あけましておめでとうございます。
私には小学1年生の姪っ子がいてNHKでやってたアニメ版にハマっていたらしい。そして、私の両親も姪っ子と一緒に観てハマったらしい。実写版もめちゃくちゃ面白いらしいよと、私も職場の人から聞いていたので、今日、姪っ子と妹と三人で観てきました。
細胞の擬人化の話だよな…って知識しかなかったけど、めっちゃ面白かったです。ほんと映画としていい時間だったので、興味が少しでもあったら見に行くことをおすすめします。
さて、なぜ面白かったかを説明すると私のフィルターがかかって陳腐になってしまいそうなんですけど、書き残しておきます。
物語はまず、赤血球と白血球の誕生から始まります。骨髄で生まれた赤血球(永野芽郁)は赤血球になる前に教育を受け、細菌だかウイルスだかに襲われそうになります。が、そこを助けてくれる、まだ白血球になる前の白血球(佐藤健)。二人はお互い立派な赤血球と白血球になることを約束してそれぞれ成長(?)し、晴れて体内に送り出されます。
で、この赤血球と白血球のからだの主は、高校生のニコという女の子(芦田愛菜)。ニコは父子家庭で、トラック運転手の父(阿部サダヲ)と暮らしています。幼い頃に母親を病気で亡くし、お医者さんを目指しています。阿部サダヲは不摂生な暮らしをしており、ニコは父の健康を心配しながら、気になる先輩(加藤清史郎)もいつつ、平和な毎日を送っています。
物語はニコの体内と時々阿部サダヲの体内、それから実体の時の流れとともに進む。
成長した赤血球はニコの体内で酸素を運ぼうとするも、体内は外敵に襲われていて危険がいっぱい。そのたびに白血球が現れて助けてくれたりします。なんとなくストーリーはラブ的なものをにおわせているような気がしないでもないんですが、体内の細胞同士の恋愛って成立すんのかな…?同じ細胞から生まれてるよな…。二人は再会したけどお互い約束した相手かどうかわかってない。
外敵(肺炎球菌とかインフルエンザウイルス)が入ればマクロファージ先生(松本若菜)が連絡してヘルパーT細胞(染谷将太)が命令を出しキラーT細胞(山本耕史)と白血球がウイルスを殺すために現れNK細胞(仲里依紗)が自由に動き回って異常細胞を攻撃する。
ニコが先輩に出会ったらアドレナリンが分泌されてDJ KOOが登場して体内がフィーバータイムに入ります。DJ KOOは神経細胞なのです。
ニコがこけて膝をすりむいたら、体内は爆撃を受けたような状態になります。血小板が現れて傷をふさぐ。
この細胞たちは全て擬人化されているんですが、動きがすばらしくて、体内でどのような動きをしているのか、視覚的にわかりやすくなってるんです。この表現方法、ほんとに感動した。
特に、血小板が現れて傷をふさぐさま、カメラが引いていくんですけど、そこのカットが、そのものではないんですけど、仕事でよく見るグラフィカルアブストラクトの絵そのままやんてなって、擬人化した細胞を使って描けるんだっていうのがねえ…。演出すごいよ!
さて、ニコは順調に先輩との恋を育みますが、阿部サダヲの体内はとんでもないことになっています。いわゆる成人病の身体は細胞にとってはブラックな職場。阿部サダヲの体内の赤血球はひどい目に遭います。酸素を届けようにも血管の中は動きづらく、弁がかたくなっていて通れないところもたくさんある。
ここでも、「あっ、これ、作ってる医療用の動画で見たことあるやつ…!」てなって、思いも寄らぬところで結びついて勝手に楽しくなってました。こういうわかりやすさ、使いたいよな…。
阿部サダヲの赤血球の新人と先輩はなんかよくわかんないねっとりした関係なんですが、これは主に先輩がねっとりしてるからで、この荒廃した体内ではたらく意義も失いつつあり、自分たちの末路を肝臓で知ったりして、悲哀に満ちています。肝臓はキャバクラみたいになっていて、肝細胞(深田恭子)が解毒してくれるんですけど機能も低下していて、ここにきた細胞たちはみんな死を待つのみ…。
そうはいっても赤血球の使命は酸素を運ぶことなので、新人くんと先輩はえっちらおっちら肛門に酸素を運び、次なる行き先の睾丸を目指しますが、そこで、下痢による内括約筋と外括約筋の攻防を目の当たりにします。
前職で赤ちゃんのからだの仕組みについて学んだことがあったんですが、人間ってめちゃくちゃ未熟な状態で生まないとダメらしいんですよ。頭が発達しちゃってるから、ある程度身体の機能が成長してから産むと、頭がでかくて母体が耐えられない。なので、他の動物と違って、外からのお世話が必要な状態でしか生まれてこれないらしい。
で、脳も発達してないから赤ちゃんは自分の意思で動いたりすることがまだできない。が、その中で腸だけは脳の指令を受けない。なぜなら、排泄が必要だから。
という、ざっくりした間違ってるかもしれん知識を持っていたので、ここでも興奮しました。そう!脳の指令を受けるのは外括約筋だけ!
