魔法使いの約束 月に愛された世界であなたと の感想

A4(えーよん)
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公開:2024/11/28

魔法使いの約束 5周年おめでとうございます!

私はサンリオコラボのときにハマって育成で挫折して1年以上放置して3周年で出戻ったという経緯があります。で、去年はめっちゃ頑張ってたんだけど、第二部の更新が終わってから仕事も忙しくなるし育成がつらすぎて、今は思い出したらログインするというていたらくです。

とはいえ、5周年ではログインストーリーとイベントストーリーで一気に物語が動く。久しぶりにガチャもしまくったしイベスト解放するのに入眠効果抜群の育成も頑張ったよ…。

5周年のイベントストーリー一気に読みました。面白かった…。満ち足りている。嬉しい。こんな物語が読めてなんて幸せなんだろう。今も余韻に浸っています。

冒頭から、大いなる厄災との戦いを見据えた合同戦闘訓練が行われていて、来るべき時がくるのだと気が引き締まりました。私が何かするわけじゃねえんだけど…。

そのためなのか、それぞれのキャラクターを改めて、俯瞰するようなお話だったと思います。でも、それは掘り下げるとか分析するとか、そういう手法ではなく、ひとりひとりが日々の生活を営み、他者と交流し、日常で起こったことで悩み考えるような描き方です。口当たりはやさしいのにしっかり栄養あるみたいな、どうしたら言葉でこの空気、距離を描けるのかと、物語に夢中になる一方、文章のすごさにおののいていました。

まほやくは話が面白いのであんまり先入観なく味わってほしいなあと勝手に思ってるんで、これから始めてみようかな、という方はここの感想も読まないでくれ、の気持ち。私なんかの目線のフィルターがかかったら嫌じゃん…!

そう言いつつ、アウトプットしたいから私は感想を書くわけですが…。

今回の物語の主軸となるのは、シノの過去です。シノは孤児で、それゆえに悲惨な幼少期を過ごし、大きなコンプレックスを抱えている。

他の魔法使いたちもそれぞれ生い立ちには何かあるのですが、400年以上生きている魔法使いだとおそらくすでに自分の中で消化できており、改めてこれが問題になるということは、少ないような気がします。(澱のように残っていても、自分たちで対処できているし、その傷に苛まされることはあっても受け入れる諦観のようなものがある)

シノはまだ十代で、彼は約束を交わした相手、そして彼が自分を捧げると誓ったヒースクリフに嫌われること、捨てられることをひどくおそれています。しかし、彼が愛するヒースクリフは自分のような人間を嫌うのが当然だとも思っているのです。

冒頭から不安だったんだけど、もう、9話くらいからずっと泣いてました。

中央の国にある魔法舎に東の魔法使い・ディートフリートがやってきます。彼はシノの昔の知り合い。シノは彼の口からヒースクリフと出会う前の自分の過去が明るみになることをよしとせず、はっきりヒースクリフにも詮索するなと告げます。

しかし、ヒースクリフからしたら納得がいかない。シノは従者である以前に、ヒースにとっては大切な友人です。いや、私の邪な考えからすると、もう、友人っていうかさ…伴侶だろ!て思うんだけどさあ…まあ、それは置いといて、シノが自分に隠し事をするのがヒースには耐えられない。シノのことを知って、そしてまるごと好きだよって言いたいわけ!わかるよ…

第二部で、ファウストとシノは死地に立たされるんだけど、そのとき、ファウストはシノを命がけで守るんですね。私はそのときのファウストの独白が好きで、シノは生意気だし言うこと聞かないんだけど、めっちゃ素直で真っ直ぐで、あのファウストをして「かわいい」と思わせる男の子なんですよ。

1.5部でもさ、シノは一人でミノタウロスと対峙して、とても勇敢な魔法使いなんです。でも、長い間一人で生きていかなきゃいけなかったから現実的なところもある。

で、過去を知りたいヒースに対してシノは「死ね」って言っちゃう。わりとショックではあったけど、私はこのくだりはホッとしました。シノの年齢からしたら幼稚な罵りだけど、彼の魂の柔らかい部分は、必要とされず一人で生きていかなきゃいけなかった幼子のままで、だから、あれは彼の精一杯の叫びだったんだなあって…。マジでフィガロの「くたばれ、老いぼれ」とは違うんだよ。

このとき、そばにカインがいてよかった〜!て思いました。そんで、一人で泣いていたシノのそばに来たのがアーサーでよかった〜!て思いました。中央の魔法使い、圧倒的安心感。

シノがアーサーに話すこと、読んでてもうずっと涙流してました。今も思い出して瞳が潤む。

さて、東の主従がこじれにこじれている一方で、他の魔法使いもそれぞれいろいろあります。

まず、カインとオーエン。シノとこじれたヒースクリフは夜にお腹を空かせて厨房へ。そして育ちのいい彼は、ネロが作っておいたりんごを煮込んだものをつまみ食いしていいかどうか逡巡し、迷っているうちにオーエンが現れてそそのかされて食べてしまいます。

それくらいいいだろって思うんだけど、オーエンは魔法舎きっての人をディスることに長けた魔法使い。ヒースクリフはとてつもない罪悪感を抱かされます。そこへカインが「またつまみ食いしてる」とオーエンをいさめます。オーエンはヒースを巻き込みますし、実際ヒースはつまみ食いをしているので、カインの言葉は耳にいたい。「食べたのは僕なんだ」と言っても、カインは「オーエンにそそのかされたんだろ」と全て悪いのはオーエン(だいたい合ってる)と断定し、オーエンは機嫌を損ねて姿をくらまします。

ふらふらしていたオーエンはクロエと遭遇し、自分たちの姿を入れ替えてしまいます。オーエンの狙いはバクラヴァという甘いお菓子。オーエンの姿では食べられないだろうからクロエの姿で食べようと目論む。

で、シェイクスピアかよ、っていうようなやりとりの果てに、オーエンはカインから謝罪を取り付け、バクラヴァも食べて、カインと共に過ごし、……結局いったい私は何を見させられたんだ?という……。え、ほんとになんなの?

