嫌〜な予感しかしない114章のスタートです。
鏡に映っているのは傷ついている権一真と引玉。引玉は権一真を起こします。「師兄…? 誰が私を打ちのめしたの?」と尋ねます。そして、君吾にやられたことを思い出す。「そうだ、帝君があなたのシャベルを奪ったんだ。私に取り戻してほしい?」とさらに尋ね、「彼に勝てると思ってるのか?」と返す引玉。鏡に映っているのは奇英殿の中でした。
君吾が謝憐の後ろに回ったので師青玄に「そこにいる?」と口だけ動かして尋ねますが、「もちろんいない」と君吾に答えられてしまう。
移魂大法を謝憐に教えたのは君吾だから、それを封じる手も当然知ってるってわけ!全然勝てねえ〜!!
君吾は謝憐の前からは姿を消し、鏡の中に現れます。すぐに戦闘態勢をとる権一真でしたが、一撃でのされてしまい気絶してしまいます。
「そなたとは親しく話したことはなかったな」とやさしく話しかける君吾。力も弱くて位も低いから神武殿に入れたこともなかったのは、花城が見せてくれた過去の通り。
引玉は「私に話しかける神官はほとんどいません」と返す。
「しかし、多くのものが知っている。そなたにあったことがなくてもな。そなたの師弟は知られていて、彼が話題に上る時、そなたのことも話されている。引き立て役として」と言う君吾。
ア?ケンカ売ってんのか??
君吾って毒マロ送るのうまそうですよね。しかも匿名ツールも使わなさそう。神官がゴシップ好きなの、完全にトップに由来してるやん。
君吾の真意はどこにありなにを企てているのか訝しむ謝憐。
引玉も「何を私に求めているんですか? あなたはすでに天帝で三界一の武神です。天地に至るまであなたに比肩するものはいない。なぜこのようなことを? 何が目的なんです?」と、謝憐と私が聞きたいことを全部聞いてくれます!でも答えてくれない君吾。なんやねんこいつほんまに。
かわりに「上天庭に戻りたいか?」って聞いてくる。
ハー!?かわりにこたえたるわ、嫌ってな!!!
「鬼界の駒になりたいわけではないだろう」と君吾。
ハー!?引玉は血雨探花のもとでイキイキとしてましたけど!?
引玉がどんだけ銅炉山の土掘ったと思ってんねん!!!英語版ではYes, sir!言うとったわ!(たぶん)
引玉も馬鹿正直に「いや、好きとか嫌いとかではなかった」と答えます。君吾は「そのような答えの意味するところはいつも「嫌だったしそれについては話したくない」ということだ」と曰います。…そうなの?単にあんたと話したくないだけなんだと思うけど。質問にも答えねえしよお…
で、引玉は「じゃあ、鬼界で働くのは好きでした」とはっきり答える。
…引玉のその姿勢は私も誇らしく思うんだが、悲劇の始まりになりませんか、これ?
君吾は、引玉が以前は飛昇は誰にでもできることではないと言っていたこと、そうならば鬼界に落ちることは不幸で、今の立場に満足しているとは言えまい、そこは本当に望んだ場所ではないだろうと諭してくる。
引玉は「城主は親切でした。私を守ってくれました」と答える。
この答えで正解なの? こわくない? 嘘も方便っていうので、多少偽ってもいいのでは!?
「もちろん知っている。彼は鑑玉の怨霊からもそなたを守った」と君吾。
鑑玉は引玉の追放の後に死んで、怨霊になったらしい…。つらすぎ。
引玉は「ともかく私は満足しています」と言うのに、そんなはずはないと言ってくる君吾。鬱陶しいな。さすがに。
「では他のことを尋ねよう。そなたは権一真に親切にしたことがあったか?」
花城が親切にしてそれに対してのお返しとして望まない立場にいたり、身を捧げるのはおかしいだろう、権一真に親切にしても居場所を奪われたのに、とたたみかけてきます。
問題のすり替えが甚だしいな。
修行をして飛昇にいたり、上天庭で地位を得て神武殿に集うだけの位が欲しかっただろう、しかし権一真が引玉を天界の笑い物にしたとさらに言ってくる。
まあ、お前の価値観による理論だとそうなるんだけど…天界というお前が作った社会の中での常識からするとそうなんだろうけど…。そういうこと言ってくるから謝憐には絶対に勝たれへんのやろ…て思うんやけど…
で、権一真よりはるかに人間ができているし、自分の方が天界にいるのがふさわしいと思わないのかと詰めてくる。権一真と同じくらい霊力が強ければ彼より高みに行ける、と。
引玉は「陛下がなぜそのようなことを言うのか、理解できません。全て無意味です。権一真の霊力は彼のものなんですから」と真っ当なことを言ったら、突然手が光ってすごい霊力が漲ってくる。
「なんなんです、これ!?」「恐れることはない、ほんの少しの霊力だ」「誰の?私のものではない…」「まだそなたのものではない。しかし、いずれそなたのものになる。選んだ道によってな」
つまり、この霊力は権一真のもので、君吾が引玉に少しだけ移したらしい。引玉は霊力を振り解こうとしたら、すごい力が発されて奇英殿が破壊される。引玉は手を振り回すのをやめます。
君吾は笑って「神経質になるな。ゆっくりコントロールできるようになりなさい」と伝える。
これってクーリングオフできないんですか!?
