カナダの医療事情は無料だけど日本より良くない、と言われているが、どれくらいの感じなのかを書いてみたい。
カナダの医療事情、と言ったが実際には州によって状況が異なってくる。自分が知っているのはBC州のバンクーバーエリアの話になるので、オンタリオ州やアルバータ州など別の州については知らないのであしからず。
BC州に住み始めると、BC Services Cardというのが発行される。これはWork permitでもStudy permitでも発行される重要なIDである。実態としては保険証に近いものになる。これがあると、医者に無料でかかれる。ただし、International Studentは月に$37.5かかるので完全無料ではない。余談ではあるが、カナダには住民票なんて概念はないので、IDの住所を証明するときには郵便物が受け取れればOKみたいな感じだったと思う。
何が無料なのか?医者にかかるのは無料、入院費用も手術費用も基本的には無料である。ただし、保険適用外の手術とかもあるはずなので、その場合は駄目っぽい。
何が無料ではないのか?薬はExtended health careと呼ばれる有料の保険に入っていないと大抵自腹になる。Extended health careは、企業に働いていれば会社がその費用を福利厚生の一環として負担してくれる事が多い。自営業だと自分で保険に加入する必要がある。もしくはしないということもありうる。所得が低ければBC Pharmacareと呼ばれるもので薬代はカバーされるものもある。
薬以外でお金がかかるのでメジャーなのは歯医者。根管治療に$2000とかかかって歯医者にろくに行けない、というのが問題視されており、所得の低い人向けに補助が出るみたいな動きがあるが、あまり関係がないので深くは追っていない。Extended Health Careも年間いくらまでカバーされる、というものなので、ちょっとデカ目の治療をすると後は全部自腹になる。
また、怪我をしたときにリハビリをしてくれる理学療法士(Physiothreapy)はExtended Health Careがないと自腹になる。でも、医者に行くとやってくれるのは問診と良くてレントゲン検査・MRIの紹介状出してくれるくらいで、リハビリはPhysiotherapyに行ってね、と言われる。これも、保険でカバーされる金額は年間で決まっている。
お金の面がクリアになったら、次はどういう流れで病院に行くかを説明したい。まず、病院に行きたい事象が発生したときに、重大なことであれば、Emergencyに駆け込んで、数時間待つ。そこまででもなければUrgent Careに駆け込んで数時間待つ。日本で近所の病院にふらっと行くタイプのものであれば、ニキビや捻挫など薬局で対処してもらえるものは薬局へ、そうでないものはFamily doctorと呼ばれるかかりつけ医を予約して診察を受ける。自分のところだと、2週間位ここで待つ。COVID前は当日walk inもできたようだが、そんな時代は僕がこちらに来てからは一度たりともない。なので、風邪で病院に行くという行為はしなくなった。市販薬飲んでなんとかなるならそうする。
ちなみに、どこに行くのが良いのかわからない場合は、811に電話するとregistered nurseが丁寧に教えてくれる。困ったら通訳もお願いすることもできたはず。
Family doctorは重要なポジションで、すべての高度な診察の窓口になる。耳鼻科やら外科などで大きな病院は直接行くことはまず無理なので、Family doctorに大病院の紹介状を書いてもらって、ただひたすら連絡が来るのを待つ。大抵の場合、早くて6ヶ月、1年位はザラ。6ヶ月待って実は手術の予約取れてませんでしたー、とかもあるので、基本的に気になる人は自分で各所に電話で問い合わせるスタイルが必要である。メールを返してくれるカナダ人は同僚くらいしかいないと思った方がいい。
なお、BC州におけるFamily doctor事情はとても酷くて、living costが高い割に報酬が悪いので、お隣アルバータ州にどんどん逃げているらしい。でも移民はわんさかやってくるので、来たらなんとしてでもFamily doctorを見つけないとwalk-inと呼ばれる病院で定期通院はつらい。
紹介状などの待ち時間は緊急性に応じて変わってくる。なので、本当に急いでほしいときは、とにかく深刻だということを強調しないといけない。怪我をしたときも、我慢できるとか考えてはいけない。こちらでは10段階で痛みがいくつか?と聞かれるが、痛みを我慢できるアジア人とは違い、皆割とすぐに10に飽和しているようである。我慢はしてはいけないし、痛みは大げさに伝えないと、大げさに伝える人々の中で埋もれてしまう。
ここまで書いたが、日本に比べて良いのは無料であることで、特に手術を控えている親なんかは安心感が違う。しかし、無料だと医療体制が崩壊しがちなのは割りと想像に難くないと思うが、ちょっとバンクーバー島に行くと医療リソースが足りないというのが問題になったりするので、なんとも厳しいものはある。Extended health careに入らないと歯医者もまともに行けないのも厳しい。あとはとにかく待つことが求められる。端的に言って、日本の医療アクセスは世界でも有数の素晴らしい国であるのがわかる。