この章のタイトルは'Upon the Heaven-Crossing Bridge, Three Idiots Return to Olden Times.'「天を渡る橋の上で、3人のバカが昔に戻る」
Three Idiotsと聞くとインド映画を思い出すな〜(邦題は「きっと、うまくいく」)
原題は通天橋三傻還複昔で、ここでthe Heaven-Crossing Bridgeは通天橋なのだと知る。通天閣って、天に通るための高殿(楼閣)って意味だったのか!へー!!
溶岩の海に落ちる〜と思って意識を失う謝憐。気がついたら冷たくて固い地面の上。近くには慕情がいる。「三郎!」と叫ぶが彼はいない。
二人は通天橋の上にいました。何が起こったのか全然わからん。
通天橋は巨大な自然の洞窟の中にありました。洞窟の上面はまるで夜空のよう。朽ち果てた橋が天蓋に続いているのでした。この橋は石と木でできており、橋本体は粉々になって漆黒に焦がされていました。
待って待って、天の橋って本当に土木で作ったの?土木で!?君吾は謝憐に仙楽殿作ってたし土木好きなのか。……自分でなんでもできるからダメなのでは?
支える柱もないけど浮かんでいて、このへんは不思議な力っぽい。広いところは幅9メートルくらい、狭いところは人がすれ違えるかどうかの狭さしかない。
橋の下はぐつぐつ煮えたぎる溶岩のお風呂があります!
もう嫌だ〜、早くここから出たい!
二人は落ちる寸前、白無相にここに連れてこられたらしい。しかし白無相の姿はありません。本当に何がしたいんだあいつ。
ここから脱出し、風信と花城と合流しようとする謝憐。しかし慕情は足を負傷しており動くことができません。彼の手は火傷しており、足はもっとひどい。謝憐は彼の腕を自分の肩に回して立ち上がります。
少し進んだところで「何故だ」と問う慕情。「何が?」「俺はあなたが俺を疑っていると思っていた。無事だとわかってからは、もっと」「ああ。うん、違うよ」「何故」「だって、知っていたから」「何を知っていた?」「君が嘘をついてないってこと」
形容しがたい表情をする慕情。どんな顔?
「信じてって君は言わなかった?私は信じてるよ。それだけ」淡々と言う謝憐はさらに続けます、「なんて言ったらいいんだろう。私は君のことを何世紀も前から知ってるだろう?それで、君がそういう人間じゃないって知ってる。前に言わなかった?君は誰かの杯に唾を吐いても毒は入れないってさ」
めっちゃいい雰囲気で聞いていたのに、最後の言葉を聞いて怒り狂う慕情。「唾など入れない!そんな無礼なことはしない!」
謝憐はひらひら手を振って「細かいことを言うなよ。ともかく、万に一つ君を見損なうことがあったとしても、君は私と三郎を倒せない。私たちは一撃で君を殺せるからね。君はまったく脅威じゃないんだ。アハハ」と火に油を注ぐようなことを言う。
この、謝憐の風信と慕情に対する態度って、やっぱ太子殿下時代に……というか、太子として育った環境で培われてるんだろうな。いつも、全然配慮とか調整とかしねえなって思うもんな。当たり前に従者がいる存在は無自覚に対等とは見ないって感じがする。
「もし君が君吾に逆らって呪枷をつけられたなら、君にひどい代償を払わせるわけにはいかないよ。君は正しいことをしたんだから」と、笑うのを止めて真剣に言う謝憐。
長いこと謝憐を睨んでいた慕情は何かを言いかけますが、それを遮る謝憐。「君が私についてどう考えてるか、知らないって思ってる?君は今私に運ばれてるんだぞ、溶岩の中に投げ込みたくなるようなことを言わないでくれ」
うーん、この歯に衣着せぬやりとりができるのが風信と慕情なのかな。私は自分の友人がこんな風に言ってきたらもう友人止めますけど…。仕えたくもねえし。私は殿下のことが好きだが、殿下とは極力関わり合いになりたくないのである。
そんなやりとりも悠長には続けていられません。謝憐は神速で動いて10メートル先まで飛ぶ。今まで彼らがいた場所が崩れていき、待ち構えている怨霊に飲み込まれていきます。
どうももう通天橋は崩れかけてるみたい。急いで先を進んで行きますが、橋はどんどん狭くなる。もう、足場もなくなっていきますが、それでも謝憐は水面をかすめるツバメのような俊敏な動きで、トットッと前へ進む。この動き、アニメで見たい。
数多いる武神の中でもこのような卓越した動きをすることができるのは彼の他におらず、霊力なしで修練を積んだものでしか得られない…みたいなことが書かれている。こういうときに謝憐ってそういや武神なんだった!て思い出す。
火柱が立ち上がり、怨霊が叫び声を上げる。彼らは「来て、一緒になろう、ここで朽ち果てよう」と誘う。彼らは通天橋が落ちたとき、溶岩に飲み込まれた烏庸国の人々なのです。自分たちが浄化されるために人々を誘うのではなく、苦しむ様を楽しむために引き込もうとしている怨霊たち。全然成仏する気配がない!
