気になるところで話を切られて「で?」と聞く謝憐に答えない君吾。答えられないんだったら思わせぶりな言い方しないでもらえます!?
君吾は「何故、今国師のことを?銅炉山の中で何かに遭遇したのか。それも、国師に関連することで」と尋ねます。しかし山の精霊が暴れ出したようで君吾とはやりとりできなくなってしまいます。まだ君吾は銅炉山にいるからね。
怨霊の雲は王都に迫ってきていましたが、王都には寺院もいっぱいあるし宮殿の王の気が守ってくれていて簡単には入れない。しかし長くは持たないので強化する必要があります。
謝憐は花城に言います。「三郎、私に考えがあるんだ。きっと結界を強化する。でも、たくさんの人が必要だ」「どれくらい?」「とてもたくさん。可能な限り、たくさん。少なくとも五百人」
それに対して花城は「生きてるのか死んでるのか」と問いかけます。
「生きた人だ。鬼ではダメ。生きている人の精気と陽の気を借りて怨霊を祓う」「彼らは自分から志願した人じゃないとダメなんだね」「そう。戦って守る気がある人間じゃないとダメだ。もし恐怖や、気持ちがあってもそれが弱いものだと、怨霊が有利になってしまう」「彼らは勝つことに信念がある、前線に立つ兵士のように。無理強いされたり、逃げようとする者は、結局放棄することになり、俺たちは完全な敗北を味わうことになる」「そのとおりだ。三郎、そんな人たちを探せる?」
けっこうな無茶振りじゃない!?!?
要するに、ドラゴンボールの悟空の元気玉でしょ?あれは少しの気持ち、がんばれっていう、悟空を応援する気持ちだけでよかったと思うんだけど、ここでの場合はこの人たちが怨霊を倒す!っていう強い意志がないとダメなんですよね!?
どうするやろ。お金だとたぶん弱いんですよね。事態をわかってくれて、協力してくれる人。人のために身を投げ出すことが苦でない人。どう集めればいいの???
花城はゆっくりと答えます。「哥哥、もし死体が必要なら貴方が望むだけ持ってこれる。強要された生きた人間でも簡単だ。でも、志願者は簡単じゃない。人界には俺を鬼王として信仰している人間がたくさんいるけど、彼らは恐怖から、もしくは俺から何か欲しくて従っているんだ。彼らに強いたり薬で操ることはできるけれど、その方法じゃ哥哥の探している人々には作用しないだろう。ごめん」
「謝ることじゃない。別の方法を考えよう」と謝憐は言って都の中を歩く二人。花城は「人が集まっているところがある」というので向かってみると、僧侶や道士がたくさんいて、そこには天眼開がいるではありませんか!生きてたんだね、よかった〜!
しかしここでの勧誘は失敗!なぜなら、謝憐の「隠し武器」たるミートボールが彼らをひどく痛めつけトラウマだったため、従ってくれませんでした。結界を強化したい旨は伝えたんだけど、みんなが二人を信用してなかったので。それに、人面疫のことはこの時代の人たちはほとんど知らないみたいなんですよね。なので、危機感もうまく伝わらない。
「時間の無駄だよ」と促されて、謝憐はその場を離れます。
「スラムに行ってみよう」と花城が言って、王都のさびれた区画に向かいます。廃寺を見つけて入ってみると、そこには行き場をなくした人々がひしめき合って寝ていました。たった道路一本で隔たれた場所に、貧しさや病が詰め込まれていて、謝憐は心を痛ませます。
が、時間がないのでとりあえず勧誘。
「助けてくれたらすごいいいことがある!」って言うんだけど「金か?」「一体どんないいこと?」と返されて言葉が出ない謝憐。花城が力尽くに出ようとしたのを察知したのでそれを止めます。ここにいる人々は70人から80人いて、助けを得なければならないのです。
そこへ、「みんな、聞いて、みんな!聞くんだ!争わないで!彼が話すことをまず聞こうじゃないか!」と足を悪くした青年が言い出し、彼のおかげで謝憐は手のひらの間に灯りをともしてみんなに説明します。
「悪い魔法か?」「悪い魔法じゃない、霊力だよ。これは証明だ、私の言葉が真実だってことの。この王都の周りには凶悪な魔物が取り囲んでいて攻撃を加えようとしている。私たちは五百人の志願者が必要なんだ。王都を守る結界に傘下してほしい。誰か、来てくれる人は?嘘じゃない、危険なんだ。無理強いはしない。志願してくれる人だけに来てほしい!」
しかしこの説明で手が上がるわけもない。
それに、こんな声が出てきます。「王都を守る?放っておけ」「王都が俺たちを守ってくれないのに、どうして助けなくちゃならないんだ?」
確かにその通り!
