天官賜福 英語版 7巻117章&118章① メモ

A4(えーよん)
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116章のメモを書いた後、メモ用ではなくふつうに読んでしまって、118章の熱量すごいなあと思ったのだった。そして、先ほどもうすぐ邦訳3巻が出るから邦訳1巻を読み返してたとき、プロローグがこの物語全てをすでに語っていて感動してました。

魔道祖師も人渣反派自救系统もそうだったんだけど、2周目からが理解して読むからより面白いというか…深く知れていくのがすごいなと。なので何度読んでも面白さが更新されていく感じがする。

でも、面白い話って全部そうかも。一度でわかることはなくて、いろいろな面を見せてくれるものなのかもしれません。

■117章

さて、錦衣仙をとっかえひっかえしてみたものの結局見つからず、謝憐は元の白い道服を着ます。タンスに服を戻していると霊文が入ってくる。彼女はすぐさま通霊を使おうとしますがそれより早く、小部屋に結界を張って使えなくする花城。さすが!!!

謝憐は錦衣仙を本当の意味で質に取り「燃やされたくなかったら動くな」と脅しますが、霊文はどこに錦衣仙があるか見えるので「あなたの手の中にはありませんよ」と笑います。

なんと、謝憐が服を脱いで黒い外衣を着て花城とイチャイチャしてる隙に、本物の錦衣仙は謝憐の白い服に擬態し、そして脱ぎ散らかした外衣をせっせと元の謝憐の服にかぶせて隠して、自分を着せたのです。かしこいな。

錦衣仙て、ほんとに鮮血とかドクター・ストレンジのマントくんみたいで愛おしくなるんですが…。相当の人数の人、殺してるけど〜。まあ、それで言ったら、この話に出てくる登場人物全員そうだから、そこまで気にしなくていいのかも?

となると、私は君吾を許さないといけないのだろうか。いや、絶対ゆるせねえ…。私が君吾をゆるせないのは人を殺したからとか、そういうんじゃないねん。でもこの話すると長くなるからまた今度にします。

謝憐は「布なのに狡猾!」と呆れますが、この場合、服を着せたのは霊文になるので、謝憐は霊文の命令に従うことになってしまいます。さっきは作用しなかったと言いますが、霊文の疲労度によるものらしい?ここ、よくわかってない。

ともかく、霊文は「もうあなたがたは私を攻撃できませんよ。私の声が聞こえたなら頷いて」と言う。頷く謝憐。きいてる〜!

霊文は花城に結界を解くように言います。そして、もし自分を傷つけるなら謝憐に花城を攻撃しろと命じます。このときの結界を解かせる理由が「めっちゃ仕事たまってるから戻らないと」なの、泣けてきます。ほんとに君吾の元で働いてて幸せなんか?それでええんか?

しかし花城は結界を解かず、霊文に銀蝶を使って声を奪い身動きも取れなくします。彼女はすでに命令していたので謝憐は渾身の力で拳を花城にたたき込みます。謝憐は打ち込んだ後、花城が彼の手首をつかむまで動けなくなってしまう。

「これで攻撃は終わった。命令は解かれたね」

このために花城は攻撃を抵抗せず受け止めたのです。かっこよすぎ。しかし謝憐にとっては喜ぶべき事ではありません。

「痛い?」「哥哥は本当にすごいね。とても美しい一撃だった」と笑いながら言う花城に謝憐は動揺します。「冗談じゃないんだ。私は自分の全力の四分の三の力を使った。本当に大丈夫なのか?」「冗談じゃないよ。あなたは素晴らしい。呪枷がなければ君吾だって相手にならないかも」と賞賛します。

殿下って、自分から攻撃したことはないらしいんですよね。自分を守るためか、相手を取り押さえるためにしか使ったことがない。…朗英や白無相はノーカンなのか?