あと、私も腹を下すことが多いので、ここは他人事じゃなかったな…。これからは相撲取りが内括約筋、ラグビー選手が外括約筋て思って過ごすことにしよう。押し出す相撲取りと守るラグビー選手って構図もよかった。
ここで、赤血球の新人くんと先輩は涙の別れをすることに。先輩は排泄物といっしょに流されてしまうのです。うっうっ、先輩…。まさかうんこと一緒にいっちゃうなんて。
阿部サダヲは不摂生がたたり、この下痢を経験した後に倒れてしまいます。ニコはめっちゃ怒る。阿部サダヲも反省して生活習慣を改めます。
ここがね、また泣けるんですよ。阿部サダヲは娘を医学部にやるために、運送会社の社長に頼み込んで出勤日数を増やしてもらってんの。で、お金をずっと貯めてて、彼の過酷な生活の娯楽が飲み食いなんですよ。でも、娘のために健康にならないとな、と見直す。体内の環境も改善されていき、スラム街みたいだったのがちょっとは過ごしやすくなるのだった。
阿部サダヲが倒れた日、ニコは先輩とデートしてて告白されて付き合うことになってハッピーだったけどそんなことになっちゃってハラハラしたものの、健康になってよかったよかったと思っていたら、今度はニコの体内で異変が起こります。
なんと、ニコは白血病を発症してしまうのです。
原因(?)は白血球(佐藤健)に憧れた白血球志望の細胞が才能がないと排除されそうになり闇堕ち(?)して白血病細胞になってしまったのです!
ここからが体内でもニコの生活でも過酷になってきます。とにかく、白血病細胞はどんどん増殖する。骨髄で正常な細胞が作られないから身体も衰弱し、さらに増殖が加速する。
現実では、抗がん剤が投与されます。抗がん剤は副作用があり正常な細胞にも影響を与えてしまう。ニコはどんどん衰弱していきます。造血できないので、酸素を運ぶ赤血球が激減し、他の細胞も酸素がもらえず弱っていく。
体内ってこんなことなってんの!?と、もちろんシーンはフィクションなんだけど、細胞のはたらきを目の当たりにしてショックだったな。
抗がん剤でもがん細胞はどうにもできず、とうとう放射線治療と骨髄移植をすることになるニコ。阿部サダヲと先輩はニコが元気になるよう、たくさんはげまします。ニコの身体のことだから、どうにもできないんだよね。ここ、泣けてきてしょうがなかった。阿部サダヲが「なんで俺じゃないんだ」って言うんだけど、大切な家族が治らないかもしれない病気にかかったとき、願うことしかできないし、無力だって痛感すると思う。でも、元気になってほしいって、幸せになってほしいって、阿部サダヲは先輩と一緒にニコを笑わそうとする。私もスクリーンの外から祈ってたよ…。
さて、放射線を浴びたニコの体内はどうなるかというと、文字通り焦土のようになります。今ある細胞を死滅させて骨髄移植をして造血させる。それしかない。
体内では、白血球(佐藤健)に憧れていた白血病細胞がNK細胞(仲里依紗)を倒しキラーT細胞(山本耕史)を倒し白血球(佐藤健)を倒す。骨髄に酸素を送り届けようとした赤血球(永野芽郁)も白血病細胞に殺されそうになりますが、まだ死んでいなかった白血球(佐藤健)が助けにきてくれて白血病細胞を倒す。
……しかし、白血病細胞を倒したところでニコのからだの中の細胞はもうボロボロだからどうにもならんのだけど!
赤血球(永野芽郁)は最後の最後までがんばって酸素を、まだ動く細胞に届ける。このからだを生かすために、ずっとはたらきつづける。それが仕事だからと、酸素を送る。
そうして、骨髄移植が行われ、ニコは寛解。焼け野原となった体内には草花が芽吹き、新たな血液が作られていく……。
目覚めたニコに阿部サダヲは「また血が作られるようになったって」と嬉しそうにつげ、ニコはずっと治療に携わってくれたお医者さんと看護師さんに御礼を言いますが、お医者さんは「一番頑張ったのはニコちゃんのからだだよ」と告げます。
そう!!!!そうなの!!!!!薬も治療も補助にしかならんくて、最後の最後にニコの命をつなぎ止めたのは、ニコのからだなんだよ!!!!!
てことが、すんなりわかるストーリーで、物語おもしれ〜ってなってました。
これまでのニコのからだにいた細胞たちはいなくなってしまいましたが、新たな赤血球と白血球、その他の細胞がどんどん生まれて、外敵とたたかって生命を維持しようとはたらく。物語の最初からいた赤血球と白血球ではないんだけど、同じ…みたいな、転生を感じさせる話の終わりも、私は好きでした。
からだの中ってまさに一つの宇宙で、複雑に、単純に、機能を維持させている。現実に起こっていることですが、擬人化して描くことで非現実にも見せてる。それが、マジックリアリズムっぽいなって思って…。
出てくる役者がみんないいよね。そして白組の技術。全てをリアリスティックに大真面目に描いているし、からだのはたらきに嘘がないから、見た目が奇抜でも全然気にならない、むしろわかりやすい。嘘と真の境界線がすごく曖昧で、それがいい味になってるなって思うんですよ!
NK細胞が仲里依紗だってわかってめちゃくちゃ嬉しくなったし、キラーT細胞が山本耕史なの笑った。そしてヘルパーT細胞の染谷将太…。キャラ的にはこのヘルパーT細胞が好みだった。アドレナリン出たときに制御不能になってんのおもろかったし。やさしいマクロファージ先生がばりばり武闘派だったのもかわいくてかっこよくて好きだった。
スタッフロールで「片岡愛之助」の名前を見て、どこにいた!?あれ!?と冒頭を思い出した。もっと外敵をいろいろ見たかったなあ。完全に特撮の怪人だった。
映像の表現が素晴らしいこと、それから物語の構造がうまいこと、そして何より、シンプルな、家族に健康でいてほしいっていう願いがこもっていて、好きな映画になりました。円盤が出たら買うぞ〜!