誰か一人でもマトモな烏庸国の人間っていねえのかよ〜て思うんだけど、たぶん、そういう人は怨念も残さず死んでいったのでしょうね。烏庸国太子に感謝した人もいたと思うんだけど、そういう人の願いや祈りは届かなかったのかな。もし、全然、一人もいなかったとすると、それはそれでつらすぎるよ。
怨霊が束になって火柱を上げたりするので、全然前に進めない。慕情は「俺を置いていけ」と、こういうシーンで定番の台詞を言います。
定番の台詞を返さないのが謝憐です。「何を言ってるんだ!?君は何より生きるのが好きで死ぬのを怖がっているじゃないか!そんなことを二度と言うな!」
それを聞いて慕情の額に血管が浮かび上がります。「生きるのが好きで死ぬのが怖くて悪かったな!どっちにしろ死ぬんだ。俺の気が変わらないうちに置いていけ」「冗談はやめてくれ。もう喋るな。論点がずれる。今考えなきゃいけないのは、できる限り、どうやって橋の終点を見つけるか、だよ」「冗談はどっちだ。これが通天橋なら、どれだけ長く走らなきゃいけないってわかる?遅かれ早かれあいつらは私たちを突き落とす。俺を置いて、先へ進め。俺はあのクズどもを全て殺す」
慕情は謝憐から離れて、謝憐が近づこうとすると「ここに戻ってくるな。ここは狭い。あなたが来たら二人とも落ちる」と警告します。
「あなたは俺たちが同じ考え方だと言ったな。あなた俺が理解不能だと?ふん、気持ちは通じ合っていると。この際だから、ストレートに言ってしまおうか。俺はあなたについていろいろな意見を持っている」と、最期だからなのかめっちゃ喋る慕情。
「それなら、あなたが自分の地位に頼りすぎていると俺がよく思っていたことはご存知ですか?たとえ皇太子殿下であっても、たとえ幸運に恵まれていたとしても、あなたの技量は俺よりそれほど優れていなかったと?」「……」「あなたはきっと、賞賛やお世辞が欲しくて、見せかけの善行をするのが好きなだけなんだとも思った。だから俺を助けてくれたんだと。俺は、あなたが同情と優しさを示すのに完璧な対象だった。正直、今でも変わらない意見もある。これからも変わらないかもしれない。その思いを押し込めたとしても、いずれは戻ってくる」
「本人にそんな細かいことを言う必要はないんだよ」と謝憐。
「しかし、そうでないことの方が多い」と慕情は言い、びっくりする謝憐。
勇気を振り絞る慕情。まるで首を絞められたかのように、そして誰かに強制されたかのように、つっかえながら言う。「それが普通じゃないか?あなたは素晴らしい。それに、私より良い人間だ。要するにだ、俺は…すごく…あなたの…と、とと、友達になりたかったんだ」
慕情の口からそんな言葉が聞けるとは、百万年経っても想像だにしなかった謝憐。
む、慕情!!!!!
ダメだ、これ以上私は読める気がしない。もう四回目くらいなんだけど、この箇所読むの。花城とのイチャイチャよりここを読んでるんだが、耐えられない。やめてー、こんな甘酸っぱい八百歳同士の友情、どうにかなりそう!!
「仙楽国の滅亡の後、それが正しかったとしても、間違っていたとしても、俺が困難な状況にあったとしても、俺はあなたに謝らなければならない」と言う慕情に「もう橋の下に流そう。一緒に脱出しよう」と謝憐。
しかし慕情は「もし俺が疑惑の目を向けられたら、あなたはその状況を利用し、たとえ俺がやっていないとわかっていても俺を助けないだろうと言われた。あなたは俺を憎んでいるから、俺を信じないだろうと」と続けます。
それを言ったのが誰なのかがわかる謝憐。私にもわかるよ。許せん!!!!!
「俺は彼を助けることに同意しなかったが、それでも彼が言ったことはすべて、以前から考えていたことだ。心の底では、あなたは俺のことを嫌っている、軽蔑していると思っていた。とにかく、あなたは実際にはそう考えていない。よかった」
む、慕情!!!!!