「呪枷を外すチャンスがあったのに、何故そうしなかったの?」と問われて、謝憐は予想もしなかった問いかけに「私自身に何かを思い出させるため。三郎、話を変えないで。なんて悪い癖を身につけてしまったんだい? 君はただ私を抑えるだけでよかった。何故そこに立って受け止めたんだ」と返します。

「あなたは悪い癖って知ってたんだ」と花城。「あなたには俺に説教する権利はないよ。殴られることに関してね」「そうかな」と言う謝憐は罪悪感を覚える。水中で胎児の霊と戦ったとき、彼は剣を飲み込みそうになって花城に現場をおさえられているので。

「そうだよ。なぐられることで問題を解決できるなら、なぜそれ以外の方法を使うのか。あなたの悪い影響だね」「わかったよ。三郎、この話はもうしない」

謝憐は分が悪いですよね〜自分を大切にしないからね〜。

問題は全然片付いてなくて、謝憐は錦衣仙を脱げなくなってしまうのだった。

■118章

錦衣仙を処分するには燃やさないとダメなのですが、今となっては謝憐もろとも燃やすことになってしまう。なので、「血は吸わないだろうし霊文も命令できないから着ておくしかないか」とあっさり諦める。

霊文は不倒翁にされるんですが、人形になっても巻物を持って深刻な表情みたいなので、ほんと、ワーカホリックよくないと思うよ。それを服に入れて大広間に行くと、霊文殿は前よりもっとひどい様子。本当に仕事がたまりまくってたのだった。っていうか、仕事できるやつ天界にいねえだろ!武神ばっかり引き立てやがって!!

霊文がエクセルのデータ消してとんずらこいたらどうなると思ってんの!?て思ったけど、一回それやったからこの有様なんだよな。今風の言葉で言うと、レジリエンスのない天界なのであった。マジで君吾、運営する能力ないよ。

宮殿の心臓部に近づくと、国師の「こんなことが…どうして起こる!?」という震える声が聞こえてきます。何事かと部屋に飛び込むと、ほかの三人のひととカードゲームをしている梅念卿!しかもその三人は紙人形!

そう、梅念卿は重度のカードゲーム中毒者でとらわれの身であるくせに紙人形で相手まで作ってカードゲームをしていたのだ!!!

「このターンだけ!次は絶対勝つ!」というかなしき叫びに対して「勝てませんって」と止めようとする謝憐であったが、結局最後の回は負けて終わるのだった。

「君が来るだろうと思っていた。待っていたよ」と居住まいを正して迎える梅念卿。絶対待ってなかったやろ!と思う謝憐であったが、目上の人を敬う精神で何も言わないでおく。この、シリアスとギャグのテンポのコントロールどうなってるんやろうな。おもろすぎる。

「君がたくさんの問いかけを持っていることを知っている」

そう切り出されて、謝憐は国師の前に座り、花城はガードするように部屋の扉の前に寄りかかります。

「そうですね。まず私が確かめたいのは、君吾が、彼が白無相なのか。そして、烏庸国の太子なのか」「疑いようもない。その通りだ」「私は太子と何の関係もない。これも合っていますか?私たちは全く違う人間だと」「たった一つのつながりは、太子が君の生まれた国である仙楽国を滅ぼしたことだ」「しかし、師匠は白無相を知らないとおっしゃっていました。そして、彼が生まれた原因が私にあると」「あの時私はアレが何か知らなかった。最終的にわかったが、すでに遅かった。しかし、彼が生まれたのはあなたのせいだと言ったことは間違っていない」「どういう意味なんです?そして、なぜ彼は仙楽国を滅ぼしたかったんですか?」

「それは君が言った言葉のせいだ」「渡した言ったこと?どんな?」

「身在無間、心在桃源」

「それだけ?」「それだけだ」「その言葉が…?一体何の問題が?」「全てだ。全ては君のその台詞から始まった」

国師が何を言っているかわからず、謝憐は花城に助けを求め、花城は彼の隣に座ります。圧倒的安心感!