「もし魔物が王都に侵入してきたら、恐ろしい疫病が広がる。みんな感染してしまう」と説明しますが、「今の私の体よりおそろしい疫病なのか?」「そんな疫病があるなら逃げた方がいい。ここにいることはない。別に素晴らしい場所ってわけじゃないんだから、ここは」「高貴なお方に頼んだらどうかね。ここにいる私らなんかに頼むより」と、ごもっとも!という意見をもらいます。
謝憐は「わかった。邪魔をしてすまない」と行って廃寺を去ります。「心配しないで。人々を動かそう。疫病の話は広まるだろうから、すぐに探せるよ」と安心させる花城。うーん、どうかな。
謝憐自身も500人集められないとは思ってはいないけれど、できるだけ早く集める必要があり、待ってはいられない状況。どうして、集められる自信があるのかわかんないけど…
そこへ、足を悪くした青年が「待って待って待って!私も行くよ」と追いかけてきます。「君たちが探してるのって、生きてる人間でいいんだろ?足が悪くてもいいよね?」彼は片腕もないのです。
謝憐は志願してくれたことに胸が熱くなり「もちろん!」と答えます。
「ついてきて!」と青年は廃寺に戻ります。そこにいた乞食たちはみんな彼を心配して「行くな、危険だ」「泥水に入ることはないよ、風さん」と呼びかける。それを聞いて謝憐は「もしかして、風師!?」と気づきます。
乞食の青年は顔を隠していた髪の毛を手で結い上げて「私を捕まえたね、殿下!」と正体を明かします。頭をかきながら「汚くしてちょっとの間身を明かしたくなかったんだけど、殿下の目がそんなに鋭いって思ってなかった。あはは、それとも私の美しさが忘れられなかったからかな!」と以前の風師・師青玄の変わらぬ明るさを見せてくれます。
ここ、本当に嬉しい…。元気でよかった!
「風師」「私はもう風師じゃないよ」「わかった、師青玄。あなたに一体何が起こったんですか?」「あー、とても長い話になる。これがあれで、そこがあそこで…それで、今こうしてるってわけ」
このやりとりを聞いていた廃寺の人々は「なんだ、知り合いか!」と一気に打ち解け、「こいつの友達ってんなら手伝うぜ!」と仲間になってくれます。師青玄の人望に感謝ですね。そして、終わったら鶏の足とスープが振る舞われることを約束して、他の人もさそってゆきます。
黒水とはどうなったのか、腕と足がないのは彼のせいなのかを尋ねると、「彼は何もしていないよ。これは、どうやって説明したらいいのか…とにかく、彼じゃないんだ。運が悪くて、自分のせいでこうなったのさ」と説明します。
「あの日、私の霊力は全て吸い取られて、あなたを助けられなかった。本当にすまない」と言うと「あなたには何もできなかったと思うよ」と師青玄。
何が起こったかというと、黒水は師無渡を殺した後、魂が抜けたようになった師青玄を王都に放り出した。師青玄はもともとこの界隈に詳しく、名前を隠してここに住むことにした。そして霊力をなくしていたので、展開は誰も探せなかったというわけなのです。あれから黒水の姿を見ていないそうです。
そうこうするうちにたくさんの人が集まってきて、200人以上が参加してくれることになりました。師青玄がいなかったらどうなっていたんだろうね!
謝憐は彼らに王都の大通りに大きな輪を作らせます。
「あの悪霊たちは王都には入ってこれないんだよね、こうして手をつないでる間は」と師青玄が尋ねると「いや、彼らは入ってくる」と謝憐。そうなの!?
「この陣をどうやって使うんだい?」「これは罠だ。いったん王都の結界を突破しても、この陣を設置している限り、怨霊が街中で暴れまわることはない。その代わり、このサークルにおびき寄せられる。そうすれば、奴らを捕まえることができる」
……殿下の作戦って私には不安ばっかなんだけど〜!!!
というところで次章に続く!