで霊文殿から仙楽殿に戻ります。が、まだ四区画先にあるのに、君吾は仙楽殿まであと一区画のところにいる。銀蝶の目を借りると、君吾はもう門までたどり着いていた…。
どうすればいい!?と焦る謝憐。そこで、君吾の後ろにある宮殿の門が開く。すると、出てきたのは雨師。「陛下。私はあなたに差し上げたいものがあったのを忘れていました。こちらに来ていただけないでしょうか?」「ああ」
君吾が中に入ってくれたおかげで時間が稼げる。人界に戻ったら、お線香を焚こうと決意する謝憐。ここ、eighteen tall incense sticksて書いてあるんですけど、どういう意味か全然わからん…
君吾より先に仙楽殿に入って、花城は警備の神官にかけていた術を解き、謝憐は小部屋に入って一息つくが、すぐに君吾がやってきたことを告げる。二人は顔を見合わせて、花城はカーテンの裏に、謝憐はベッドに入って寝ていた風を装う。ハラハラする!
君吾は部屋にやってきて勝手に茶を入れる。そして話しかけてくる。
「仙楽、私はそなたがここで快適に過ごせるように整えた。だが、外にこっそり出たばかりか、誰かを連れて帰って部屋に隠している。もはや私の話を聞く気はないようだ」
全部バレてる〜。
君吾は謝憐のそばにやってきて、体にかけていたシーツをはがす。「その服はそなたには似合っていないな」と、錦衣仙を着ていることも見破られてしまう。
花城は君吾の背後で湾刀に手をかけますが、謝憐は首を振って止めます。
「霊文をどこに隠した?」と問われて、謝憐は花城が侵入したことはわからないのか、と内心驚く。
「そなたの表情は何かおかしいと言っているようだ。なんなのだ?何を隠している?」謝憐の表情はまったく変わっていなかったけれど、君吾は揺さぶりをかけているようです。
心臓に悪いから早く終わってくれこのターン。
「お好きなように考えればいいでしょう。誰もここから逃れられない。私ができることもなにもない。お好きなように、年長者らしく」と挑発にもとられそうなことを言って謝憐はベッドに横たわるのだった。
君吾は部屋の中を探し回るが何も見つからない。そして、カーテンの裏側も見るが、そこにも何もない。再びテーブルのそばに座るしかない。
で、花城がどこにいるかというと、ベッドの中で!?!?!?
こんな…こんな…ここへきて、そんなエッチなイベントが…!?
密着してるので謝憐の心臓は雷みたいに音を立てて動いている。花城はにっこりわらって口だけを動かして伝える。「こわがらないで、殿下」
いや…いや?これはこわいな??全然安心できないんだが…???
君吾が部屋ん中物色してるすきに入ってきたみたいなんですけど、こわすぎるしばれたらどうするんだろうと私の心臓にも悪いんですが。
「仙楽、ベッドから出なさい。本当は寝ていないだろう。起きて私と一緒に来なさい」
ここへきてますます親みたいな物言いをするな…私の脳内変換だけど。起きたくない謝憐ですがまた布団をはがされてはかなわんので起きることに。袖の中に青い不倒翁も入れておきます。
君吾は部屋から出ていて、謝憐が振り返ると花城もベッドから出て謝憐のそばに来ようとする。それを大丈夫だからとなんとか手で合図して部屋を出て扉をしめる。
ふー、やれやれ、なんでこんな心臓に悪いことせなあかんねん…私じゃないけど…。
「何をしていたんだ?」「何も。腹を空かせてはいけないのでしょうか」と感情を込めずに、君吾が雨師からもらった野菜を手にして返す謝憐。「そういったものが好きなら、もっとある。今度、そなたに送ろう」君吾はやさしく言うのだった。
ほんと、君吾って謝憐のこと気に入ってるんだね。こういう人が二千年前にいたらよかったのに。言ってもしょうがないことだけど。君吾は愛する人を作るべきだったんだと思うよ。だって、世界と愛する人って繋がってるからさ。急にセカイ系のようなことを言いたいわけではないのだが、私が言いたいのは、視野を広く持てってことで…。もうやめよう。どうしたってどうにもならん。
さて、二人していくつかの通りを歩いていくと、再び戚容の笑い声が聞こえてきます。彼は「戚容参上」のストリートアートをいたる神官の住居に描いており、中に入っては喚きまくっているのだった。