梅念卿は銅炉山の壁画は彼が作ったこと、新しい鬼王が生まれるのを防ぐために銅炉山が開くとそこへ仲間とともに行き、壁画で烏庸国の太子のことを伝えようとした。

「なぜそんな回りくどい方法を?直接話せばいいのでは」と言うと「なぜ、知っているものが誰もいないのだろうか」と逆に問いかけられます。

「知っているものはみんな消された。そうだろう?」と花城。

直接話したりあからさまな手がかりを残せば自分の身が危ない。知ったものは絶対に破滅する。彼は何人の命を絶とうが気にしないし、その気になれば三日で街を更地にできる、これは大げさではないと国師は言います。

皮肉なことに、過去には謝憐は感謝したことさえありました。君吾が鬼界に落ちたのではなく、天界に飛昇したことを。もしそうでなければ世界は混沌としただろうと。

その混沌を作っている張本人だったが…。

まあ、そんなわけで、いつか勇気があって思慮深い人がわかってくれるかも!という期待をこめて、天に運を任せて梅念卿は身を隠していたのだった。今回つかまったのは、彼が残した壁画が見つかって、その壁画のおかげで謝憐が白無相の正体=烏庸国の太子を言い当てたため。

何故逃げ続けたのかという問いに対し、「裏切りのためだろう。あなたは彼を裏切ったんだ。違う?」と花城。

ここからワンスアポンアタイム、ロングロングストーリーの始まりです。

太子はまさに太陽だった。国師には三人の朋友がいて、四人で太子の副将だった。太子が飛昇した後、四人を点将。大げさでなく、天界でも太子は太陽のようだった。他の神官たちが色あせてかすんでしまうくらいに…。

国師は話の中で「殿下」と烏庸国太子のことを呼び、そのときだけ二千年前の彼の太子のことを思い出して口が笑みの形になる。つら…。

謝憐は「太子は飛昇しなかったとあなたは言っていました」と告げると、「それはおそらく、彼が飛昇していないと望んでいたからだ」と答える国師。めっちゃ複雑な心境なのだね。

夢の中で国が滅ぶのを見た太子は自国の民を救う策を模索し始めます。「今なら彼を止めただろう。しかし、そのときは人々が死んでしまうのであれば、彼らを救うことが悪いわけがないと単純に考えていた」

しかし、事態はそんな単純ではなかった。噴火は止められないし、犠牲者をゼロにするには移住しか道はない。しかし、影響範囲がめちゃくちゃでかくて一つや二つの都市の話ではない。烏庸国の貴族も平民も「侵略しかないよね〜」と考える。周りの他の王国も「受け入れられませんて」と移住を許さなかった。

太子にとっても侵略はもってのほか。しかし、烏庸国は軍隊を送り、行く先々で虐殺を繰り返す。彼らの通った後は血の川が流れ死体が山のように積み上がった。それを知った太子は激しく怒り、下界に降りて烏庸国の兵士たちを罰しました。

謝憐は、かつての若き君吾あるいは白無相がそのようなことをしたのに興味を持ちます。

烏庸国の貴族と一部の平民は怒り、「私たちは生き残りたいだけです。もっと土地がいる。他の国を侵略する以外に道はない。何が悪いんだ?」と、太子の聖廟を破壊し彼を冒涜します。

太子はそれを許しました。もし烏庸国が攻められたら彼は国を守って死ぬつもりだと。そして、敵のつま先すら国境に入ることを許さないと。しかし、他国を侵略することはできない。人の命で人を救うことはできないと。

戦争をやめて、天を渡る橋ができるまで待ってほしいと人々に告げます。人界に場所がないなら、少しの間天界に難民を避難させればいいと考えたのです。荒唐無稽なアイデアだけど国師たちは太子ならできると信じていました。しかし、天界の神官たちは受け入れず、反対されます。それにも太子は耐える。

烏庸国の国民の不満、天界の神官たちの怒り、そして天を渡る橋の工事。三つの重任が太子にのしかかる。

花城は「天界が反対した?単純な意見の相違以外のものがあったんだろう」。

太子が単なる敵に直面していたなら問題はありませんでした。しかし、橋を作るには膨大な時間と霊力が必要です。作る間、彼はまったく気が抜けなくなる。何処にも行かず、他のことは何もしなくなり、信者の祈りの声を聞くこともやめる。これでは信者を維持することはできない。(そうなん?)