「引玉、もう一度尋ねよう。戻りたいか?」
これに、引玉は深く呼吸をし、目を血走らせます。そして君吾を睨む。
「戻りたいなら、呪枷を外すだけではなく、権一真の霊力をそなたに移してやろう」
そうすれば、誰もが奇英ではなく引玉の名前を覚えるだろうと告げます。
謝憐は我慢できなくなり、若邪で椅子に縛られているのも忘れて前へ行こうとします。
引玉と権一真の間には第三者にははかれないものがあり、彼がどう答えるかわからない。
引玉は「本当に彼のすべての霊力を私にいただけるのですか」と問う。権一真が目を覚ましてうめきます。
君吾は「今与えよう。私が何ができるか、すぐにわかるだろう」と答えます。引玉はまだ悩んでいる様子。
「戻せるのですか?彼が望んだ時に」「そなたが不本意に返さない限り不可能だ。あるいはそなたが死なない限り」
どういうこと? 結局引玉の自由意志では戻せないってこと?
「彼の霊力が移されたら、権一真は死ぬ?それとも、他のことが起こるのですか?」
引玉は権一真が死ぬことを望んでない。
「何も起こらない。痛みはともなうだろうがそれだけだ」
ほんまに??? お前はたくさんの嘘をついてるんだぞ。
で、引玉はさらに、他の神官はどうするのかと問います。
ここで起こったことはみんな知っていると告げると「他の神官などアリのようなものだ。片手で払い除けられる。全滅させて新しい神官を揃え、そなたは顔も名も変え、新しい経歴を作ればよい」と無関心に言う君吾。まるで、冷たくなったお茶を新しいものに入れ替えるみたいに言う、と地の文。
「新しい上天庭では私はどのような立場に?」「霊文は私の左腕になるだろう。そなたは右腕だな」
引玉は歯を食いしばり「いいでしょう。陛下が今日の私との約束を覚えていてくださいますように」と言います。
「そなたの望むままに」と言った瞬間、権一真の体が激しく震えて、毛穴から血が噴き出し、頭をおさえながら床をのたうち回ります。引玉の体は光り輝き、手を上にあげただけで奇英殿の天井に穴が開く。
君吾は新しいおもちゃを手に入れた子供のように喜んで「どんな気分だ?」と尋ねます。
「このような強い力を持ったことはありません」と引玉は言って、床で苦しむ権一真を見ます。「私の師は、権一真は飛翔するために生まれたのだろうと言っていました。彼の能力は天からの贈り物だと。天の贈り物はこのように感じるのか…」「今からそなたのものだ」
そして、引玉は君吾に向かって攻撃します。が、君吾はよけて、引玉をつかむと権一真に叩きつけます。
「なぜ約束を違えたのか、説明を。そなたがやっていることは賞賛に値する。男の中の男だな。これが本当にやりたかったことか?この数百年の間、耐えてきたことをこれからも続けると?今、そなたが守った者を憎んでいないのか。憎んでいなくとも、迷惑ではないのか」
この問いに対して引玉はついにキレ散らかします。
「迷惑ですよ。だからなんです?陛下…いや、もう陛下ではない。あなたはなぜそれをいちいち私に思い出させるんです?私のことをわかったように話して。もちろん憎んでいる。だからなんだっていうんだ。彼は私に面倒ばかり起こして、憎まないわけないでしょう」
鏡の前で沈んでいた謝憐は心が軽くなり空に浮かび上がったような気持ちになる。
「でも、私はただ、ただ憎みたいだけ彼を傷つけたいわけじゃない。私のものであるべき?それがなんだ、生まれつきの才能以外に生まれつきのものなどない。他の人のものは欲しくない!」
引玉の言葉を聞いて「よく言った!」と謝憐。引玉、かっこいいよー!!