南陽殿に入ったが、風信は自分の問題でいっぱいだったので戚容に構わず、つまらなくなった戚容は慕情のところにいく。慕情はただ目をぐるりと回しただけだったので思うような反応を得られず、次に権一真のところへ。しかし入るやいなや、神像が飛んできて戚容にあたり、もろとも屋根の上まで飛ばされて頭から地面に落ちる。権一真は自分の神像を武器にして戚容を攻撃したのだ。
こうした振る舞いは、鬼になろうと自分の年下のいとこなわけで、謝憐を恥ずかしくさせるのだった…。
「青鬼」
君吾の声にかたまる戚容。謝憐にはその様子が「父」と「息子」のように見える。傍若無人な戚容が萎縮するって珍しいので、君吾ってすごいな〜と素直に思う。
戚容は謝憐を見つけると「前は二つの山に守られて俺のことを下に見ていたが今じゃまるで捨て犬みたいじゃないか」と罵ってきます。二つの山ってなんやねんと謝憐は疑問に思うのですが、花城と君吾のことらしい。自分の前に立つ君吾を見て、いろいろな感情が渦巻く謝憐。そして、ずいぶん前に花城に君吾についてどう考えているか尋ねた夜のことを思い出します。彼は君吾は本当に謝憐を憎んでいるに違いないと言ったのでした。
さらに罵ってくる戚容を止める君吾。「部下を外に出してもいいぞ」とだけ告げて、謝憐を伴ってその場を離れます。
さて、角を曲がるととっても豪華な武神の宮殿が現れます。これこそ、我らが裴茗の明光殿です!そこからは怒りの吠え声と叫び声が聞こえてきて、中に入ってみるとめちゃくちゃになっていました。
裴茗の顔色は灰色。それは、宣姫がまるで毒蛇のように、彼をしっかりと締め付ける輪を巻いていたから。彼女は必死で自分を彼に縛り付けようとしていた。彼女は髪の毛を振り乱し顔も怖いし目も見開いてるし裴茗の喉にかみつく寸前でしたが、若邪がそれを止めます。折れた剣は裴茗の首を刺そうとしていましたが、裴宿がそれを押しとどめていました。そんで、刻磨は拳を半月と裴宿に振りかざしていましたが、灰色の顔をした裴茗が刻磨を引っ張って止める。もしそうしていなければ、鎚のような拳は裴宿と半月をぺちゃんこにしていた。そんな中、宣姫と容広がどっちが裴茗を刺すか首絞めるかで争っているのだった。
めちゃくちゃ!!!!!
裴茗の命は全部私のもの!という宣姫。あなた、1巻から登場して、ずっとそれじゃないですか!容広は「裴茗には八百から千人くらいの女がいるが、お前はその中でそんなに高い位置にいると思ってんのか?俺は裴茗を殺した男だぜ!」と張り合う。
取り合ってる相手が裴茗のせいか、めちゃくちゃおもろいんやけど、笑ってる場合ではない。このときの裴茗、ぜったいに最終回のあしたのジョーみたいになってるよ。裴茗の額に血管が浮き上がり、「どっちも狂ってる!失せろ!お前ら全員だ!」と叫ぶ。
謝憐はこの様子を見て共感しか感じない。不運のお手本みたいな有様だったので。さすが裴茗。
「裴将軍、ちょっと待って!」と助けようとすると、君吾が謝憐の肩に手を置く。「私がそなたを連れてきたのはよいことをさせるためではない」
二人のことをようやく認識するその場にいた人々。「花将軍!」と半月が喜ぶ。半月はいつもかわいいね。
君吾の置いた手で動けない謝憐は「じゃあ、なんだって私を連れてきたんです?」と尋ねる。
「明光」と声をかける君吾に「陛下、まったく、感謝していますよ」と皮肉を返す。君吾が気にするわけもなく、彼は微笑む。
「感謝するには早い、明光。私はそなたの助けを借りたくてここに来たのだ」「どんな?」「王都の中、人界の中。そこには人の結界がある。それを壊せ。北方将軍としてそなたを取り立てよう」「血雨探花が守ってるのでは?私独りでは壊せませんよ」「もちろん武力では壊せないだろう。しかし、私はそのような方法を使わねばならないとは言っていない」
実際のところ、花城はそこにはいないので、裴茗がそこに行って師青玄に中に入れてもらえれば簡単に破壊できる。
自分で壊すんじゃなくて駒を動かすのうまいな〜と感心してしまう。早くボコボコにされてくれ、君吾。
121章に続く!