橋の建設を始めた最初の日、人々は喜び彼のことを思い出しました。数日経っても、二ヶ月ほど経っても、まだ喜んで彼のことを覚えていた。でも、時が長く経つにつれ、そうもいかなくなります。

火山はまだ噴火していませんでしたが、その間、太子は何もせずただ静かに力を蓄えていました。人々は彼が前ほど力を持っておらず、献身的でないと考え、他の新しい神を信仰するようになります。

「もういい!新しい神を信仰する!」ていうのがよくわからんのだが!?あ、でも、ファンサくれないアイドルに失望しちゃって新しいアイドルに推し変するみたいな…そういう感じ?天官賜福の神ってアイドル?

烏庸国はめっちゃ裕福で人口も多いのでここで信仰を得られたらスゲー強くなれるんですよね。なので太子もスゲー強かったんですが、他の神官は太刀打ちできんくて、そんでラッキー!つって信者を奪い始める。

他の神を信仰するなとは言えない。どんどん弱くなっていく太子。何も知らなかったわけではないけれど、どうすればいいかわからなかった。国師たち四人は人々に事情を説明しますが、「何にもならなかっただろう」と花城に口を挟まれる。その通りで、橋の建設が失敗するのを心配したひとたちは戻ったけど、ほんのちょっとで、みんな自分たちの願いを聞いてくれる神官を信仰するように…。

二千年前の人だからなのかもしれんが、考え方が短期的すぎんか?でも、平均寿命が50〜60歳くらいだと目の前のことに飛びついちゃうのかな。一人でも生き残ったら、烏庸国は血を繋げるじゃん。そういう考え方にはならんのか…。

人は信じたいものを信じる。それが自然なこと。太子は四人に、好きなようにさせなさいと告げます。太子は信者に怒ることもできず、他の神官へ助けを求めることも拒否する。

橋の建設のために力を使い、ますます寡黙に閉鎖的になる太子。

国師は彼をずっと見守り続け、何も言わずとも彼が傷ついていることがわかった。でも、どんなに四人が彼を助けたくても、彼の負担を軽くすることはできませんでした。

苦節三年、ついに火山は噴火しそうになります。人々は天を渡る橋に殺到し、太子は独りで端を支えます。彼にできないことはないと心配していなかった国師たちですが、このとき初めて心配します。

お、おそい…!!!盲目的な信仰がひとを殺すんじゃないですか!!?

橋は最初は安定していましたが、群衆が増えるにつれてどんどん支える時間も長くなり、太子の手は震え、顔は蒼白に…

えええ、天を支えるアトラスのように、手で!?支えてたの!?なんかのホーリーパワー的な何かではなく!!??

詰めかける人々に国師たちは太子に休息を与えるため、「少しだけ時間がほしい、一度に押し寄せないで、あなたたちを全員守る」と言ったけれども、もう噴火寸前で誰も聞いてない。誰も待てなかった。狂ったように彼らは橋に押し寄せます。

数十万人の人が一度に橋を渡り、助かったと祝いました。しかし、天界に近づくにつれ、橋は彼らの重みで崩れていきました。三年の間に信者を失った太子の力では支えられない。

天の門は閉ざされて、人々は叫びながら空に落ちていった。叫びながら、火の海に。太子の目の前で。

橋を修復することもできず、人々も助けられず、火を消すこともできない。何も助けられない。

橋の上にたどりついていない人もたくさんいて、みんな溶岩と灰に動きを封じされてしまいました。彼らは狂乱の中で聖廟を燃やし、神像を打ち壊しました。神像の胸に剣を何度も挿して粉砕して…。そして、彼を役立たずと呪った。神のクソだと。

太子は神でした。神は強く偉大でなければならない。神は失敗できない。しかし、彼は失敗した。もはや高みにはいられない。

天界の神官たちは千載一遇のチャンスとばかりに太子に言います。「不可能だと言っただろう。あなたは深刻な混乱を引き起こしてしまった。もはや下界にもどっていただくしかない」