「私は天界に戻りたい。私は十位(十武神?とでもいうのか?)に入りたい。しかし、自分自身の力でなければ無意味だ。私は不運だ。それを受け入れよう。私が彼のように力強くなくても、私はそれを認める。比較できないことを認めるのはそれほど難しいことではない!」
謝憐はこのときの引玉が輝き、その中に彼が若かった頃の燦然たる勇気を見ます。
権一真は泣き出して血も涙も引玉の顔にかかる。
「やめなさい」と怒鳴りますが「師兄、ごめんなさい」と謝る権一真。「謝る必要はない。君がどんなにごめんと言ったって、わかっちゃいないんだから。正直言って君にはもうたくさんだ」とぶった斬る引玉。
君吾はため息をついてこめかみをもむ。
「それに、私もまったく役に立たないわけじゃない。あなたが言ったんだ。総合的な能力という点では彼は私に及ばないかもしれない…」と話している途中で奇妙な音がする。
「爽快だ。そなたと仙楽は仲がいいにちがいない」
謝憐は嫌な予感がします。引玉はしゃべるのを止めて、表情がおかしくなる。
「そなたがそのような行動をとることを予想していた。だから、呪枷をはずさなかったのだ」
君吾の言葉とともに、引玉の腕にまだあった呪枷が縮んで腕を絞っていく。引玉の血を吸っているのです!
嘘つき!!!!!
引玉の顔はまっさおになり、謝憐は前に進もうとしますが椅子が倒れて鏡も見えなくなってしまいます。鏡からは殴る音だけが聞こえてくる。君吾がこちらに戻ってきて、手には引玉の血で深紅に染まった呪枷が。
「そなたのちっぽけな友人に別れの挨拶をするといい」
若邪の結び目はほどけて、謝憐は這いずったまま君吾の顔に拳をたたきこもうとしますが、距離が足りず届きません。武闘派の殿下、この上なく頼もしい!早く血反吐をはかせてやってくれ!顔もぼこぼこにして!足と腕全部折って!膝の皿は粉砕させて!!(殿下、ここまでしてくれるかな?)
謝憐は奇英殿に走ります。権一真は顔がわからなくなるくらい殴られていた。霊力は戻ったようで、それはつまり、引玉が死んだってこと…。
「引玉殿下!」と呼びかけると、「殿下…」と弱々しく返す引玉。まだ生きていた!
「ごめんなさい、師兄、私はどうやって戦えばいいかわかっているのに、くらわせられなかった」
口と鼻から出た血がまた引玉にかかって権一真に「やめろって言ってるのに」と怒鳴り、「いい、忘れて、私の死を見送ってくれ」と最後の力を振り絞って言う。
彼は涙を浮かべて「知っていた。一真は天才で私は凡人だ。高いところまでしか登れなかった。わかっていたんだ」
無力さが謝憐の胸を刺します。
「知っていたのに、受け入れられなかった。本当のところ、鑑玉と同じ気持ちだった。彼よりもっとイライラしていた。憤りがなかったわけじゃない」
彼はぽつりぽつりと話します。
「あの事件のあと、錦衣仙を着ているのを知っていたのに、なぜ彼に死んでしまえと言ったのか、振り返る気になれなかった。私はただあの時、錯乱していたのか、それとも本当に望んでいたのか…」
謝憐は引玉を抱きしめます。
「いいんです。もう終わったことだ。全て小さなことだよ、本当に。引玉殿下、もしこの世界にあと数百年生きたなら、そんなことはどうでもいいことがわかる。狂気に駆られたって本当に望んでいたって、世界で誰がそんなことを考えるんです? 私はかつて私に不義理を働いた者たちを皆殺しにしようとさえ考えたことがある。本当だ、嘘じゃない。私はほとんどやったんです。でも、見て、私はまだここにいて、恥知らずにも生きている。結局、あなたはなにもしていない。そして、それがとても大事なことなんだ」
「でも結局、私は考えてしまう…不公平だと…」
引玉は弱々しくつぶやきます。
「私が完璧になれない運命でも、誠実でありたかった。なのに、それができなかった。本当に…不公平だ。実のところ、まだ乗り越えられていないんだ。この後に及んでも。ただ、死ぬと言う事実が飲み込めない…この、一真っていう小骨のせいでね。恨みや後悔なしに手放しで死ぬこともできない。なんてこった」
「殿下、あなたは十分よく働いた。そして、とてもよくやりました。十分です。あなたはすでに他の人たちよりもずっとずっと優れている」
「他の人たちよりも優れている?」
引玉は小さく苦笑いをします。
「でも、私は神になりたかったんだ…」
ため息とともにつぶやく引玉。謝憐は深く頭を下げます。
「引玉殿下…この世界には真の神はいないんです」
115章に続く!