クロエ、とばっちりですよね。かわいそうに、オーエンの姿になってミスラに殺されかける。でも自分に仮死の魔法をかけて難を逃れるところはさすが西の魔法使いやなって思いました。私、クロエの得意な魔法が仮死にするの、好きなんですよね〜。ところで、北の魔法使いがやってる、爆発する蛙を飲み込む遊び、北以外で一切受け入れられてなくて笑った。やめろ、そういうやつは。

クロエは、実は中央の国のドラモンドさんとアーサーの叔父上とでみんなに内緒で式典の服と指輪のサプライズを用意しており、その打ち合わせをしなくちゃなんないのにオーエンの姿になっちゃって、散々です。

なので、ドラモンドさんと叔父上と話すのはオーエンなのですが、そこで、クロエの作ったものを拒否した叔父上がクロエを評価してくれて、私はそこでも泣いてしまったよ。クロエはいつだって自分の作ったものを魔法使いだからってないがしろにされてきたんだ。それをさ、叔父上が…。うーっ。

オーエンはいちおうクロエとして振る舞うんですが、オーエンってクロエをこんな風に見てるんだ…てことや、オーエンの物事の捉え方がわかってよかったです。邪悪なのに変わりはないんだが…。

クロエはオーエンの姿でもラスティカにわかってもらえて、改めてラスティカってすげえな〜!て感心した。早朝のことファックって思ってんのも、訓練中にきわどい話し始めるのも面白かったよ。

さて、元相棒もごちゃごちゃしてます。今回、ネロはオズにバクラヴァ作りを任命?されます。ネロはオズの中ではお子様枠らしく、600歳なのに…と動揺を隠せませんが、本人は喜んでいるしリケの目から見ても喜んでいたので、まったく恥じらいとかないらしい。ネロとオズのやりとりめっちゃ好きなんですけど、魔法を使わないで料理をするネロが「人にはかたむけないから物に心を注ぐ」みたいなことを言って、オズは「リケは十分注がれている」「ねだられたいのだろう」と看破します。

ブラッドリーは彼の義侠心から、監獄にぶちこまれていたときの知り合いがもうすぐ死にそうなので死ぬ前に脱獄させて空を見せてやりたいと、レノに片棒を担がせようとします。それを知ったネロは「なんで俺に頼まねえんだよ」と面白くない。あんた、忘れてんのかい、自分から言った設定を…!ボスはボスの考えがあったんだと思いますけど、市場でオズ・ネロとボス・レノが鉢合わせしたとき、へんな空気になってましたね。もう、ええから、早く好きって言ってセックスしたら…?なんかそれで解決するんじゃないの?別にセックスはしなくてもいいけどさ…。

でも、ここはここで落ち着く。さすが元相棒。

次に、ブラッドリーが助けようとしたランドルフという魔法使い。彼は、ルチルが参加した詩人たちの集まりで関係してきます。これもすごいよかったな…。ルチルが自分の作った詩で悩むんだけど、慰める晶さんが、本当に彼に寄り添っていて、賢者が晶さんでよかった…て思った。そして、最後に何故かルチルとミスラも「できてんの?」ていう会話をしてた…。

さて、アーサーに自分の過去を話したシノは仲直りにバクラヴァを持ってヒースと会います。ここに行く前、ネロがシノを気にしてやるのも、ファウストがヒースを諭すのも、ほんっとに東の保護者のよさが出てて、胸がいっぱいになった。

シャーウッドの森で過ごしてきたシノのことだから、みんなが自然、そして森の生態系、共生に二人の関係をなぞらえるのも好きでしたね。

結局、シノはヒースには話さないんだけど、いつか話せたらいいねって思います。でも、今じゃなくていいとも思う。だって、今、目の前にシノはいて、過去にどんなことがあっても、過去のシノがヒースと話すわけじゃないから。これは法律の話とは別、人と人との関係の話なので、もう、いいの!

あ、私は今回もフィガロに腹を立ててました。ファウストが弟子に戻ったからって調子に乗りすぎじゃねえか、この魔法使い。中央らしさとか東らしさとか言うからファウストが惑わされてトンチキになっちゃったじゃん!面白かったけど!

ディートフリートはシノと約束をしちゃったかも、ということで、幼い彼に見せてあげると言っていた精霊の走馬灯を持ってきます。ディートフリートは晶さんにとても難しい質問を投げます。そして、彼がシノに愛称を呼ばせなかったのは、シノの保護者という自認があったのかな、なんて思いました。シノを生かそうとしてくれたのはディートフリートだったから…。

人のことを想うとてもやさしい物語で、よかったです。火種はたくさんあるのでどうなるのか想像もつかないけど……。ただただ22人に幸あれ!今はこの物語を何度も味わいたいです。

@checaldooggi
書くことを続けられたらいいな。読んでくださってありがとうございます。 天官賜福とさはんにハマっているのでその話が多めになるかも。 匿名の質問箱はこちら mond.how/ja/checaldooggi