太子は「どうして誰も私を助けてくれなかったのですか?」と彼らに問いかけます。

国師はこの問いかけを「馬鹿げたものだった…」と述懐します。太子が烏庸国を救うこの試練に打ち勝ったなら、彼の力は比類なきものになり、もはや天界で彼にかなうものなど現れません。そんなことを他の神官たちが許すはずがないのです。それでも、わかっていても、太子は問わずにはいられなかった、その馬鹿げたことを…。

誰も答えず、太子は天界から姿を消しました。

人界に貶謫し、神でも太子でもなくなった彼に国師たち四人は従い、再び飛昇できると断言します。彼はまた修行しましたが、それがどれだけ困難なことかは謝憐も知っている通り。

火山はまだ噴火していて、もはや王国の命は風前の灯火。難民や反乱者、侵略者が絶え間なくいて、人々は途方に暮れていました。太子への彼らの態度は一変しました。「それでもまだ殿下は彼らを救いたかった」

そこへ、神官たちが人々に恩寵を与えるようになります。火山の噴火から救う手助けをする気はないくせに、神官たちが人々にちょっとした祝福を与えたり、薬や食料を届けたりすることは喜んでやったのです。

命綱をつかんだかのように、あるいは新しい両親を見つけたかのように、人々はそれにすがり、太子の信者は誰も残りませんでした。太子がかつて受け取っていたものは他の神官に与えられ、憎悪と拒絶だけが彼に残されました。

国師たちはこの不当さに憤りました。彼らは災害が過ぎ去った後に現れた。殿下が一番に力を尽くしたのに、成功するはずだったのに、なぜ彼が呪われて破滅しなければならないのか?

国師は考えずにはいられませんでした。もし、太子が未来を見ていなければどうなっていただろうと。神は運命を変えられないと、他の神官と同じように静観し、噴火した後に祝福を与えていたら…。人々は彼に感謝の涙を流したに違いないのです。

ここでまたも花城が口をはさみます。「そのときだけ、その考えが頭をよぎったの?最初からわかっていたはずだ。あなたが自分の身を切り取って分け与えれば、その人間は感謝するだろう。しかし、もう一人にもっと切り取れば、もっとほしがる。骨になるまで切り取ったって彼らは満足しない」

ほんとその通りだよ…。でもさ、太子はそういう人だったんだ。助けたかったんだ…。その気持ちは偽りなく、純粋で、尊いものだったんだ…。

太子はどんどん暗くなっていきました。日々が過ぎ去っても噴火はおさまりませんでした。国中が恐怖の中にあり、誰もこの悪夢を止める方法がわからない。

う、うーん!やっぱ日頃の外交が大事だったんでは…て思う…。現実世界でも難民の問題は解決していない。どの時代でも、どの国でも。でも、本当に理想で、口当たりのいいことだけ言ってしまうことになるけど、人と人との交わりってとても大切で、争いも起こるんだけど、人類が発展するためには、革新を起こすためには、異質なもの同士が交流することが不可欠なんだよ…。

侵略するということは、烏庸国の人々はとても傲慢だったのかなあとも思うんですけど。大国に挟まれる小国であればまず一番に生き残るためには外交を選んだと思いますし。周囲の国が少しでも受け入れてくれていたら。もしかしたら、複数人は逃げられていたかもしれませんが、その人たちも烏庸国出身であることは隠さねばならなかったかもですね。

ある日、太子は「方法を見つけた」と四人に告げます。そして、その方法を聞いて、争うことになってしまいます。

「人身御供だろう」と花城。

その通りで、太子は悪人の集団を火口に投げ込んで生け贄にすると言ったのです。四人はそれぞれ違う意見を持っていましたが、みんなこの方法については反対しました。そもそも、人を救うのに人の命を使わないために侵略を止めたのに、それが生け贄と、いったいどういう違いがあるんだと。