素直になって…ていうか死を前にしないと素直になれないってどういうことなの!?800年どうやって時を過ごしていたの!?思ったことははっきり言ったほうがいいし、ちゃんと話し合ってわだかまりはなくした方がいいよ。嫌な奴だったら縁を切って、誤解だったならまた笑い合えばいいじゃん。まあ、誤解を抱いていたと知って嫌いになるケースもあるけど。
さて、胸の内を明かしているうちに火柱が上がり、謝憐は数歩下がって慕情から離れてしまいます。慕情が橋の表面に手をあてて、目を見開く謝憐。橋は崩れ、一緒に落ちていく慕情。「ゴミを片付ける手伝いだ」なんて言うけどかっこよくねえからな!意地汚く生きろ!!
壊れた橋の中央に立って、彼を引きずり込もうとしている怨霊と対峙する慕情。そしてかっこいいことを言って戦い始めるんですが、謝憐はまだそこにいて「どれくらい高く飛べる!?」と尋ねる。「どうしてまだそこにいるんだ!」「私のせいじゃないよ。君が生まれて初めてまともなことを言って飛び降りたんだ。どこかに行けるわけないだろ」「どういう意味だ、その「生まれて初めてまともなこと」っていうのは…!」
とやりとりをしているうちに、いよいよ沈んでいく橋の残骸。死を覚悟した顔をする慕情。慌てる謝憐。若邪を伸ばして掴ませようとするが、長さが足りない。
何か考えたから!というが、助ける手段は何もないのだった。しかし、絶望に包まれた中、不意に別の手が慕情の自殺を決意した拳を叩き落とし、そして彼の体を掴む!
やってきたのは風信です!風信は上流から空殼に乗ってやってきたのです。もう、この移動方法、嫌なんだが。当たり前になってない!?
慕情を掴んで若邪の端もしっかり握った風信。謝憐は引っ張り上げようとしますが怨霊も負けてはおらず、襲いかかってくる。キレた風信は若邪を慕情に掴ませ、慕情は死を覚悟していたのに助けられたショックから放心していて素直に従う。風信は矢をつがって怨霊に打ち込み撃退。
なんとか通天橋の上に無事に立つことができた三人!よかったよかった。
「風信、どうやってここへ?」と尋ねると、「どうやって、ですって?あなたたちは三人落ちたんですよ。他にどうすればよかった?気が狂うかと思いましたよ。崖から降りて、ここまで流れてきたんです。あなたたち2人を偶然見つけたのは、やりとりと叫び声を追っていたからで…まったく、何をしてるんだ!溶岩の中に飛び込む!?気が狂ってる」と憤懣やるかたない風信。ごめんね…。
さて、死にかけの状態の三人はなんとか身なりを整えて出発。風信が慕情を背負って通天橋を少しずつ進みます。
慕情を負ぶって、「それにしても、最初にお前が話していたことを聞いて、殴ろうと思った。しかし、心の底でお前があんな風に考えていたとは想像しなかったな。この野郎!」と話しかける風信。慕情は表情を暗くします。「言いませんでしたか?この男の気持ちは、後宮の奥底で恨みを抱く妃妾よりも歪んでいる。まったく理解できないな!」
謝憐はジェスチャーで風信に話すのを止めようとしますが、しかし、彼はまったく気づかず、慕情に続ける。
「殿下と友達になりたかったなら、そう言え。本当にお前が何を考えているかわからなかったんだぞ。殿下に軽蔑され、友だちになれないと思ったからって、嫌味ばかり言って人をうんざりさせていたとはな」
謝憐は「慕情は私たちが若い頃からそうだっただろ?もう叱らないで。ほら、顔が真っ赤になってる」と半ば投げやり。「なんなんだ!?二人とも黙れ!」と怒り狂う慕情。風信は「友達になりたかった」と言ったときのことを再現しさらにからかいます。
「よし、これで一件落着だ。これだけは覚えておけ。殿下は自分よりお前を下に考えたことはない。お前が一線を越えて怒ったとき以外、彼は私の前でお前の悪口を一言も言ったことがない。だから、これからは普通に振る舞ってくれ。普通に話し、普通に表現する。また嫌味を言ったら怒鳴るぞ」
という風信に「何世紀も前から怒鳴っているだろう」と返す慕情。謝憐は「君は神官なんだから、どうやって見られるか注意すること。わかった?そんなにしょっちゅう目を丸くしちゃダメだよ。君の信者が見たら反対するだろう」「この男は上天庭で一日中悪態をついている」「お前のせいだろ」
わちゃわちゃと軽口を叩きながら歩く三人。二人の言い争いをからかう謝憐でしたが矛先が自分に向かってくると「私に言う必要はないんだから。三郎を探すのを手伝ってくれ。ハハハ…」と笑って返す謝憐。よかったねえ。
128章に続く!