議論は暴力にまで発展し、国師にとっては外部との争いより、内輪で争う方がつらかった。しかし、三人は、彼はもうかつての殿下ではない。彼は信念を忘れてしまったと告げます。

国師は、もし自分たちが太子から離れてしまったら、誰も彼のそばに立たず、本当に独りにしてしまうと、「もう天界のことも人界のことも忘れましょう。何もしなくてもいいじゃないですか」と言いますが、誰もそれは聞き入れてくれず、結局三人は離れてしまいます。

国師だけが残りました。「お前も去るのか?」「私は残ります」

それから生け贄のことは口にしなくなり、太子は火口の近くに祭祀場をつくり、二人で沈める方法を試しまくる。

……火山活動って自然災害というか……マントルの動きでは……この世界ではないってこと!? 川が氾濫しようが海が荒れようが噴火しようが、人をその中に放り込んで鎮まったって気のせいだと思うよ。でも神々の力も及ばない天の意だったら祈るのも一つの方法なのかなあ。私は雨乞いにしろなんにしろ、とりあえずその場をおさめるための社会的な儀式に過ぎないって思うんですけど。

謝憐たちに話していた国師はここで、幼い頃にみたこわいものを見たようにこわがり始めます。

「突然、彼は顔を隠すようになった。殿下は容姿端麗でこれまで隠したことなどなかった。傷つけるものすらいなかった。だから私は尋ねた。何があったのかと。彼は事故で火傷したのだと言った。いつ傷を負ったのか知らなかったし、診させてもくれなかった」

そうこうするうちに噴火が静まります。再び活動する様子も見せず、静かなままでした。太子がこのことにずっと身を捧げていたので、多くの人々は彼が火山を鎮めたのだろうと考え、何人かは新たに彼を信奉するようになります。太子の修行も順調に進み、なじったり石を投げつけたりしなくなり、人々は彼に笑いかけるようになりました。

「私は何かがおかしいと思っていた。三人の友人にしても、彼らはそれぞれ違う考え方の持ち主だったが、目の前のことを放り出して去るような人間ではない。もし殿下に腹を立てていたとしても私にまで怒ることはないはずだ。もしそうだったとしても、つながりを絶つまではしないはずだ」

話を続ける国師。

太子はずっと顔を隠し続けていました。最初は布で覆っていましたがそのうち仮面をつけるようになり決して外さなくなります。国師は目の前の人間は本当に彼の殿下なのか疑うようにもなります。話し方も、行動も、人格も、まったく変わってしまったのです。

太子の部屋の鏡が全て破壊されるということもありました。全て割られて血にまみれていました。そしてもっとおそろしいのは、時折、奇妙な声が彼の部屋から聞こえてくることでした。

深夜に何人かがささやく声がして、確かめに入ろうとするといつも止められてしまう。ある夜、また奇妙な声が聞こえてきて、それがいなくなった友人たちの声であることに気づき、彼はついに太子の部屋に入ります。隠れて戻ってきたのだろうと考えたのです。しかし部屋にはベッドの上で仮面をつけたまま太子が寝ているだけ。国師はしばらく待ちました。すると、声は太子から聞こえる。

こわいよー。墨香銅臭先生、怪談ぜったいうまい。

声は仮面の下からするのです。これは寝言で、夢の中で、彼らを懐かしんだ太子が声真似してんのかと思う梅念卿。んなわけねえだろ!それもこわいわ!

太子が寝ていてまったく動かないので、そうっと仮面を外します。そして、その下にあったものを見ました。

「三人の友だった。彼らのうちの誰かが話していた。殿下ではなかった」

太子の顔はぐちゃぐちゃになっていました。鋭利なものでつけられたギザギザの傷で覆われ、肉はぐちゃぐちゃで半分乾いた血で覆われている。そこには三つの顔があり、それぞれ口が開いては閉じ、動いている。三人の友人の顔でした。

謝憐は戦慄します。「彼は三人を炉に投げ入れたのか!?」

しかし国師はそれには答えませんでした。顔は長い間光に当たることができず月光さえあたっていると痛むようでした。彼らは国師に気づくと名前を呼び始めます。

人が空から落ちて生きたまま火の海で焼かれるのを見るのは何よりも恐ろしいものだと思っていたのに、目の前の光景はもっとおそろしかった。顔は彼に何か言いたそうだったけれども、喋って太子を起こすことをおそれているようでした。気持ち悪かったけれど好奇心が勝って顔を近づける国師。血と薬草のにおいがする。彼らは「早く!逃げるんだ!殿下は狂ってしまった!」と言いました。

三人は殿下から離れたあともまだ心配しており、密かに戻ってきて太子と話そうとしました。太子を探して見つけたとき、彼は人々を連れて火口にいました。彼は生け贄にすることを諦めていなかったのです。三人は彼を止めようとして、殺されて火口に投げ入れられてしまいます。

ふつうの人間だったらすぐに灰燼になったでしょうが、彼らは修行をした道士たちで、しかも太子に殺された。彼らの世界への恨みと執着は深く、彼らの魂は太子に取り憑き、太子の所業を止めさせるために常に彼を非難していたのです。

恐怖と困惑でどうしていいかわからず国師が放心していると、いつの間にか太子が起きていた。人面が動いて、そうするともっとぐちゃぐちゃになって血が滴る。「私はここに入るなと言わなかったか?」

鏡が破壊されたわけ。血にまみれていたのは切り取ろうとしたから。でも、何度切り取っても人面はすぐに再生する。

国師は跪き、太子は身を起こしてベッドに座って、彼に言います。「恐れるな。奴らは私を裏切った。同じ事をしなければ、私はいつもそうしてきたようにお前に振る舞おう。忠実な従者でいる限り、何も変わらない」

そんな無茶な話はないわけで、それに、太子も彼の腹心が何を考えているかはかんたんにわかる。「お前も去るのだろう」

そのとき国師は答えられなかった。もし、悪人たちを生け贄にしただけなら何もないふりができた。しかし、親友三人を殺されて炉に投げ入れられたのは受け入れられない。

太子はつぶやきます。「大丈夫。予想していた。こんなものになって誰もそばにいられるわけがない。私は独りでやれる。わかっている。私はいつも独りだ。誰も必要ない!」

彼は凶暴になって国師の首を片手で締め上げます。「私は独りでやれる。全て独り独り独り独り独り独り独り誰もいらない誰もいらない誰もいらない誰もいらない…」

その気になれば太子はすぐに彼の首を折ることができましたが、死にませんでした。三つの顔が叫び始め、太子は頭痛に苦しんで叫び、国師も叫ぶ。なんなんだよこの地獄は…。

目の前が真っ暗になる前に国師は枕の下に剣があるのを見つけ、それを抜きます。「私を殺そうとするのか?早く刺せ!心臓を刺すんだ。誰が残るか見てみようじゃないか」

国師は刀身をきらめかせて「殿下!戻ってきてください!自分を見て…何になったか、見てください!」と叫びます。すると、刀身にうつった自分の姿を見て太子の片目から涙がこぼれ、国師も泣きます。一目で彼自身も気持ち悪くなったのに、その顔をどうして見ろと言ってしまったのか。剣が落ちて床に転がる。

「失せろ」太子に言われて這うようにして逃げる国師。

それから、できるだけ遠いところに逃げました。もう一度噴火があり、そのときに烏庸国は滅んでしまう。今度こそ誰も生き残らなかった。

災厄から逃げ、太子の情報は入ってこなかった。国と一緒に死んだのだと考え、国師は人界をあてもなくさまよいます。「殿下はいなくなり、三人の友はみんな死んだ。私は空殼を三つ作って友人の声で喋るようにした。そして、時折カードゲームをした」

二千年前からカードゲーム好きだったんだ…。仙楽国の他の三人の国師も空殼だったのです。

118章、あまりに長いから②に続く。

@checaldooggi
書くことを続けられたらいいな。読んでくださってありがとうございます。 天官賜福とさはんにハマっているのでその話が多めになるかも。 匿名の質問箱はこちら mond.how/ja/checaldooggi